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ダンジョンで魔物料理店を開いたけど客が来ないので、ダンジョン配信者になって宣伝しようと思う。  作者: 猫額とまり
第5章 店長、地上にお出かけする

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第139話 揺らぎの波長


(三人称視点)




(明らかに警戒されてますね、これは)


 マカリは木製の椅子に腰掛け、キャンプ場を静かに観察していた。

 既に食事も終え、トオルやシラユキ、同じ訓練メンバーの会話を聞いている。

 ユダとベルフェの姿が見当たらないが、彼の興味はそれとは別のところにあった。


(……修行の成果はありました。サカガワトオルが語った第六感……時間の揺らぎの認知。

今ならわかる。以前にシラユキヒョウカの周りに見えた揺らぎ、それこそが時間の揺らぎであったと)


 実のところ、今日の修行で一番成長していたのはマカリであった。

 空間と時間は密接な関係にある。元々【召喚術】という、空間を捻じ曲げるスキルを持っていた影響もあって、時間の揺らぎという概念もいち早く理解する事ができていた。


 そしてその揺らぎは、あらゆる生命から常に発せられているものであることも。


(僕も含めて、あらゆる生命体から揺らぎを感じる。……だが、トオルとシラユキ。あの二人だけが異常だ。やはりあの二人には常人とは違う、特別な何かがある)


 トオルからは、そうした揺らぎを一切感じ取れない。即ち、トオルは自身の時間の揺らぎ……時間感覚を、完璧に制御していると言えた。


 そしてシラユキはその逆。常に変動し続けている(・・・・・・・・・・)

 他の人物から発せられる揺らぎは常に一定のリズムを保っているのに対し、シラユキは絶え間なく変動しているのだ。

 そしてマカリの直感では、シラユキ本人にその自覚はない。



(……元々は、シラユキヒョウカに近づきその秘密を探る為に、この訓練に参加したのですが。

彼女の周りには、常にサカガワトオルがいる。これでは近づくことも難しいですね)



 非戦闘員でしかないシラユキが、自分よりも大きい時間の揺らぎを生み出している事実。

 その秘密を探り、自らの糧とするためにマカリは観察を続けていたのだが……こちらの成果も芳しくなかった。

 シラユキの近くには常にトオルが居て、とても行動を起こせる状態ではなかったのだ。

 一度や二度ならばともかく、こうも隙が無いとなると偶然ではないだろう。

 恐らく自分は既にトオルに警戒されていると、マカリは確信していた。


(目的を悟られないよう気をつけていたつもりなのですが……やはりサカガワトオル、恐ろしい存在です。

シラユキヒョウカに接触するのはほぼ不可能。となると、予定を変更する必要がありそうですね)


 マカリは次の計画を練り始める。

 全ては、更なる力を手にする為に。




(一人称視点)




「思ったより修行の成果が出てない」


 俺は訓練生五人の様子を見て、率直に意見を述べた。

 配信は既に終了していて、このテントに居るのは俺とシラユキちゃんだけ。オフレコというやつである。


「……そうなの? イカダ下り、結構頑張ってたと思うけれど」

「それはそうなんだけど……本来の想定なら、一日目で五人全員が時間の揺らぎを認識できるようになってもらうつもりだったんだ」


 ダンジョンとは、地上とはことなる異空間である。

 その時間と空間は不安定で、些細な影響で揺らいでしまう。

 例えば、魔物が新たに出現する時、誰かがスキルを使った時など。そのタイミングを認識できるようになれば、ダンジョン攻略は一気に楽になる。


 が、俺の見立てでは現状、認知できているのはクライさんとマカリさんだけ。

 ユダさんはもう少しって所だが、俺の想定よりは上手くいっていないのは確かだ。


「やっぱりこの訓練メニューが無茶だったんじゃないの……? 店長が直接見守るっていうから私も一応納得したけれど、やっぱり中層をイカダ下りなんて滅茶苦茶だったんじゃ」

「俺の時はこれで修行したんだけどなぁ……まあ普通の川と溶岩の川っていう違いはあるけど」


 俺がまだ時間操作を身につけていなかった時。

 クソ師匠は有難いことに、俺を無理やり結界に閉じ込めて溶岩の川に流しやがったのだ。

 結界が壊れないように魔力を注ぎつつ、四方から襲いかかる魔物を倒し続ける。そうやって俺は第六感を鍛えたのだ。


 ……けど、俺の想定が甘かったらしい。

 俺の体験した修行をなぞるだけでは、あの五人全員を鍛え上げる事は難しいかもしれない。


「なんというか、思ったより個人差が激しいんだよな……そりゃ時間感覚をどう認識するかなんて、本人次第な所はあるけど」

「個人差……」

波長(・・)っていうのかな。時間の揺らぎはあらゆる生命から発せられているけど、そのリズム、波長はそれぞれ違うんだよ」


 それを完全に掌握、支配する事ができれば、相手の時間を止めたりもできるんだが。

 ともかく、あの五人の波長はそれぞれバラバラだ。マカリさんは俺と波長が近いからか、すぐに順応してみせたが……他の四人はどうも難しい。


 己の認識に刻まれた波長というのは、なかなか意識して変えられるものではない。

 残りの四人は、俺の波長に合わせられないのだ。だから時間の揺らぎを上手く認識できていない。

 クライさんは経験豊富なせいか、自分の波長を認識できたようだが。


「他人に何かを教えるのが、こうも難しい事だとは思ってなかった……」

「でも修行が想定より進まなかったケースも、(あらかじ)め想定はしてるでしょう? 明日からは少しペースを落とした方がいいんじゃないかしら」

「そうだなぁ……」


 シラユキちゃんと何度も相談して、修行プランも幾つかのパターンは考えてはいるが。

 ……なんかいい方法ないかなぁ。もっと効率的に、時間の揺らぎを認識できるようにする方法みたいなのが。俺はクソ師匠のやり方しか知らんし。


「ん?」


 と、そこでテントに近づいてくる人の気配。

 この揺らぎの波長は……


「クライさんかな」

「ーーお、言い当てられちゃった。もしかしてこれも時間の揺らぎってやつかな?」


 予想通り、やってきたのはクライさんだった。

 彼女も初めて会った時と比べて、大きく成長している。今なら下層攻略でもいい線いけるだろう。

 しかし、なぜ今ここに?


「何かありましたか?」

「いや、トラブルがあった訳じゃないんだけどさー? ちょっと世間話っていうか。ホムラちゃんについてなんだけど」


 そしてどこか探るような視線で、クライさんは尋ねてきた。


「最近、ホムラちゃんと連絡がつかないんだよね。あの子は何かに夢中になると連絡とか忘れちゃうのは、昔からだけどさ……

それでもちょっと心配でね。店長さん、何か知ってる?」


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