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貴族学園を追放された落ちこぼれは覚醒し、革命を起こす―因果律無効の魔眼でダメージを無効化―  作者: ネイン
反撃の狼煙編

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第二八話 待ち受ける四人の将軍と枢機卿①

 王都の中心街にある噴水前広場には川を背にした高台がある。そこには魔道教の教皇の次に偉い枢機卿という地位に就いている還暦を迎えた人物――ジャスティン・バーバがいた。その少し横には沈んだ顔を見せた『太陽の聖女』――マナベルク・レストナークがいる。


 また、高台の近くには四人の将軍が佇んでいた。王国の民ならば顔と名前が一致しない人がいないほどの知名度を誇り、それぞれの戦闘スタイルや有する魔法属性を知らないものはいない。


 『魔法王国最強の盾』と呼ばれる青の将軍――ファルカオ・ビタム


 『魔法王国の天才』と呼ばれる白の将軍――ナナ・ラファ


 『魔法王国のスピードスター』と呼ばれる赤の将軍――サムエル・カザド


 『魔法王国の破壊砲』と呼ばれる黄金の将軍――レイズ・トレイシア


 以上の四人が噴水前広場に手勢を率いて待機していた。また、将軍や聖女を一目見ようと周囲には数多の野次馬がいた。


 皆、ファルを待ち構えていた。今回の滑稽な策を描いたのは枢機卿だ。とはいえ、滑稽であることは枢機卿自身も分かっている。ファルが無謀にも聖女に罪を告白しにこれば儲けものだ。だが、枢機卿はファルが聖女と仲睦まじいことを知っており、恋仲だとは思ってないが心の拠りどころである聖女を使えば来る可能性が高いと思ったのだ。


「彼はきっと現れるのである」


 ジャスティンの言葉でマナベルクが僅かに動き、反応してみせる。


「聖女様、協力感謝するのである」


「…………来ないよ。見え透いた罠すぎるから」


 マナベルクはジャスティンを一睨みしたあと、覇気がない声で喋る。


「それはどうであろうかね」


 したり顔で将軍達と民衆を見下ろすジャスティン。


「ファル君……」


 マナベルクは惜しむように名を呟く。今頃きっと、どこかへ逃亡して無事であることを祈っていた。


 一方、将軍達は各々、違う感情を抱いていた。


「魔力を使わない魔眼ね~、めっちゃ見たいんですけど、そう思わない?」


 白銀のセミロングヘアで毛先にクセが付いている女性――白の将軍ナナは横にいる屈強な老兵に話しかけた。


「わしは王国の命に従うまで、余計な私情は持ち合わせぬ」


 屈強な老兵――青の将軍ファルカオは答えた。


「はぁ……つまんな。別のとこ行こーっと」


 ナナはそう吐き捨てて、少し離れた場所にいる二人の将軍の下へと行く。


「機嫌どう? 夫ぶっ殺されて苛立ってる?」


 ナナは黄金の将軍――金髪を(なび)かせたレイズに声をかけた。レイズは将軍でありながら王の妹でもあり、実力と権力を兼ね備えた人物だ。また、クノクーノ・トレイシアの妻でもあった。


「黙れ」


「やっぱ苛立ってんじゃん」


「クノクーノとは貴族共を抱きかかえるために政略結婚したまでだ。情はない」


「言えば言うほどですよ」


「あ?」


 レイズは蟀谷(こめかみ)に青筋を立てる。


「あら、怖い~」


「ワタシがムカついているのは王族に婿入りした癖に簡単に殺されたクノクーノと真犯人が分からないことだ」


「あれれ? ファルとかいう子供じゃないの?」


「オマエ死体は見てなかったのか? 兵共はともかくクノクーノの直接の死因は撲殺だ。私の見立てでは杖による撲殺、聞くところによると魔眼のガキは剣しか持っていないらしいからな」


「ふーん、まあ死体も見たし、そのことも知ってたけどね」


「っ、ぶちのめしてやろうか」


 レイズは手のひらに光を収束させて光線を放とうとするが、


「うーん、美しくないねそれは良くないよ」


 レイズの横にいるライトゴールド色の髪を後ろに束ねた男性――赤の将軍サムエルが口を開く。


「相変わらず鬱陶しい男だ」


 レイズはサムエルに文句を言いながら光線を放つのを止める。


「美しくなるように頑張るさ」


 サムエルはレイズに向けてウィンクをする。


「サムエルはさ、魔眼には興味あるでしょ?」


 ナナは期待を込めて尋ねる。


「魔眼、なんて甘美な響きなんだろう。噂に聞くとファル氏の魔眼は七色に輝いているらしい……羨ましくて僕の眼に移植して欲しいぐらいだよ」


「あー美的な配色に興味があるだけね、ファルって子の遺体はあたしが貰うから、研究しなきゃね」


「その一途な思いもまた美しさだね」


「相変わらず訳分かんな」


 そう言って、ナナは持ち場に戻る。


「時間だ……現れぬのであるな」


 ジャスティンは腕時計を見て嘆息する。


「ふぅ……良かった」


 ホッとするマナ。


 野次馬も去ろうとする中、ある男の一声で皆、足を止めた。


「待たせたな」


「「「⁉」」」


 周囲は息を呑んで背後を振り向く。


 そこには赤い布で左眼を隠し、赤茶色の外套、黒い革製の鎧、右腰に長剣を身に着けた男――ファルが現れた。

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