第44話 困った時は隕石に限る
(三人称視点)
「う、そ……ホントに倒しちゃった……」
クライは未だ、目の前の光景が信じられなかった。
少し前まで、クライの可愛い後輩として引っ付いてきていたホムラ。
探索者と、配信者としてのいろはを教え込んだ彼女が、今や前人未到の下層中ボスを打破するに至ったのだ。
「見事だ、ミス・ホムラ。……しかし、状況はまだ変わっていないぞ」
アルベルトも賞賛の声を上げるが、その表情は苦しげであった。
それもそのはず、皇帝を倒しても、皇帝の支配下にあった下層の魔物達は、未だ健在であったからだ。
「――――」
「動かない、か……このまま恐れをなして逃げ出してくれれば、ありがたいのだが」
魔物達も、最初は皇帝が打ち倒されたことが信じられなかったらしい。
しばらく石像になったかのように硬直していたが……次第に、本来の凶暴性を取り戻し、一行に殺意の視線を向けるようになっていった。
「残念ながら、見逃してくれそうにはないね」
「ちょっと……ウチらはあんたらのパワハラ上司をぶっ倒してあげたんですけど!? その仕打ちがコレかっ!」
クライの喚きも魔物達には通じない。
人間と魔物は敵対関係。どのような背景があろうとも、その関係性は変わらない。
魔物達が、目の前の獲物を喰らわんと進軍を始める。が――
「あははっ……上等ですよ」
ホムラの眼差しは、まだ死んでいなかった。
全身ズタボロ、石化と火傷で誰よりも重症の彼女は。
ギラギラと獰猛な眼差しを、眼前の魔物達に向けて、興奮のままに叫ぶ。
「ちょうど、まだ戦い足りないと思ってた所なんです……! せっかく掴んだこの感覚、忘れちゃう前に練習しておかないと! さぁ来なさい!! いくらでも私が相手しますから――」
「いやいや流石に無茶でしょ、ホムラちゃん」
――その背後、ふらつくホムラの背を受け止める影。
「お疲れ様、ホムラちゃん。後は任せて、ゆっくり休むといい」
◆
(一人称視点)
強くなったなぁ……ホムラちゃん。
初対面からまだ一ヶ月も経ってないよ? なのにこの短期間で時間操作の技術を習得しちゃうとは。
俺も覚えた当初はもっと時間が掛かった気がする。探索者としての才能は、もしかすると俺より上かもしれないな。
「さて」
目の前には下層の魔物達。千匹は超えるか?
カイザーコカトリスは倒しても大量の取り巻きを残していく。これだからあいつを相手にするのは面倒くさいんだ。
しゃーない、スキル使うか。
「こういう時は、広範囲殲滅に限るな――【隕石招来】」
轟音、爆発、閃光。
時空を捻じ曲げ、鍾乳洞に隕石をブチ込んだ。
下層程度の魔物がこれに耐えられる筈がない。纏めて全員塵になる。
「あースッキリした。……さて」
ちゃんと彼らにはバリアを張っておいたので、隕石が降ってきても当然のように無傷だ。といっても、皇帝との戦いで既に満身創痍ではあったが。
……その中に、彼女の姿を認める。
クライミカ。この間俺の店に来たお客さんであり、恐らく電気を操るスキルの持ち主。
なぜかポカンと、口を開けて固まってしまっているけど。
「救難信号……とでも言うべきかな? 誘いに乗って助けには来たけれど」
ぶっちゃけ、助けるかどうかは俺の中では決めていなかった。
最初から探索目的でダンジョンに来ておいて、いざピンチになったら俺に助けを求める。
正直、あまり好ましくはない態度だ。まあホムラちゃんの頑張りと覚悟に免じて、この場は助けることにしたが。
ホムラちゃんほどの人材は、世界線を跨いでもそうは居ない。ここで彼女を死なせるのは惜しい。
「とりあえずお疲れ様? 回復してあげるから、ちょっとそこで大人しく――」
「――amazing」
なんか金髪美青年が急接近してきた。
「は? なんて?」
「Fooooo!!!! Splendid! After all you are the best! Pleased to meet you, too. It will be what a good day today. Please give me a signature!!!!」
「ごめん日本語でしゃべって」




