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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第3章 海外から最強探索者がやって来るようです

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第34話 最強探索者の来日


(一人称視点)


『ご覧ください、たった今英国最強探索者、アルベルト・ウィリアムズ氏が姿を現しました――』


 お客さんのいない店内で、俺は店のテレビを眺めながら皿洗いをしていた。


『アジア圏最難関と名高い、渋谷ダンジョンを攻略しに来日したとの事ですが……アルベルト氏、意気込みのほどはいかがでしょうか?』


『――僕達はこれまで、数えきれない程のダンジョンを攻略してきた。でもその中で、一度たりとも慢心したつもりはない。今回も僕たちにできる最大限の準備をしてきた。あとはベストを尽くすだけさ』


 長い金髪を垂らした好青年……イギリス最強の探索者、アルベルト・ウィリアムズがテレビのインタビューにそう答えていた。


「ふーん、確かに結構強そうだな」


 テレビ越しでも、その肉体を見ればある程度の強さは察せる。

 英国最強という肩書きは嘘じゃないだろう。少なくともこの間あったクライミカや、初めて会った時のホムラちゃんよりはずっと強い。

 あれから俺もこの世界線の事を勉強しているが、アルベルトに匹敵する探索者は今の所見つかっていない。多分俺を除けば、現時点では彼が世界最強だろう。


「ただ、渋谷ダンジョンを攻略できるかというと、なぁ……」


 彼の所属するパーティー、『Dreamers(ドリーマーズ)』がフルメンバーで攻略に挑むみたいだが、パッと見た感じアルベルト以外は……まぁ、うん。

 多分、死人が出るだろう。それこそ下層のラスボス、シャドウマスターの光速攻撃の前に何人生き残れるか。


 俺が攻略動画を配信している訳だし、流石に何かしらの対策はあると思うが……

 余程の切り札を持ってない限り、かなり苦戦しそうだな。


「さて、俺はどうすればいいのかな?」


 このタイミングでの来日、渋谷ダンジョンの攻略宣言。

 俺が店を開いたのと無関係では無いだろう。それくらいの影響力は自覚している。


 迎えにいくのは簡単だ。俺が出ればケガ人ゼロで下層を攻略できる。

 しかし彼らはそれを望んでいないように見える。なぜなら、アルベルトは一度も『止まり木亭』の名前を口にしていない。インタビューにもあくまで自力での攻略を前面にアピールしているようにみえる。


 となれば、俺が出しゃばるのは余計なお世話という事だろう。

 彼らが欲しいのでは安全と食事ではなく、挑戦と栄光なのだ。


「……今回は大人しく店で引き篭もるか。ここで俺が動いたら、贔屓だって言われるかもしれんしな」


 ……いくら俺が力を持っていても、世の中というのは上手くいかないものである。

 ここ最近、抽選での直接招待を何度か行っているが。人気が出過ぎたせいか、正直厄介な人種が俺の周りに近づいてくるようになったのだ。


 それは、俺に直接救助依頼を出す人達。

 渋谷ダンジョンは広大で、難易度も高い。毎日のように死傷者、遭難者が出てくる。

 その人たちの身内であろう人々が、俺がお客さんを迎えにいくタイミングを出待ちして「助けてほしい」と頼み込んでくるのだ。


 ……大切な人を助けて欲しい気持ちはわかる。

 俺くらいの力があれば、大抵の人は救えるだろう。


 だが全てではない。

 俺は全能の神ではない。死人を蘇らせることはできないし、他にもできない事は沢山ある。

 どうしても全ての人は救えない。取り零しが生まれるのだ。


 そんな人たちに毎回対応していたら、俺の身が保たない。

 たまたま通りすがりに要救助者がいれば助けるくらいの良識はあるつもりだが、自分から積極的に見ず知らずの人を探しにいくことはしない。

 そもそも探し物とか苦手だし。


 俺は料理人であって、レスキュー隊ではないのだ。

 ダンジョンに入った時点で、自分の身は自分で守れ、何かあっても自己責任というのが俺のスタンスだ。もちろんお客さんは別だが。


 故に、彼らだけを贔屓して、探索を手助けしたりはしない事に決めた。




『――また、今回のアルベルト氏の探索には、日本の探索者教会も全面協力を約束しています! なんと、我が国の誇るAランク探索者、狗雷美香(クライミカ)氏が探索に同行するそうです! ここまで破格の対応は前例がありませんね!』


「ん? クライさんじゃん」


 彼女のことはよく覚えている。初めて抽選招待を行った時、店にやってきたお客さんだ。

 何やら俺の事を探っている様子だったが、特に害もないのでスルーしておいた。

 店や他のお客さんに迷惑をかけない限り、誰であろうとお客さんとして扱うというのが、うちの店のルールだ。多少の詮索で目くじらを立てたりはしない。


「う〜ん……一応クライさんは知り合いってカテゴリに入るのかな? 知り合いが死地に向かうのを見過ごして良いものか?」


 見ず知らずの人らがダンジョンに潜るだけならスルーしていたが、知り合いがいるとなると話は別だ。

 この世界において、俺の知り合いと呼べる人物は少ない。一度お客さんとして関われば、多少なりとも情が湧くというものだ。

 さすがに知り合いを見殺しにするというのは、俺とて気分が悪い。


「……いや、逆か? これを狙っての同行なのか?」


 俺が介入する確率を、少しでも上げるための人選。

 なるほど、日本の探索者協会というのは良い性格をしているようだ。


「まぁ、とりあえずは様子見かな……何か問題が起きたら、その時考えるか」


 結局、俺は問題を棚上げする事にした。

 俺個人の問題ならともかく、他人や評判なんかが関わってくるとなかなか判断が難しい。

 特に俺の店は、有名になりすぎた。俺の一挙一動で、店の評判はおろか、世界の情勢に影響を及ぼす程に。

 何をするにも、慎重に行動しなければならない。


「……一人で考えるのもしんどいな。誰かアドバイスくれる人とかいれば助かるんだが。あいつ(・・・)は胡散臭すぎるから、これ以上頼りたくないし……」


 インターネットと電気を用意してもらうだけでも、俺はかなり悩んだくらいだ。

 店の経営に口出しを許したら、それこそ何をされるか分からない。あいつは支援者としては優秀だが、完全に信用することはできない。


 さてどうするかと思考を巡らせていた俺は……そこで思考を中断した。

 いや、させられた(・・・・・)


「――ッ!?」


 総毛立つような悪寒、脳を揺らす耳鳴り。

 この不快感、間違いない。


「時空間が捩れた(・・・)……? 何があった!?」


 発生源は既に特定している。

 渋谷ダンジョン中層、そこに俺はすぐさま転移(テレポート)した。


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