第26話 一人飯を作ってみた
キッチンに移動した俺は食材食器を手早く亜空間から取り寄せる。
「マボロシキノコは少し歯ごたえのある食感で、キノコにしてはハッキリした味と、その独特な香りが特徴です。特に香りの方が曲者でね、鼻にツンとくる香りをどうやって誤魔化すか、なかなか考えさせられた」
:急に場面が
:え、転移した?
:急に場面変わったら編集した動画にしか思えんwww
:どんな匂いするの?
「匂い? んー、雨の日の土の匂いと樹木の匂い。そこにわさび突っ込んだ感じ? 食材としてはともかく、結構癖になるよ」
:わさびww
:金ピカでゴテゴテしてるのに和風っぽい匂いなのかな
:キノコの臭いは好き嫌いわかれるからなあ
:店長ほんとに大丈夫? 匂い吸ってラリってない??
最初は生で食べてみたが、お客さんに出せる基準点は流石に満たしていなかった。
そこで色々レシピを考えた結果、上手い具合に匂いを誤魔化す料理を思いついたのだ。
「目には目を、歯には歯を。匂いには匂いを。つまり俺は別の食材と組み合わせる事で、この刺激臭を中和できないかと考えた」
……あれ? あの食材どこに仕舞ったっけ?
そういや最近食材庫の整理してないな。今度やっとくか。
「……お、あったあった。これが今回使う食材。なんの料理か分かるかな?」
亜空間から取り出した食材をカメラの前に並べる。
ニンニク、醤油、バター。
:これニンニク? やけにデカいけど
:ダンジョン産の素材かな、にしてもなんの料理か分からん
:残りは醤油とバターだよね。醤油使うってことは和食かな
:ニンニク醤油のバターなんとか
「お、いい線いってるコメントが幾つか。じゃあコレでどう?」
追加でもう一つ食材を取り出す。
細長い小麦色の食材だ。これは見覚えのあるリスナーも多いと思う。
:なんだっけあれ
:麺か!
:茹でる前のパスタだね
:ああ、醤油とニンニクとパスタ!
「正解〜。と言うわけで本日の料理は『マボロシキノコの和風パスタ』になります」
試行錯誤の結果、マボロシキノコは熱を加えると、キノコの風味が強くなり刺激臭が若干和らぐことが分かった。
そこにニンニク醤油を加える事で、気にならないレベルまで匂いを落としつつ、双方の味を引き立てる事に成功したのだ。
「誰かがコメントで指摘してたけど、わさびみたいな刺激臭を嗅いだ時、俺は和風料理に合うキノコなのかもって考えたんだ。それを実現させてくれたのはニンニクと醤油だった。ニンニク醤油は炒め物なんかにも使われるけど、今回はパスタにしてみました」
:パスタかぁ、麺の細さから見てスパゲティかな?
:手軽に作れて美味いんだよね
:うおー! 旨そう
:俺もパスタ食いたくなってきたな……
リスナーも盛り上がってきた所で、手早く調理に移っていく。
「まずは麺。塩を入れたお湯にパスタの乾麺を投入します。一人分だし塩は小さじ二杯分で」
麺が茹で上がるまでの間、マボロシキノコの調理も並行して行う。
「麺を茹でてる間にキノコを処理します。食べやすい大きさにカット」
:!?
:一瞬でキノコがバラバラになった
:一瞬手がブレたかと思ったらもうキノコが切られてた。コマ送りみたい
:時間を操作したとか……?
「わざわざキノコのカットに時間操作は使わんよ。普通に切っただけ」
なるべく早く、しかし食材が摩擦で傷まない程度に。この塩梅が意外と難しいのだ。
:普通に切ったらそんな現象起きねーよwww
:残像でる速度でキノコをカットする男
:身体能力が俺らと違いすぎる
:なんでキノコ切るだけでいちいち面白いんだ
:後でスローモーションで見よ
「次にニンニクの皮を剥いて、オリーブオイルと弱火で熱します。本来は風味を抑強くしすぎないために、ニンニクを潰したりするんですが、マボロシキノコの刺激臭を抑えるためにも今回はしません」
数分程熱した後、ニンニクを取り出して代わりにベーコンとマボロシキノコを。
じっくり炒めていると、ニンニクとマボロシキノコの香ばしい匂いがキッチンに漂う。そしてパスタの茹で具合が丁度良い頃合いだ。
「お、炒めてる間にパスタが茹で上がりましたね。麺はちょっと硬めにしてます。この後フライパンで熱するのでね。ちなみに俺は硬めの麺が好きです」
:単純に好みの範疇ってことか
:まあ硬さを調節できるのは麺類の利点よな
:キノコが金色でギラギラしてるからすげー目立つな
:今更だけどこれ食べて大丈夫なんだよな……? 幻覚作用とか毒とかないよな?
「実食したからへーきへーき」
:ごめんちょっと信用できない
:そりゃあんたみたいな超人は何食っても平気だろうよ……w
:探索者って身体が強化されて毒とかに耐性できるらしいね
俺のリスナーやっぱり当たり強くない??
全然信用してもらえてないし。これは最初からではあるけれども。
「コホン。えー、麺をフライパンに入れてニンニク等と混ぜ合わせます。この時バターと醤油も投入。あとは麺の茹で湯も入れましょう」
しっかり具材が混ざったら皿に移し替えて、刻みネギと海苔をちらして完成だ。
「ほい完成。『マボロシキノコの和風パスタ』一人前〜」
:うおおおおお
:映像越しに匂いが漂ってきそう
:ええいVR技術班はまだか! もう画面越しに見るだけは我慢ならんぞ!
:金色のキノコが油でテカってギラギラしてる
それじゃあ実食といきましょうかね。腹減った。




