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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第38話 氷華剪定


 ダンジョンは、ある日突然出現する。

 地球上の何処か……人口が密集していれば、出現率は高くなるが。

 ともかくいきなり現れる。大量の魔素を地上に撒き散らしながら。


 また、その逆もある。

 何の前触れもなく、ダンジョンは消滅する。

 崩壊する原因はいくつかあるが、最も多い原因は剪定(・・)だろう。

 小さな果実を剪定(せんてい)するように、小さく人気(ひとけ)のないダンジョンは消えていく。

 ダンジョンの目的はより多くの人間を誘い、情報を収集する事だ。その役割を果たせないダンジョンが切り落とされるのは、当然と言えるだろう。


 そして……ダンジョンが消滅する時。

 ダンジョンは、当時内部に居た人間の事を、配慮してくれない。

 中に居る人間とモンスター丸ごと、一切合切を巻き込んで消滅する。




 では、巻き込まれた人間はその後どうなるのか?


 答えは、別の世界線に(・・・・・・)飛ばされる(・・・・・)

 元いた世界から消滅し――強制的に、違う世界へと弾き出されるのだ。



「――――、嘘。そんな、事って……」


 ……俺の説明を聞き終えたシラユキちゃんは、呆然としていた。

 湯気を放っていたココアミルクは、とっくの昔に冷めていた。


「信じられないかもしれないけど、事実だ。……実際、この世界には『祇園寺ダンジョン』という場所は存在しない。多分シラユキちゃんの元居た世界線にしか、存在しなかったんだろうね。それくらい小さなダンジョン。……だからこそ崩落した。そして、たまたまこの渋谷ダンジョンに流れ着いた」


 ……彼女はまだ、運が良かった方だろう。

 大抵の場合、ダンジョンの崩落に巻き込まれた時点で死ぬ。

 彼女が生き残ったのは、自身を氷で防護したからだ。だから肉体に損傷を受けず、氷ごと別世界に転移させられた。

 そして運良く(・・・)渋谷ダンジョンの中層に転移させられ、河川に落下。

 滝壺まで流され、魔物に囲まれていた所を俺に発見されたのだ。


「実はシラユキちゃんを見つける直前、俺は時空間の捩れを感知していた。あれは、誰かが世界線を移動してきた時に起こる現象だ。……だからハッキリ言える。君は別世界の人間だ。俺が水底のシラユキちゃんをすぐ見つけられたのが、その証拠だ」


「ッッ!」


 シラユキちゃんは席から立ち上がって、何かを叫ぼうとした……ように見えた。

 けれど彼女は口を(つぐ)んで、ゆっくりと座った。

 彼女の中では、様々な感情や考えが渦巻いているのだろう。それくらいは俺にもわかる。

 今の俺にできるのは、はっきりと現実を伝える事だけだ。

 それしかできない。


「…………。サカガワ、さん。一つだけ、聞かせて……」


「答えるよ。何でも」


 彼女は、魂を絞り出したかのような声で、ゆっくりと尋ねる。

 氷のように透き通った美しい声が、震えていた。




「私は、帰れるの……? 元居た世界に……私の場所に、帰る方法はあるの……?」




 今にも叫び出しそうな表情だった。

 だけど俺は、敢えてはっきりと現実を突きつけた。




「ない。残念だけれど、君は二度と元の世界には戻れない」




(三人称視点)


 ――同時刻。

 渋谷ダンジョン中層5階。中層最終ボスの間にて。


「これ、いくらなんでもおかしいですよっ……! なんでボス部屋に下層の魔物が!?」


「神様というのは、よほど僕たちの事が好きらしい。下層の直前で、こんな素敵な試練を用意してくれるとは」


 そう軽口を叩いて見せる世界最強の探索者、アルベルトの前には。

 中層のラスボス、ダブルヘッドドラゴン。

 そして、本来ならば下層に生息する中ボス……カイザーコカトリスが立ち塞がっていた。



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