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邪智暴虐王改心計画

 兄に王との約束を守らせる。


 それしかセリヌンティウスを救う道はないと私は考えた。


 だとすると私にできることは唯一つ。


 兄の心技体を鍛えることだ!!


 兄にはスパルタ人のような強靭な肉体とアテネ人のような清廉な心を身に着けてもらわねばならない。


 あと3ヶ月で!!……無理では?


「やってみなくちゃわからないわ!!」

「おわっ!急にデカい声を出すな!!……ぐわっ!!」


 台に登って雨漏りを直していた兄が転げ落ちて床が抜けた。


「……ダメかもしれない」

「ああ、この家はもうダメかもしらん」


 バイバイ、セリヌンティウス……。


 * * *


「お兄様、大切な話があります」

「な、なんだ?改まって」


 床板を打ちつけている兄。


 私はその傍らに座り、兄の目を見据えた。


「お兄様、近ごろのお兄様は弛んでおられます」

「何を言うんだ妹よ。俺ほどの男を前にして……」

「先日羊に逃げられましたね」

「……」

「走って追いかけて普通に振り切られましたね」

「……いや、羊が本気で走ったらなあ」

「子羊に」

「……」

「牧人が家畜に逃げられて仕事になりますか?」

「……ぐう」


 子羊に逃げられているようでは困る。兄には3日で十里を往復して結婚式を挙げるだけの体力を身に着けてもらわねばならない。


「私はお兄様が心配なのです」


 まあ、心配なのはセリヌンティウスの命なのだが、それを今の兄に言っても仕方ない。


「私はしばらくしたら嫁いでいってしまいます。お兄様は一人で生きていけるのでしょうか」

「……!」


 兄が私を溺愛していることはわかっている。今こそ愛され妹の立場を活かすべきときだ。


「これでは私は安心してお嫁にいけません」

「……!!」


 ここでキラリと光る一筋の涙!!


 めんどくさそうに聞いていた兄の全神経を私に集中させることに成功した。


 ここで私はビシッと兄の腹部を指差す。


「そもそもお兄様は恥ずかしくはないのですか?そのお腹で!」

「……ハッ!!」


 兄は太った腹を両手で覆った。とても隠しきれるものではない。


「そのだらしないお腹を生まれてくる甥や姪に見せる気ですか?」

「なに!?お前らもうそんなところまで!?」

「あ、いや……と、とにかく!お兄様には今後生まれてくる私の子どもたちの見本となる男になっていただきたい!!」

「し、しかし」

「まずはお散歩から始めましょう!私も付き合いますから」

「だが、身重のお前に……」

「それは忘れていいから!!」


 ここで私は兄にもたれかかる。


「おねがいしますお兄様!!」


 兄の顔を見つめる。


 両目うるうる。


「ッスゥー……やるか」

「ッフ……」


 ちょろい……!


 兄のやる気など私にかかればいくらでも引き出せるのだ。


 あと3ヶ月……馬車馬のように走らせてやる……!!

 


 





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