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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第39話 邂逅


(一人称視点)


 ――シラユキちゃんは寝込んでしまった。


 無理もない。いきなり別の世界に飛ばされて、二度と帰れないと言われた彼女の心労はとてつもないものだろう。

 体力的に消耗していたのもあって、しばらくは目を覚まさないだろう。

 今の彼女には、時間が必要だ。


「誰かから意図的に召喚された、とかだったら、話は早かったんだけどね」


 別の世界から生物を召喚する、【召喚術】というスキルがある。

 もしシラユキちゃんがそのスキルで何者かの手により召喚されたのなら、元居た世界との繋がり(・・・)が残っていたはずだ。

 故に、召喚主を倒せば元の世界に戻れただろう。


 だが今回、シラユキちゃんが転移したのは事故が原因だ。

 彼女の姿を見た時、元の世界との繋がりはもう残っていなかった。


 そうなれば、元居た世界を探し出すのは困難を極める。

 世界線とは可能性の世界。新たな可能性が生まれるたびに、世界線は無数に……無限に枝分かれしていく。

 その中から目印も無しにたった一つの正解を見つける事など、実質不可能だ。

 宇宙からたった一粒の砂を見つけるより、何億倍も難しい。

 ……その世界線が存続しているかどうかも、もはや確かめようがない。


「さて、シラユキちゃんが起きるまでどうしようかな……今日は送迎の予定もないし」


 俺にも解決できないことは、どうしようもない。

 思考を切り替える。ひとまずこの後の予定だ。


「アルベルト一行の様子も気になるが……シラユキちゃん転移の影響の方が、優先度は高いか」


 俺が懸念しているのは、世界線を跨いだ転移によって、渋谷ダンジョンの時空間が乱れた事だ。

 別世界からやってきたのが、シラユキちゃんだけとは限らない(・・・・・・)


「下層の魔物が中層に、程度の影響ならまだ可愛いが。もっと奥の魔物……あるいは、ユニークモンスター(・・・・・・・・・)が紛れ込んだら厄介だな」


 しゃーない。シラユキちゃんも居る事だし、お店は臨時休業だ。

 準備を整えた俺は、渋谷ダンジョンをパトロールすべく店から転移(テレポート)した。



(三人称視点)


「なんですかあのニワトリっ、明らかに中層のラスボスより強いですよ!?」


「ミス・クライ。気持ちは分かるが落ち着きたまえ。こちらの生命線は僕と貴女だ。どちらかが倒れれば全滅は必須だぞ」


 中層5階は地獄と化していた。

 このフロアの本来の主、ダブルヘッドドラゴンが、双頭から炎のブレスを撒き散らす。

 そしてこの場にいる筈のないイレギュラー、カイザーコカトリスは……紫色に輝く魔眼を、アルベルト一行に向けている。


「あのニワトリはコカトリス種の魔物だ。奴の視線に注意しろ!」


 アルベルトは空中に無数の剣を出現させ、雨のように降らせながら叫ぶ。

 コカトリス種……鶏の身体に、蛇のような尻尾が特徴の魔物。

 幾つかの種類が確認されているが、共通の特徴としては魔眼が挙げられる。


 鶏の頭部分にある眼で見つめられると、その対象は石になってしまう。

 見たものを石化させる魔眼。数ある状態異常の中でも石化は特に凶悪で、致死率が非常に高い。

 故にコカトリス種は、どの種も押しなべて危険な魔物として認知されている。


 ――カイザーコカトリスは、アジア最難関、渋谷ダンジョンの下層中ボス。

 『皇帝』の名に恥じぬ強さを誇る、コカトリス種の中でも最強格の存在だ。


「Cokkkeeeee!!」


 甲高い鳴き声の直後、紫紺の魔眼が一際輝く。

 ――カイザーコカトリスを中心に、地形そのもの(・・・・・・)が結晶化していく。


「全方位石化攻撃!? ヤバい、止めるよ!」


「無論。――【剣の嵐ソード・オブ・ストーム】」


 アルベルトのスキル……【夢想剣域ソード・オブ・ドリーム】。

 その力で具現化した無数の剣が集まり、巨大な生き物のようにカイザーコカトリスに襲いかかる。


 しかし皇帝は動じない。

 軽く身じろぎすれば、数千を超える剣の嵐が一瞬で結晶と化した。

 その刃は皇帝に届く事なく、力なく地面に落下していく。


「――隙有り」


 しかし、想定内。

 剣の嵐を目眩しに、雷の速度(・・・・)で急速接近したクライが、皇帝の眼に刃を突き立てる。

 完全な死角からの攻撃。魔眼を潰された皇帝は、大幅な弱体化を余儀なくされる――筈だった。




「Cluck!」


「なっ、硬ッ!?」


 ――雷速で動くクライの姿を、皇帝の尻尾、蛇の眼(・・・)が捉えていた。

 そして刃が魔眼を突き刺す直前、魔眼を覆うように結晶の鎧が突如現れたのだ。

 結果、クライの奇襲は結晶の鎧に弾かれ、その剣は逆に結晶に侵食されてしまった。


「自分で自分を石化させたの……!? 攻撃を防御するために!? そんな芸当聞いたことないけど!」


「流石は渋谷ダンジョン。これ程の強敵が相手とは、ますます昂ってくるな」


「随分と余裕ですね!? どうするんですかあれ、結晶鎧に触れたら石化されちゃいますよ?」


 石化を解除し両眼を取り戻した皇帝が、今度は全身を結晶の鎧で覆い始めた。

 青白く光る結晶を纏い防御力と重量を増した皇帝が、触れれば即死の全身タックルをぶち込む。


「うわやば」


「総員、回避!」


 アルベルトのパーティーメンバーが大慌てで回避するも、それを狙うようにダブルヘッドドラゴンのブレスが襲いかかる。

 炎と結晶に阻まれ、徐々に逃げ場を失っていく。


「これ、負けパターン入ってるよ……逃げ場が無くなる前に撤退したい所だけれど」


「ここはボス部屋だ。既に出口は封鎖されている。奴ら……少なくとも、本来の主であるダブルヘッドドラゴンを倒さなければ、ここからは出られないだろう」


 ボスモンスターと呼ばれる存在は、周辺の地形を操る力を持つ。

 その影響で、ボス部屋に入った時点で出口は塞がれていた。内側から出口をこじ開けるのは難しい。少なくとも、眼前の二体はその隙を与えてくれないだろう。




「やむを得ない。下層まで温存しておきたかったが、切り札を使う」


「切り札……?」


「ミス・クライ。悪いが少し、敵の注意を惹きつけてくれないか? その間に私の切り札を――」


 アルベルトの言葉は途中で止まった。

 なぜなら、塞がれていた下層行き(・・・・)への出口が、外側からぶち壊されたからだ。


 ……開いた突破口から、凄まじい勢いで爆焔が流れ込んでくる。


「むっ?」


「え、この焔って……」



 そして、焔の中から一人の少女が姿を現す。

 それはクライにとっては、見知った顔であった。




「ホムラちゃん!?」


「そこの人、助けは必要で……あれ、クライ先輩?」



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