金の増える箱
あるところにコーエンと言う裕福な男がおりました。
ある日、コーエンは友人から不思議な箱を手に入れます。
友人によるとその箱は何とお金が増える箱だと言うのです。
「なんでこんなものを俺に譲ってくれるんだ?」
「いや、実はその箱、お金を入れた金額が高ければ高いほどお金が増えるんだ。だから俺が全財産箱に入れてもちょびっとしか増えないんだ。だからお前に買ってもらおうと思って」
「ふーん」
「どうだい、買わないか、その箱?」
「本当に金が増えるんだろうな。買うか買わないかはそれを確かめてからだ」
「もちろんそれでもいい」
初めコーエンは友人の言うことを信じてはいませんでした。
そんな都合のいい物がある訳ない、友人のちょっとした意地の悪い冗談だと思っていました。
しかし、コーエンが箱に金貨をたくさん入れた翌日、箱の中では銅貨が一つ増えていました。
「な、言った通りだろ」
「確かに・・・だが、本当に金貨十枚でいいのか?」
「ああ、いいぜ。俺が持っていても仕様がないからな」
「それはどういう意味だ?」
「コーエン。俺がその箱で銅貨一つ増やすのにどれだけ時間がかかったと思う?」
「さあ、想像がつかない」
「三年だ。三年かかってやっと銅貨一枚。それをお前は一日で増やしやがる」
「す、すまない」
「まあ、気にするなって事よ。これからもたまに遊びにでも連れてってくれたら、それで俺は満足だ」
「そうか。たまにならいい。だが、あまり俺にたかるなよ。人生損するぞ」
「ああ、知っている」
そうして不思議な箱を譲り受けたコーエンは、お金を箱に入れてはお金を増やして楽しんでいた。
しかし、ある日箱に異変が起きていた。
箱の周りで小人が忙しそうに箱を立派にしていたのである。
その光景にびっくりしたコーエンであったが、勇気を出して小人たちに話しかけてみることにした。
「ちょっと君達いいかな?」
「あ、コーエンさん。いつもお世話になっています」
コーエンが話しかけると、小人達の中の一人がコーエンにぺこりとお辞儀した。
「一体君達は何をしているんだい?」
「コーエンさんにはご迷惑をおかけしております。今、改修作業中でして。すぐに終わりますのでご容赦ください」
「ふーん。そうなのか」
確かに箱は古びた感じであったので、直す必要があったのかもしれない。
しかし、変にいじくってお金が増えなくなっては大変だと思いそのままにしておいたのだ。
それを進んで直してくれるとは何と親切な小人達だとコーエンは感心した。
「前から疑問に思っていたのだけれど、一つ聞いてもいいかな?」
「はい、何でしょう。私にお答えできるものであればお答えいたしますが」
「何でこの箱にお金を入れるとお金が増えるんだい?」
「それはですね・・・」
それから小人にいかにしてお金が増えるかの仕組みを詳しく説明されたが、コーエンは少しも理解できなかった。
分かったことと言えば今までお金が増えてきたのはこの小人達のおかげだったということぐらいであろうか。
それからしばらくコーエンは小人達の作業を終わるまで眺めていた。
「コーエンさん。お待たせいたしました。いつも通り業務を再開できます」
「ああ、そうかい。終わったんだね。それじゃあ、いつも通り」
そう言ってコーエンは金貨の入ったずっしりとした袋を取り出し箱の中に入れた。
「確かにコーエン様のお金をお預かりいたしました」
「それじゃあ、またお金が増えたら取りに来るよ」
「はい。小人銀行、またの御利用お待ちしております」