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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第35話 『■■■■■の塩焼き』



「この辺か……?」


 転移した先は、渋谷ダンジョン中層4階。

 中層エリアは渓谷のように、高低差のある地形と河川で構成されている。

 エリア内には幾つかの巨大な滝があり、下れば近道だが水中には凶暴な魔物が数多く生息している。

 その中の一つ、中層で最も大きな滝壺の周辺で、俺は確かに時空間の歪み(・・)を感じ取っていた。


「周りには何もない……となると、水中か?」


 バリアを張り、滝壺に飛び込む。

 俺の体表周辺の時間は停止している。水も魔物も、俺には一切触れることはできない。


 ……滝壺の奥底、光り輝く何かがあった。

 それは氷塊。数メートルはあろうかという巨大な氷塊が、水底に沈んでいたのだ。


「氷の中に何かあるな……あれは、人か!?」


 氷の棺に閉じ込められるようにして一人の少女が、眠るように膝を抱えていた。

 そして氷漬けの少女を取り囲むように、多種多様な水棲の魔物が周りをうろついている。

 彼女を狙っている事は明白だ。


退()け」


 まあ俺の敵ではないが。

 眼下の魔物、全員の頭部周辺を空間ごと抉り取る。

 水中が血でドス黒く染まり、魔物共が沈黙する。反応できた奴はいない。


 周囲に敵影がない事を確認すると、俺は氷塊ごと少女を水上へと転移(テレポート)させた。

 ……さて、この後どうするかな。










(???視点)


 私にはもう、何も残っていなかった。


 故郷を失い、家族を失い、自分の夢さえも失った。

 きっと自棄(やけ)になっていたんだろう。現実から逃げるように、私はダンジョンへと潜った。




「とりあえず解凍しなきゃだよな……これ普通の氷なのか? どうやったら溶けるんだ?」




 けれど、ダンジョンで待ち受けていたのは、もっと残酷な現実。

 私には悲しいほど、探索者としての才能がなかった。どれだけ強力なスキルを持っていても、それを活かせる才能がない。宝の持ち腐れとはこの事だった。




「ふむふむ……塩をかけると氷が溶けるのか。とりあえず全身にまぶしてみるか」




 それでも、何も残されていない私はダンジョンに縋り付くしかなかった。

 財宝、名誉、力。

 なんでもいい。どうしようもない現状を、変えられるモノが見つかれば。

 そうすればあの穏やかな日常が戻ってくるかもしれないと、心のどこかで期待ながら。




「……効き目が薄いな。ちょっと加熱した方がいいか? 確か薪木がこの辺に……」




 ……結局、私は何も手に入れられなかった。

 パーティーの仲間は、私を見捨てて逃げ出した。

 仕方のない事だった。あの場面では、一番の足手纏いだった私を切り捨てるのが最善手だ。

 残された私にできたのは、自らを氷に閉じ込めて、少しでも終わりを遠ざける事だけ。

 ……それももう限界だ。冷え切った私の体が、熱を取り戻しつつある。

 間も無く私は、自分の命すら失うだろう。




「あれ、すげー燃えてるぞ……実は氷じゃなくてメタンハイドレートだったか? 大丈夫かなコレ」




 ああ……そっか。

 なぜか急に私の生涯を思い出しちゃったけれど、これが走馬灯ってやつなんだ。

 体が熱い。私を守る最後の砦が溶けていく。

 氷が溶けきった瞬間、私は魔物に全身を貪られるに違いない。


 ……それでも、私は抗いたい。

 最期の瞬間くらい、目を閉じないでいたい。



「あ、でもちゃんと解凍できてるな。よしよし、もうちょっと続けるか。……万が一の時は、時間巻き戻して回復すればいいしな、うん。だから多分大丈夫だきっと」





 ……さっきからちょっと熱すぎない??

 変な匂いがするし、なんかジュージュー音がする。外で一体何が起きてるの?

 私は半分凍りついた瞼を頑張って開いた。


「ん?」


 目の前にいたのは、黒髪の見知らぬ男。

 そして氷漬けの私は、全身に塩をかけられ火に()べられていた。

 まるで人喰い族が、焚き火でご馳走を調理するかのように。




「むっきゃあああああぁぁぁぁ!!!!????」




 そして私は。

 白雪氷華(しらゆきひょうか)はこの世界で、とても情けない産声を上げた。



◆◆◆

第35話 『謎の美少女の塩焼き』


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