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貴族学園を追放された落ちこぼれは覚醒し、革命を起こす―因果律無効の魔眼でダメージを無効化―  作者: ネイン
反撃の狼煙編

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第四二話 反逆者vs王国のスピードスター③

「だああああああああ!」


 俺は声を上げながら、暴風のような横薙ぎを繰り出し続ける。


「はああああああああ!」


 サムエルも珍しく声を荒げながら、レイピアで俺の攻撃を上下に捌く。彼はこめかみに青筋を立てており、余裕はないように見える。また、彼のレイピアには電流が走っていたが、今は雷そのものを纏ったかのような状態になっており、剣身が太くなっていた。


 得物同士がかち合う度に、周囲に風と雷が弾け散る。


「はっ!」


 サムエルは気合を吐き、稲妻の如く周囲を駆け回る。


「…………そこか!」


 俺は絶え間なく視線を動かして、相手の所在を掴んで突きを繰り出す。


「身体能力も上がっているのか!」


 サムエルは横に構えたレイピアで突きを受け止めた。


「こんなもんじゃないぞ、俺は!」


 俺は剣を引いて、再び横薙ぎを繰り出し続ける。


「ぐっ! まだ強くなるというのか!」


 サムエルは攻撃を捌きならが後ろへと下がっていた。


 ファルカオと戦ったときも『風薙ぎ』を発動している状態で剣を振っていると、剣速と膂力が上がっていた。つまり俺自身の身体能力が向上しているというわけだ。


 際限なく上がる俺の強さ。それと同時に心臓は跳ね上がるように鼓動し、全身の血流が激しく(うごめ)いていた。


 全速力で走り続けているような状態だ。


 このままでは俺の体が危ういが、まだ手を緩めるわけにはいかない!


「『風薙ぎ乱舞』!」


 俺は体を左右に振りながら、八の字の剣閃を描くように攻撃し続ける。


「…………ぐっ!」


 サムエルは顔を(しか)めながら、俺の攻撃を捌き続けようとするが、攻撃を受け止めるのが精一杯で、体を激しく左右に揺さぶられていた。


「まずい……!」


「お前はもう逃げられない」


 すでにサムエルは船の端まで追い詰められていた。


 さらに俺は剣を一振り、二振りし、追撃する。この攻撃は上に、そして下へと受け流された。


 そして三振り目。俺は完全にサムエルのスピードを上回っていた。もうこれ以上、体に負担をかけて攻撃することはできない。この戦いにおける最後の一撃と言ってもいい。


「――っ!」


 サムエルは俺の攻撃を逸らそうとするも、レイピアによる防御が間に合わなかった。


 彼は首に向かってくる剣を避けるために首を後方に反らす。


 スローモーションで目の前の光景が流れる。剣はサムエルにギリギリ届かなかったが、


「クハハハハハ!」


 俺は勝ち誇るように笑う。サムエルは何かに気付いたかのように顔が青ざめていた。


 それから剣はサムエルの首の前を振り抜ける。


 空振りだ。


 しかし、


「しまっ――」


 と、サムエルが言葉を言いかける前に彼の首から鮮血が飛び出す。


「かはっ――!」


 サムエルは右手からレイピアを床に落として、首から流れる血を押さえ、もう一方の手を船の端にかけて体重を支えていた。


「お前は速すぎた、それが敗因だ」


 俺は剣に付着した血を払い、鞘に収める。


 そして、再び口を開く。


「将軍達の戦闘スタイルは各々有名だ。その中でもお前は圧倒的なスピードを生かして相手を一気に制圧するスタイルを取っている。そんなお前が自分以上の速さを誇る一撃を食らいそうになったらどうなる? お得意の剣捌きで間に合わなければ、避けるしかない、もしかしたら今のは経験上、反射的に避けたのかもしれない……それが致命傷となったわけだ」


「ま、魔眼の力だね……」


 サムエルは苦しみながらも声をだす。


「そうだ……お前は攻撃を避けたことで魔眼の力による斬撃が食らったんだ。だが、そんなことは分かっていたはずだ。避ければ斬撃を食らう可能性がある。同じことを言うがお前は自分以上の速さを目の当たりにして反射的に自分の速さを生かしてしまったんだ」


「ふふ……これを狙っていたのかい……?」


「最後の一撃だけはな。それ以外は直接、お前に剣を当てて倒そうと思っていたさ」


 俺が喋った後、サムエルは顔を見上げる。


「美しかったよ、ファル殿。君の剣は素晴らしい努力の賜物だってことが分かる」


 その言葉に俺は目を見開く、まさか王国の将兵に剣技を褒められるとは思ってなかった。感動すら覚えてしまった。


「……お前のような男が王国の将軍になるとはな。ここじゃないところで会いたかった」


「色々と……この国に対して思うことがあるようだね……それもまた人間らしさ、美しいね……ここで僕は降りるとするよ」


「サムエル!」


 サムエルは船の端に背中を預けると、後ろ向きで宙に身を投げ出した。


「…………」


 俺は船からサムエルが落ちた場所を見下ろす。


 敵ながら天晴だった。


 俺はお前と戦ったことを忘れな――


「チッ、あの野郎」


 ――サムエルは民家の上でぐったりと倒れながらも、魔道具らしき指輪を使って首の傷を治療していた。


 生きてやがる。『ここで僕は降りるとするよ』って比喩的な表現じゃなくて実際に降りるって意味かよ。


「食わせ者めが」


 そう吐き捨てると、サムエルは俺に向かって白い歯を見せてきたような気がした。


 だが、これで王都にいる将軍は全員、戦闘不能にした。この出来事は国中だけではなく大陸中に広がるだろう。

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