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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第1章 開店! 止まり木亭

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第19話 どうしてお客が来ないのか


「トオルさん。幾つか確認したい事があるんですが」


「? どうぞ」


 怪訝な表情を浮かべたホムラちゃんが更に質問を続ける。


「トオルさんは下層に来れる探索者が、国内にどれくらいいるかご存知ですか?」


「え」


 何だその質問!?

 流石に探索者の正確な数までは把握してないぞ。


「多分……五百人くらい?」


「……現役の方に限れば、私を含めて十一人です。基本的に、パーティーを組んで下層に入れるくらいの実力があれば、Aランク探索者として認められるんですよ。Aランクって一応、探索者の中で一番上のランクなんですよ?」


「え゛」


 下層に来れる実力をもつ探索者は、十一人……?

 それってつまり。


「……ウチの店に来れる人が、たった十一人しか居ないって事!?」


「あくまで下層に入れるだけ(・・・・・)です。店のある場所、下層7階まで辿り着ける人なんてまず居ません。公式上では」


「嘘でしょ????」


 待って???

 なんか俺の知ってる探索者と違う。探索者ってもっとこう、開拓者(フロンティア)精神に満ちたバリバリの戦闘集団だったよ?

 シャドウマスター程度(・・)苦もなく倒せる奴らがゴロゴロ居たよ?


:嘘じゃないんだよなぁ

:国が発表してる公式記録です

:もしかして探索者のことよく知らない?

:店長の考える探索者と、俺たちの考える探索者のイメージがズレてる気がする


 コメント欄の反応を見る限り、ホムラちゃんの言っていることは本当の事らしい。

 つまり……認識がズれているのは俺の方?


「私が思うに、トオルさんと私たちの考える探索者のイメージに、大きな乖離があるのではないかと思います。さっきからずっと抱いていた違和感の正体はそれですね」


「……俺が思うより(・・・・・・)探索者がずっと弱い(・・・・・・・・・)。いや、今までそんな事なかったぞ……? そりゃ多少のブレはあったが、ここまで下振れてるのは初めてだ。どうなってるんだこの世界線?」


「世界線?」


:ん?

:世界線? 世界線って言ったのか?

:えっちょっと待ってまさか


 あ、この話はまだしてなかったっけ。





「俺、厳密に言うとこの世界の人間じゃないのよ。別の世界線、パラレルワールド(並行世界)から店ごと移ってきたの。自己紹介の日本生まれってのも、厳密には並行世界の日本だね」




「はっえっえっ、ええええええええ!!!??」


:まじかよ

:並行世界って実在してたの!?

:いやでも、さっきから空間操作してたし! それなら並行世界への移動とかも!?

:別世界の人間って事!?


「別に大した事じゃないよ。世界線を転々と移動する人は俺以外にもいるし、並行世界って言ったって殆ど皆同じだ。ダンジョンの地形とかも、探索者の平均的な強さとかもね」


「た、大した事ですよ!? 世界の常識をひっくり返す大事件です!! 今日何度目かもう分かりませんが!!」


「うん、そこ(・・)が俺の認識とズレてるんだ。今まで数多の世界線を渡ってきたけど、そこじゃ並行世界の存在なんてとっくに証明されてたし、探索者達ももっと強かった。この世界線(・・・・・)が例外なんだ(・・・・・・)。だから俺もいつもの感覚で過ごした結果、認識がズレた」


 いやでも思い返してみると、認識のズレを指摘するコメントはあったわ。

 正直いつもの冗談か悪口かと思ってスルーしてた。俺の配信初回からずっとそんなコメントばっかりだったし。


:もう俺の頭では理解できない

:世界線っていうのは幾つもの可能性が分岐した別世界の事。店長はそれを移動する手段を持ってる

:今まで見てきた世界線より俺たちの平均値は低いらしい

:勝手に逆川が俺たちを平均的だと勘違いして、実際は平均よりずっと下だったって事?


「うん。ぶっちゃけそうなる。俺が今までの常識に囚われすぎていたんだ……」


「正直私はまだ理解が追いついてませんが……もっと早くに気づく機会があったのでは?」


「うーん、俺は基本地上には出ないし、ネットが開通して情報収集できるようになったのも開店とほぼ同時だったしなぁ。こっちの世界線に来たのも最近の話で……いやそれよりも」


 俺は今の話を聞いて、どうしてもホムラちゃんに確認したい事があった。


「ねえホムラちゃん」


「はい」


「もしかして俺の店、クソ立地……?」


「……………………」


 ホムラちゃんは無言で顔を逸らした。それが答えであった。


「嘘だろ!? お客さん来ない理由って、知名度じゃなくて立地だったのかよ!!!」


:今更過ぎるwwwww

:ずっとコメント欄でも言ってただろ

:なにいってんだこいつ

:下層は余裕で未開の地だから。それお前の世界だけの常識だから。

:いくら美味い店でもそんなクソ立地じゃ誰も来ないんだよなぁ

:もしやこいつ阿呆では?


 悲報、俺氏念願の料理店を開くも大失敗。人類未踏の地に店を構えてしまう。

 いっそ過去に戻ってやり直したい……流石にそこまではできねぇけど。


「……」


「あの、トオルさん……?」


「今日の配信はここまでです」


「!?」


:あーあ黙り込んじゃった

:!?

:!?

:逃げる気か!?


「良ければチャンネル登録と高評価お願いしま〜す。ご視聴ありがとうございましたはい終了!」


:おい待てえぇぇ

:まだ聞きたい事山ほどあるんだけど!?

:まあとりあえずお疲れ

:こいつやらかしすぎだろw


 畜生、俺は諦めないぞ……必ずこの店を、前の店の様に繁盛させてみせる。

 例えクソ立地という特大デバフをくらったとしても!!


評価、コメントお待ちしております!

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:下層は余裕で未開の地だから。それお前の世界だけの常識だから。 :いくら美味い店でもそんなクソ立地じゃ誰も来ないんだよなぁ :もしやこいつ阿呆では? 鋭すぎるコメントで笑ったww
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