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貴族学園を追放された落ちこぼれは覚醒し、革命を起こす―因果律無効の魔眼でダメージを無効化―  作者: ネイン
反撃の狼煙編

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第三八話 大事な存在

 周囲は戦いで荒れ果てていた。何より、噴水広場から戦場が広がっている。


 俺がナナの放ってくる光線を避けるために移動し続けたり、戦いの規模が大きくなったせいだ。


 噴水広場から離れたことで、あれだけ多くいた兵士や民衆はいなくなったが、次期に駆けつけてくるだろう。


「ん……」


 俺は声を漏らす。もうすでに数人の兵が気絶しているナナとレイズを介抱しようと駆けつけていたからだ。


「セラ、調子はどうだ」


「少々、疲れていますけど、まだ全力で戦うことはできますわ」


「なら良かった、これをやる。手筈通り頼むぞ」


 俺は懐から生命以外を収納できる異空間が内包されている指輪――『異次元の指輪』をセラに投げ渡す。セラは下手で受け取り、すぐ指に嵌めた。


 指輪の異空間には王城の宝物庫から盗んだ飛空艇が入っている。


 俺の魔眼やセラの極めた魔法がいくら強力とはいえ、体力には限りがある。たった二人で王国に対して快進撃が続くほど甘くはない。今でも上々の出来だ。今回はこれで満足して、飛空艇で王都から脱出しよう。


 俺はセラと一緒にその場から離れ始めるが、


「ま、待って!」


 背後から聞こえるマナの声で足を止める。


 俺達が振り向くとマナは地面にぺたんと腰を落とす。彼女も王国有数な実力者だが、らしくない姿を見せていた。


 今の彼女の精神は不安定で、俺が死ねば自決しようとする意志を露わにし、戦うことすらできない状態だ。


 いつも明るく爛漫なマナと打って変わって闇を感じた。教皇の孫であるが故に彼女は様々な事柄に板挟みにされて生きてきたのだろう。これがマナの本質なのかもしれない。


 セラはマナに近づき、腰を下ろして視線を合わせる。


「セラ……」


 ぽつりと呟くマナの両頬にセラはそっと両手を添える。


「マナは今、寂しい? 苦しい? それとも――」


 そう言って、セラは俺を一瞥し、


「――辛い?」


 と、マナに問いかけていた。


「うぅ……」


 マナは苦し気な声を出していた。


「わたくしがファル様に付いて行くのは自分のため、悔いがないようにするためですわ」


 セラはマナから手を離して立ち上がる。


「自分のため…………」


 マナは俯いて口を閉じた。


「そろそろ行きましょうか」


 セラは立ち上がり、俺の下に戻ってくる。


「っ! セラ! 私達は何があっても親友、だよね」


 口ごもっていたマナだが、意を決したように立ち上がって口を開いた。


「もちろんですわ」


 にこやかな顔でセラは応じた。


「ファル君は……その……私のことどう思ってるの?」


 それはどういう意味で言ってるんだ?


「俺からの好意を確かめているのか?」


「そ、そういうわけじゃない」


 マナは照れくさそうにしていた。


「そうだな……上手く言葉で言い表わせられないが、俺にとってマナはこれから何があっても忘れることはない大事な人だ」


 俺の言葉でマナは頬を赤く染めて俯いた。


 一方、セラは頬を膨らませて俺の腕にしがみつき、


「わたくし、まだそんなこと言われたことありませんわ」


 不満を訴えていた。


「セラも同じように大事な存在さ」


「なんか雑ですわ」


 じゃあ、どうしろって言うんだよ。


「喋り過ぎたな……いい加減、そろそろ行くか」


 俺の言葉に頷くセラ。


「「…………」」


 俺はマナと視線を合わせる。


 彼女は切なそうな顔をしていた。


 それから、セラは攻撃魔法を行使し、辺り一面に噴煙を散らす。その噴煙の中でセラは透明化魔法――『プリズム・フィルム』を唱える。


 俺とセラは透明になってその場から離れたわけだ。


 王都の周りはすでに数多の兵で固められているだろう。しかし、飛空艇を透明化して、搭乗すれば問題ない。


 ただ、『プリズム・フィルム』にも欠点がある。飛空艇のような巨大なものはそう長い時間、透明化できないこということだ。


 おそらく、上空で王国軍に追撃され、王都での最後の戦いが始まるだろう。

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