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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第37話 白雪氷華の真実



(一人称視点)



「正直胡散臭いわ」



『止まり木亭』の店内で、ココアミルクを飲みながらシラユキちゃんが呟いた。

頬が赤いのはお風呂上がりのせいだろう。しっとり濡れた純白の髪が店内の照明を反射してきらきら輝いている。


「この店が実はダンジョンの中にある、だなんて。お風呂と電気も通ってるのに? ……お風呂と食事を頂いた身分で言うのもあれだけど、にわかには信じがたいわ。まだドッキリ番組のセットって言われたほうが信じられる」


「うーん初見のリスナーさんみたいな事を仰る。そんなにおかしいか?」


 たった今、シラユキちゃんに俺とこの店の事を伝えたばかりである。

 返ってきた反応は先ほどの通り。やはり(・・・)彼女は俺の事を知らなかったらしい。


「さて、俺のことは簡単に話したけど、次はシラユキちゃんの事情も聞きたいな。どうして氷漬けになって、あんな所に居たのか。もちろん、できればで構わないけど」


「――――」


 淡青の瞳が、何かを逡巡(しゅんじゅん)するように伏せられた。

 あまり楽しい出来事ではなかったらしい。しかし彼女は、ゆっくりと口を開いた。




「……私も、全てを理解してる訳じゃないわ。確かなのは、私がダンジョンの崩落(・・・・・・・・)に巻き込まれたこと(・・・・・・・・・)




 ………。やっぱりか。

 俺はまだ何も言わずに、続きを促した。



「私は探索者として、パーティーを組んでダンジョンに潜っていた。……突然、激しい地響きが聞こえて、ダンジョンが崩れ始めたの。そして私だけが逃げ遅れた(・・・・・)


「……うん」


「崩落に巻き込まれないよう、自分の身を守るのに必死だった。……私は自分のスキルを使って、自分自身を氷漬けにした。少しでも多くの時間を生き延びるために」


 実際、あの氷の強度は大したものだった。

 溶かすのにも時間がかかったし、生半可な衝撃で壊れることはなかっただろう。

 彼女の身を守る防壁としては、十分な役割を果たしていた。


「そこで力を使い果たした私は、意識を失った。……目覚めた時には、あなたに塩焼きにされていたの」


「もうゆるして」


「……その件については、もういい。解凍されなかったら、自分の氷で衰弱死してたかもしれないし。問題はそこじゃなくて、どうして未だ私はダンジョンに居るのか、という点よ」


 自分を落ち着かせるように、ココアミルクをぐい、と飲み干す。

 彼女の表情からは、拭いきれない不安が伺える。


「あの時、私が居たダンジョンは崩落したはず。なのに貴方は、この場所がダンジョンの中だと言う。……私の意識がない間に何があったの? 一体ここは何処なの……?」


「落ち着いて。順番に説明するから」


 やはり、全てを打ち明けるしかないだろう。

 答えをはぐらかすだけでは、彼女の不安を晴らすことはきっと不可能だ。


「まず、俺から一つ尋ねたい。……シラユキちゃんが潜ってたっていうダンジョンは、なんて名前だった?」


「また、ちゃん付け……確か、京都の祇園寺(・・・・・・)ダンジョン(・・・・・)よ」


「そうか……シラユキちゃん。落ち着いて聞いてくれ。まず此処は、京都のダンジョンじゃない」


「……ぇ?」


「ごめんね、さっきは敢えて詳しい場所を言わなかった。……此処は東京にある渋谷ダンジョン、その下層7階だよ」


「と、東京? なんで、いきなりそんな……別のダンジョンに転移でもしたっていうの?」




 ……気が滅入る。

 今から伝える内容は、彼女にとってはあまりにも残酷な現実かもしれない。

 だが伝えなければならない。後になって知るより今知る方が、きっと傷は小さい。

 それにこの役割は、俺にしかできないだろう。……俺の前に彼女が現れたのは、何の因果だろうな。




「シラユキちゃん。君はこの世界の人物ではない」


「――――」


「此処とは異なる世界線から漂流してきた、別世界の存在だ。俺と同じくね」




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