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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第36話 集う強者たち


(三人称視点)


「――流石は渋谷ダンジョン。まだ上層だというのに、なかなか歯応えがある」


 渋谷ダンジョン上層。まるで巨大シェルターのような、レンガ作りの通路が広がるエリア。

 その2階を破竹の勢いで進む、一つのパーティーがあった。


「いや、今倒した魔物は特異個体でしたよ……中層の魔物と同程度の力はありました」


 そう訂正したのは日本のAランク探索者の一人、狗雷美香(クライミカ)

 普段の見栄え重視の衣装とは違う、本格的な戦闘用装備を纏っている。口調も配信者としてのものではなく、ビジネススタイル仕様だ。


「ん? そうだったのか。こんな序盤から特異個体に遭遇するとは、果たして運が良いのか悪いのか」


 そしてどこか気の抜けたトーンで発言したのは、現世界最強の探索者、アルベルト・ウィリアムズ。

 白銀の鎧を身につけ、金の長髪を揺らすその姿は、その甘いマスクと相まってまるで御伽噺に出てくる騎士のようであった。


 それだけではない。アルベルトが所属する英国最強のパーティー、『Dreamers(ドリーマーズ)』のメンバーが揃い踏みだ。

 彼らは本気で、この渋谷ダンジョンを攻略しにきている。

(はぁ。責任()っも。これ、この人達に何かあったら、ウチに責任押し付ける気じゃない?)


 そしてクライミカは、日本探索者協会……厳密には日本政府の要請で、彼らのサポートをするべく同行している。

 本人はあまり乗り気ではないようだが。


(探索者は自己責任の世界とはいえ、それで世間が納得するかというとまた別の話なんだよねー。まあ仕事だから、やるしかないんだけどさ)


「ミス・クライ。渋谷ダンジョンの上層は、3階までだったかな?」


「はい。上層が3階、中層が5階、そして下層が7階までです」


「合計15階層か。階層自体はそう多くないが、一つ一つが広大で魔物が手強いタイプだね」


「その通りです。しかし下層までのルートは確立されていますので、寄り道しなければ下層までそう時間は掛かりません――」


 そこまでクライが話した時、彼女のスキルが、遠方の微細な電気信号を感じ取った。

 生物が放つ電気信号。それを読み取る事で、クライはレーダーのように魔物の存在を感知する事ができる。


「二時の方向、二百メートル先、敵影三――」


「『光の剣(ソード・オブ・レイ)』」


 一瞬。

 アルベルトの手元が光ったかと思うと、クライが探知した二百メートル先の敵影は全て消滅していた。

 クライすらも何が起きたのか把握しきれていない。まさしく圧倒的な実力である。


(わぁ……これが世界一の探索者の実力かあ。流石に上層程度じゃ苦戦しないね)


「うん? 今のも手応えが変だったな。もしかして特異個体だったのかな?」


「距離がありすぎて、そこまではわかりませんでしたが。しかし立て続けに特異個体に遭遇するとは考えにくいですね」


「だと良いのだが……もし特異個体が大量発生しているようなら、それはこのダンジョンに異変が起きているという意味だからね。ごめん被りたいものだよ」


 そんな余裕のある軽口を叩きながら、世界最強のパーティーは渋谷ダンジョンの奥底へ潜っていく。








(一人称視点)




 氷の中から謎の美少女が現れた。


「この野蛮人! 人喰い族っ!! 私に一体何をするつもりだったの!?」


 雪のような、という表現は彼女のためにあるのだろう。そう思ってしまうくらいに綺麗な純白の髪。

 触れれば折れてしまいそうな薄い体つきと、色素の薄い白い肌が合わさって、儚げな美少女という印象を受ける。

 やや吊り目がちなアイスブルーの瞳のためにで大人びて見えるが、今は泣き腫らして真っ赤になっている。美人が割と台無しだった。

 そんな絶世の美少女は氷のように透き通った声で、先ほどから俺を罵倒していた。


「悪かったよ……ちょっと氷を溶かそうとしただけで、君を傷つける意図があったわけじゃないんだ」


「だからってなんで塩焼きにしたの!? もっと他にやり方があるでしょう!? 目覚めたら丸焼きにされた私の気持ちがわかる!?」


「スミマセンでした……」


 色素の薄い肌のせいか、興奮で頬が紅潮しているのがよくわかる。

 ……うーん、何度見ても美少女だな。思わず見惚(みと)れてしまうくらいだ。

 純白の髪と肌が溶けた氷でしっとり濡れて、ダンジョン内の疑似陽光を反射して輝いている。それがまた妖艶な雰囲気を醸し出しているのだ。全身塩まみれなのに。

 今まで色んな女性に出会ってきたが、ここまでの美少女はそうお目にかかったことがない。


「……ちょっと、聞いてる?」


「あ、うん。で、どこまで話したんだっけ?」


 現在俺と謎の美少女は、『止まり木亭』の目の前にいる。

 俺がそこで氷を溶かそうと焚き火でファイヤーしてた所で、彼女が目覚めたという状況だ。


「何も聞いてないわよ……。凍ってる間は意識もなかったし、目覚めたらいきなり燃やされてた状態。ここがどこで、貴方が誰なのかも分からない。一つ言えるとしたら、私は貴方が人喰い族じゃないかと疑ってはいるのだけれど」


そう言ってジト目を向けてくる謎の美少女。

うーん、まずは誤解を解かないとだな。


「まだ名乗ってなかったね。俺は逆川透。たまたま君を見つけた通りすがりの一般人です」


「……白雪氷華」


「シラユキちゃんか。よろしくね」


「ちゃん付け……」


 しかし……ふむ。

 こうして観察していると、新たにわかることもある。

 彼女は間違いなく人間だが、普通の人間(・・・・・)ではない。

 時空間の歪みが発生した原因にも深く関わっているだろう。

 解凍している間、彼女の正体に仮説も立ててある。ただ、それを彼女にどう説明したものか。


「とりあえず、お互いに状況把握はしておきたいし……美味しいものでも食べながらゆっくり話そうか」




「……まず、この塩まみれの格好をなんとかしたいのだけれど」


「あ、はい」


 先にお風呂を貸すことになった。





(三人称視点)


 そして、渋谷ダンジョンの奥深く。

 アルベルトらが目指す下層エリアは、現在火の海と化していた。


「GYU、UUAAAaaa……」


 ディープミノタウロスが、全身を炭と化して息絶えていく。

 摂氏六千度。太陽の表面温度に等しい環境下では、強靭な肉体を持つディープミノタウロスといえど、生命活動の継続は不可能であった。


 ……そして、全てを焼き尽くす火の海の中。静かに佇む少女が一人。


「――なんだか、ダンジョンが騒がしいような」


 ホムラアカリは、静かに天井を見上げていた。


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