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第41話 タッグマッチ



(三人称視点)


「……皆さん、ご無事ですか?」


 下層1階。中層への通路から、ある程度離れた場所にて。

 アルベルト一行と、ホムラアカリは状況の確認をおこなっていた。


「全員無事だ。装備が幾つかダメになったが、行動に支障はない。」


「ハァ、ハァ……ウチも大丈夫。どうして此処にいるのかはわからないけど、助かったよホムラちゃん」


 カイザーコカトリスは、一行を追ってはこなかった。

 ひとまず危機を脱したと判断した一行は、荒げた息を整えるためにひとまず休息を取る事にしたのだ。


「私もまさか、クライ先輩が下層近くにいるなんて思いもしませんでした。……それに、そこのお方……アルベルト・ウィリアムズさんですよね。一緒に行動しているなんて、何があったんですか?」


「……そう言う貴女は、件の料理店の動画に出ていたね。確か名前は、ミス・ホムラ」


「わ、世界最強と謳われる探索者に覚えてもらっているとは、光栄ですね。初めまして、ホムラアカリです」


 初対面の二人が軽く挨拶をする。

 一行の中で、この二人だけが息を殆ど乱していなかった。


「ホムラちゃん、ネットとか見てないの……? 今そこのアルベルト氏が、渋谷ダンジョンの下層を攻略するために探索中。ウチはその案内人だよ」


「そんな凄いプロジェクトが……? 知りませんでした。最近ずっと迷宮に籠りっきりで、外部の情報を取り入れてなかったので」


 青白く光る鍾乳洞に照らされたホムラの姿は、よく見れば薄汚れていた。

 先ほどの戦闘でついた汚れではない。何日間、何百戦という戦いを潜り抜けた証だ。クライには、それが理解できた。


(ホムラちゃんの休止宣言以降、誰も彼女の消息を掴めていなかったけど……まさか、ずっとダンジョンで修行してたっていうの? この下層で!?)


「さて、ひとまずカイザーコカトリスは撒きましたが、この後どうするかですね。アルベルトさん、このまま下層の探索は続けますか?」


「……ミス・ホムラ、一つ問いたい。あの魔物はこの下層において、どのくらいの強さなんだ?」


「……最終ボス(シャドウマスター)を除けば、最強の存在です。普段は下層のあちこちを徘徊しているので、上手くいけば戦わずにやり過ごす事もできます。実際私もそうしてきました。また私の実力では、勝てる相手ではないので」


「……僕の見立てでは、僕と貴女の実力差はほぼ互角。つまり僕があの鶏と戦っても、勝ち目は薄いということか」


「えっ? 互角?」


 クライや【Dreamers(ドリーマーズ)】の面々がざわつく。

 世界最強の探索者が、実力が互角と認めた。その意味がわからない者はこの場にいない。

 しかし当の本人二人は気にした様子もない。まるで既知の事実であり、互いの共通認識であって当然と言わんばかりに。


「今、ダンジョンはおかしな状況になっています。本来下層にいるはずの魔物が中層にいたり、そもそも渋谷ダンジョンに居ない魔物が彷徨(うろつ)いていたり。私も嫌な予感がしたので、一旦中層に上がる予定だったんです」


「あ、あぁ……ウチらが戦闘中で鶏が邪魔だったから、上にあがれなかったんだ」


 下層から中層に向かう途中、ボス部屋が塞がれている事を確認したホムラは、誰かが戦闘中であると察して、外側からボス部屋の出口をこじ開けたのだ。

 ……なお本人は知る由がないが、下層より更に下の領域に住まう怪物や、下層をパトロールしていたトオルとは、幸か不幸か入れ違いになっていた。



「クライ先輩も居ますし、出会ったからには助力もやぶさかではありません。二人がかりなら、もしあの皇帝に遭遇してしまっても、対抗できるかもしれません。……どうしますか?」


「えっ、ホムラちゃん?」


 クライとしては、遭難しかけているこの状況下を見て、なんとか隙を見て撤退する事を進言してくれる事を期待していたのだ。

 クライ個人としても、撤退には賛成だった。


「……僕個人の我儘(わがまま)としては、レディにこれ以上負担をかけるのは望ましくないのだが。そうも言っていられない状況だ。悪いけれどお言葉に甘えさせてもらおう」


 しかしアルベルトは、まだ下層攻略を諦めるつもりはなかった。

 かくして、世界最強と焔の少女の、協力体制が組まれる事となる。




 ――その直後。

 一行は、数千体の魔物に取り囲まれていた。


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