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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第42話 vsカイザーコカトリス


「ちょっと――なにこれ!?」


 誰も、警戒は怠っていなかった。

 いつどこから魔物が現れても対処できるようにしていた。


 しかし、眼前の魔物たちは突然(・・)現れた。

 気づいた時には数千体もの魔物に、四方を取り囲まれていたのだ。


「まるで何もない所から(・・・・・・・)いきなり現れた(・・・・・・・)みたいな……どうなってるの!?」

「クライ先輩、落ち着いてください。よく見ればあの魔物達、手負いです」


 ディープミノタウロス、ミスリルヤドカリ、ケイブドラゴン……下層に生息する魔物達が勢揃いだが、いずれの個体もよく見れば手傷を負っていた。


 それに圧倒的な戦力差があるというのに、魔物の軍勢は全く攻めてこない。

 まるで何かに怯えるような、何者かの指示を待っているような様子で――


「なるほど。どうやらこの状況は、奴が作り出したものらしい」


 アルベルトが視線を向ける先。鍾乳洞の奥から、悠々(ゆうゆう)とした足取りで近づく巨大な影。

 下層の支配者、カイザーコカトリスがホムラ達を睨みつけていた。



「【栄光の騎士グローリー・オブ・ナイト】」


 アルベルトが呟いた直後、白銀の鎧が現れ、彼の全身を覆う。

 さながら物語に登場する、騎士の様な姿。

 自身の想像を具現化するスキル【夢想剣域ソード・オブ・ドリーム】の力で、己が思い描く理想の姿となったアルベルトは告げる。


「これは、私の切り札だ。使用中は無類の強さを誇るが、三分程度しか保たない。……この状況を作った元凶は明らか。ならば、迅速にケリをつけるとしよう。ミス・ホムラ。協力を」


 ここが正念場。

 被害が出る前に、最短最速で決着をつける。


「はいっ――いきますよっ」


 その世界最強の動きに、ホムラアカリは連動する。

 手足から炎を噴き出し、さながらジェット噴射の要領で高速機動を実現したホムラは、カイザーコカトリスの背後にまわる。


「【剣の嵐ソード・オブ・ストーム】――!」

「【顎炎(がくえん)】ッ!」


 飛来する大量の剣が、燃え盛る牙が、前後から皇帝に襲いかかる。

 皇帝は動じず、その双頭で両方向の攻撃に対処する。


「Cokkkrrrrr!!」


 鶏の頭からは氷のブレスを、蛇の頭から風のブレスをそれぞれ放ち、二人の連携攻撃を易々(やすやす)と凌ぐ。


 ――その隙を、クライ達は見逃さない。


「今! 集中攻撃――」



Dreamers(ドリーマーズ)】の面々が攻撃を、そしてクライは、ブレスを止めるべく麻痺を狙った電撃攻撃を仕掛ける。


 しかしそれらを防ぐように、皇帝は周囲の地面を石化させる。

 突如現れた結晶の壁に阻まれ、あと一歩の所で届かない。


「頭は両方ブレスに掛かり切りでしょ……どういう理屈で石化してるの、それ!? 見たものしか石化しないんじゃなかったの!?」

「――どうやら今のは、石化の魔眼による現象ではないようだね」


 一連の攻撃を全て防がれたアルベルトだが、その眼は冷静に観察を続けている。

 今の攻防、確かに皇帝の視線はアルベルトとホムラに向けられていた。

にも関わらず、中層で見せた全方位石化攻撃(・・・・・・・)により皇帝は無傷。

 では、その仕組みとは。


「地形操作……一部のボスモンスターにみられる能力。あれで周囲の環境を書き換えて(・・・・・)、あたかも石化しているように見せている……そうか、そういう事か」


 石化させられないよう高速で移動しながら、アルベルトは考察の末に気づく。

 何もないところから魔物が現れた、そのカラクリに。


「この魔物達は、最初から居たのか(・・・・・・・・)。その肉体を石化させられ、地形操作により変形させられて。あたかも地形の、鍾乳洞の一部であるかのように見せかけて」



 ――そう。それこそが皇帝(カイザーコカトリス)の真骨頂。

 この魔物は、他の魔物を支配下に置く。魔眼で石化させ、意のままにその形状を操作する事で。

 さながら百舌鳥(もず)早贄(はやにえ)の様に、捕らえた魔物()を石にして保管しておく。

 地形に擬態させておき、必要に応じて石のまま食したり、石化を解除して手駒のように扱うのだ。


 そして石のまま永い時間を過ごした魔物は、恐怖のあまり屈服し皇帝の僕と化す。

 それこそが皇帝と呼ばれる所以(ゆえん)。魔物達を恐怖で従える、下層の支配者。

 中層から逃げる一行を追わなかったのは、追いつけなかったからではない。その必要が無かったからだ。

 フロア全体が皇帝の庭。そこかしらに、皇帝の()は存在する。

 青白く光る下層の鍾乳洞は、皇帝の犠牲者で塗り固められた処刑場なのだ。


「――Drrrr」


 皇帝の一声。

 かつて皇帝に挑み、敗北した魔物達が僕となって動き出す。

 地形操作により、鍾乳洞の光る結晶が槍のように四方から襲いかかる。


「不味いっ、防御を――」

「【光の剣(ソード・オブ・レイ)】!!」


 アルベルトの持つ手札の中で、最速の一撃。

 光の速度で放たれた剣が、押し寄せる魔物の軍勢を退ける。


 だが速度に特化した一撃は、下層の魔物に致命傷を与えるには至らない。

 そして皇帝は、その一瞬の隙を見逃さない。


「ッ! アルベルトさん、避けて!!」

「!?」


 皇帝の魔眼が、紫紺に明滅する。

 光を攻撃に使うのは、アルベルトの専売特許ではない。


「Rrrrr――」


 魔眼から放たれた光が結晶に当たり、四方へと乱反射する(・・・・・)

 真の全方位石化攻撃。地形操作と石化の魔眼を合わせた一撃は、アルベルトの力をもっても完全に防ぎ切れるものではなく――









「――――」


 シラユキは、深い眠りから目を覚ました。


 トオルから現実を突きつけられて、逃げるように意識を閉ざしたシラユキ。

 しかし重い瞼を再び開けても、目の前にあるのはただただ残酷な現実であった。


「夢じゃ、ないんだ……」


 別の世界線。転移。二度と帰れない。

 シラユキの精神が、その残酷な現実と再び向き合おうとした時。

 彼女の耳に、何かがぶつかるような音が届いた。


「――?」


 寝室のドアの向こう側。コンコンと、規則的な音がする。

 トオルがドアをノックしているのだ、と考えたシラユキは、ゆっくりとドアを開けた。


「……?」


 そこに居たのはトオルではなかった。

 それは、配信用の撮影機能付きドローンだった。

 微かな機械音を立てて、ドローンが浮遊している。シラユキの魔力を感知して、この部屋に辿り着いたのだ。それがさっきからドアを叩いていたのだ。


 現在パトロールに出ているトオルは、普段配信に使うドローンを店に、いつぞやの様に置き去りにしていたのだ。

 そのドローンが、(あるじ)の知らない所で一人でに起動していた。

 本体上部のボタンが、まるで押して下さいと言わんばかりに緑色に点滅している。


「…………??」


 実はシラユキが目を覚ましたのも、このドローンが接近する気配を無意識に感知したためであった。

 しかし目覚めたばかりの彼女は、未だ正常な思考回路を取り戻せていない。


「これを押せ、って事?」


 半ば寝ぼけたままのシラユキは、言われるがままに明滅するボタンを――配信開始(・・・・)のボタンを押した。




(一人称視点)


「よし、中層も問題ないな」


 ひと仕事終えた俺は、背伸びしながらひとりごちた。

 中層の時空間の歪みによる影響は、下層と比べれば軽微であった。


「元々ダンジョンは、深くなるにつれ時空間が不安定になってくからな。ああいうイレギュラーが起きても、被害は下の階層に集中しやすい。中層は下層と比べてだいぶ安定してるし、流石に杞憂だったかな?」


 さて、この後どうするか。

 まだ上層のパトロールはしていないが、あそこはもう殆ど地上に近い。

 ゴリッゴリに時空間が固まってるし、別の世界線からナニかが紛れ込む可能性はかなり低いだろう。パトロールの必要性はないかもしれない。


「……ネットで一応、上層を探るか。特に話題になってなきゃ、パトロールは終了という事で」


 もし異常事態が発生しているのなら、必ず話題になっている筈だ。

 手っ取り早くそれを確認しようと、スマホを取り出して――大量の通知が届いている事に気づいた。


「んあ?」


 それは、動画配信中を示す通知であった。


 配信サイト【Dチューブ】と連動させている俺のスマホには、現在の配信状況やお知らせが通知されるようになっている。

 そのスマホが、現在数万人の視聴者が俺のチャンネルの生配信を見ている事を告げていた。

 そして、流れてくるコメントの一部も。


:なんか配信始まってるんですが、通知あった?

:いや聞いてない。またゲリラ配信か何か?

:なんだこの美少女!?

:すげー、モデルさんかな? でもなんで店長の動画に?

:もしかして店長のいい人?



「えっなにこれ」


 全く心当たりがない。

 俺は生配信を始めた覚えはない。第一ドローンもないし――あれ? 俺ドローンどこにやったっけ?


「ああ、店に置いてきて――まさか、シラユキちゃんが?」


 動画を確認すると、そこにはどアップで映されたシラユキちゃんの姿が。

 寝起きなのか、ちょっとぼーっとしている様に見えるが。ドローンを両手で掴んで、カメラレンズを見て可愛らしく首を傾げている。


「シラユキちゃんが勝手に配信を始めた……? いやでもロック掛けてたよな? そもそも寝室にドローンがあるのはおかしいし」


 シラユキちゃんが間違って触らないよう、ドローンは離れた場所に置いてきた。

 誰かが操作でも(・・・・・・・)しない限り(・・・・・)、ドローンが配信を許可する事はない筈だが――


「――――」


 ひとまず、状況の確認が必要か。

 そう判断した俺は、『止まり木亭』に転移(テレポート)した。



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