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貴族学園を追放された落ちこぼれは覚醒し、革命を起こす―因果律無効の魔眼でダメージを無効化―  作者: ネイン
反撃の狼煙編

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第一四話 因果律無効の魔眼①

 唐突なことで理解が追いつかないが、僕の左目には魔眼があり、時間の流れに捉われない世界に来たという状況らしい。


「……これが魔眼」


 手鏡で七色に光る左目を確認した僕は再び目の前にいる男を見据える。


 あいつは一体何者なんだ?


「何か言いたけだな。いいだろう、お前の内に抱える疑問に答えよう」


 回りくどい言い方をするフードを被った老人は喋り始める。


「我もお前と同じように魔力が全く無い貴族の子息だった。不幸中の幸いか、家族は虐げられる私を庇ってくれたが我の存在を許さないこの国と魔道教が家族を皆殺しにし、我だけが生き残ってしまった。それから気の遠くなる時間、潜伏しながら、抗い続けたが……! 魔道教に寝返った仲間達に裏切られ死んだ! それが我だ!」


 老人の感情は徐々に高ぶり、口調が荒くなっていた。


 それより今、死んだって言ってた。


「生きてる人間じゃない……ということですか」


 老人は僕の言葉に静かに頷いて、


 「亡霊だ」


 と、答えた。


 魔力が全く無くて命を狙われた、それはまるで。


「僕と同じ境遇、だったってことですか……僕の命が狙われている理由と貴方が命を狙われた理由はもしや同じなのでは?」


「その通りだ」


 僕は目を見張り、


「教えてください! その理由を!」


 (すが)るように老人に答えを求める。


「理由はその魔眼にある。魔力ゼロの人間は稀有な魔眼に目覚める可能性が僅かにある、基本的に魔眼は魔力を使って魔眼の能力を発動させるものだが――」


「――魔力を消費せずに異能の力を発揮できる眼のことも広義の意味では魔眼と言います」


 僕は相手が言うであろう言葉を代わりに喋る。


「ほう、良く知っているな」


「……無能なりに勉強もしてきましたからね」


 自嘲気味に喋ってしまう。闇雲に机と向かい合ってきた自分を客観的に考えてみても、何の役に立つのか分からないのによく頑張れたものだと思ってしまった。だから、ここぞとばかりに子供のように相手の言葉を遮って代わりに喋ったのかもしれない。


「魔力を消費しない不思議な魔眼、それは魔眼というよりは瞳術といったほうが正しいだろうか」


 そう言って、老人は頭に被っているフードを脱ぐ。


「左目が、光ってる!」


 思わず見たままの光景を口にしてしまう。


 老練な顔つきの男性の左目は燦々(さんさん)とした橙色だった。


「我の『時空間移動の魔眼』は時の狭間を知覚できる眼、そしてそれを認識する脳に覚醒したことで魔力消費なしで時空間移動が自由自在に移動できる。これがさっき言った稀有な魔眼の一つというわけだ。もっとも、亡霊となった今では自由自在に移動できるわけではないが、お前一人を巻き込んで移動することはできる」


 なんとなく今の話で命が狙われた理由が分かった。


「ふふふ……その顔は殺される理由に気付いたというところか」


 得心したような顔をしていたのか、老人に心情を言い当てられる。


「ええ……魔力消費無しの力は魔道教と王国が嫌うところ。魔力がない人間を虐げて強者が得するのがこの国、いや、この世界だ。だから狙われたのか僕もあんたも!」


「その通りだ」


 しかし納得、できないこともある。


「だけど魔力を全くもたない人間だからって、必ず特別な魔眼に目覚めるのか?」


 疑問を相手にぶつける。


「あいつらは片っ端から、魔力が無い人を殺すつもりだ。それだけ、この稀有な魔眼を魔道教が恐れている。魔法王国の建国前には、すでに弱者を搾取し虐げる社会構造ができあがっていた、そこに魔道教に恨みを持った魔力ゼロの人間が不思議な瞳術に目覚め、魔道教を追い詰めたという歴史がある」


 禁書と呼ばれている歴史書も散々、読んできたが知らない話だ。それはきっと建国前の話だからだろう。


「もっともそいつも我同様、最終的には敗れて死んだがな。その過去の出来事があったから、不思議な瞳術に目覚めそうな人間を脅威に思い、人知れず処刑したり理由をつけて処刑する」


「……それなら僕が魔力量がゼロだと分かった瞬間に殺されるはずでは?」


「お前を引き取った家は遠回しに殺そうとしていたのではないか、それに一人の教員の助けがあったおかげかもしれぬぞ」


 魔力ゼロだと発覚した次の日から僕は食事を与えられることはなく、その場にいないような扱いをされた。最も追い出されはしなかったので定期的にアルスター家が所有する猟場で獲物を狩って食らったり、ティル先生の助けがあったので困ることはなかった。


 もしかしたらセラとマナがいつも近くにいてくれたから公に殺すことはできなかったのか?


 ……分からないが、今は改めて目の前の老人に聞くことがある。


「俺を呼んだ理由は?」


「復讐だ! お前も恨んでいるだろ魔力持ちの人間を! この世界を! 力が無ければ平和は保てない! 我はゴーストだがこの左目の力を分けることぐらいはできる! 一人残らず魔力持ちの人間を根絶やしにし、平和で優しい世界を創造するんだ!」


「フハハ……いいね、平和で優しい世界なんて」


 俺はニヒルに笑う。すると、老人はそうだろう、と言って嬉しそうにしていた。


 不思議な気分だ。この左目の魔眼を認識することで確かに尋常じゃない力が宿ったことが分かった。この表現が正しいのかは分からないが、脳が覚醒した気もする。


 内に眠る自分自身が解放された気分だ。


 老人の言う通り、恨みもある根絶やしにしたい気持ちも分かるが……。


 とにかく、俺は本音で語ることにした。

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