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エピローグ:婿さんの推理

追加です。


 頭領様、お世話になりました。みなさん行方不明の子どもを探さないといけないのに、お邪魔してしまってすいません。

 私もいろいろ考えたんですが、それ話してもいいですか?帰りの船の時間までまだありますし。

 はい、ありがとうございます。


 子どもの頃にこんな映画を見たんです。

 ある男の妻が轢き逃げされて死んでしまうのですが、男は犯人を仲間の内の誰かだと睨むんです。誰かは解りません。

 男は発奮して金持ちになり、仲間を集めます。大きなヨットを買って、みんなで海に行こうと。

 みんなはもう男とは離れたがってはいるんですが、自分の懐は苦しい、男は大金持ちですので、借金を頼めるかと集まるんです。

 男は皆にゲームをやろうと言いだし、懺悔のゲームを言いだします。ヨットの奥の方に自分がいるから、一人ずつやってきて何でもいい、心にしこりとなっていることがあったら言ってくれ、秘密は守ると。

 みんな内心は冗談じゃないと思うのですが、そこはお金持ちの言うことですから、それくらいは言うことを聞かないといけない、みんな順番に男のところに行きます。

 男ももちろん妻を轢いた犯人が名乗り出るのを待っていて、誰が犯人かを知りたくてやりまして、案の定轢き逃げ犯は謝罪してくるのですが、物語はそこから二転三転して連続殺人事件が発生します。


 私はこの映画を幼いときに見まして、全く勘違いしておりました。

 男は大金持ちになって容疑者を集め、懺悔ゲームではなくかくれんぼをしようと持ちかけたと思ったんです。最初に自分を見つけた者には一番多額な融資を、二番目にはちょっと少なく、三番目にはさらに少なくと減額していく、という裏で、かくれんぼで鬼が隠れた者を見つけるときって一対一の関係になるんですね、そこで男は相手に、とてもとても嫌なことを言うんです。侮蔑の言葉を浴びせることが男のやりたかったことと勘違いして覚えていたんですが、最近この映画のストーリーを調べたら記憶違いが解りまして、子どもの頃の記憶ってあてにならないなと思ったんですけど。


 しかし今回の失踪事件の概要を聞くと、この構図なんじゃないかと思ったんです。

 他の遊びならともかく、かくれんぼは、鬼が隠れてる子のほうにやってくるんです。隠れる側が鬼を標的にしたら、獲物が自分のほうにやってくるんです。

 これが鬼ごっこなら無理です。鬼が他の子をタッチしたらタッチされた子が鬼になりますし、みんな常に走り回るので決行する瞬間を誰かに見られるかもしれない、かくれんぼなら最初に隠れたところでしばらく動かなくなりますからね、なるべく早く事を済ますならかくれんぼがいいんです。


 子ども達がかくれんぼをやっていたときに怪しい大人どころか島の大人も誰一人子ども達の周囲にはいなかった、だから神隠しが起こったのではないかと噂が始まりましたが、犯人が子どもの誰かだったらとても簡単です。前準備は基本的に穴だけを掘っておけばいい。

 まずみんなにかくれんぼをやろうと提案する。

 お調子者がすぐK君を鬼に指名する。

 K君が数を数えてみんなが一斉に散らばりますが、最初に走り出したのはA君なんですってね。

 A君が自分だけが知っている獣道を通って、自分だけが知っているエリアに行って、まぁ他に誰か近くに来たら解るよう鳴子くらいは仕掛けますか、後はK君を穴のある場所に誘導するために前に出る。私の妄想を豊かにしていいなら、祭りで演じられた悪鬼退治の悪鬼の服に近いものでも着て、鬼が実在するのかとK君の興味をひくようにする、お面でも着けて誰だか解らないようにすれば、少なくとも遠目には自分だと解らないでしょう。

 K君が怖がって逃げてしまえば仕方がない諦める、しかしK君が鬼の後をつけよう、鬼の手がかりでも手に入れて、みんなを見返してやろうと付いてきたら、もう手はず通りです。

 K君を穴の近くまで誘導し、姿を隠す、K君がやってきて、背中を見せたら一気に襲いかかって首を絞める、終わったら穴に突き落とし、急いで土をかける。

 あとは誰かがK君がいないことを騒ぎ出したら合流する。

 穴の近くに川か湧き水でもあれば最高ですね。手を洗えます。

 


「証拠は、証拠はあるのかね!」側近の一人が叫ぶ。

 いえ、証拠はありません。ただの推理、妄想です

「ならばそれはここだけの話だな。映画好きの父親がいるから犯行を思いつくかもしれないなんて、映画好きへの偏見にしかならない。A君に問いただすことも無理だ」

 えぇ、解ります。証拠がない以上ただのお話でしかなく、ここから外には出せない類いです。

 しかしですね、話を聞いて回って確実なことはあります。

 かくれんぼが始まって、子ども達が各々隠れた場所が例えばこういう配置だとしますと


 と用意していた紙に適当に点を打ち、


 この点を子どもとします、で視界の距離を半径として、それぞれに円を描きます。この子はこの範囲、この子はここまで、この子はこう、と円を描いていきますと、これら円の頂点を結んで、いびつですがエリアになりますよね、このエリア内には怪しい人が誰一人いないことは明らかになっています。不審者どころじゃない、島の人も誰もいない〝ということになっています〟、ならば、誘拐犯が存在するとすれば、このエリアの外を歩いていたってことになりますよね、

 私が今描いた絵は適当な絵ですが、実際に子ども達に隠れた場所を聞いて、不審者が絶対いないエリアを明らかにして、その外を探すことはみんな納得すると思うんですよ。

 そういう口実で子ども達に隠れていた場所を言わせます。

 で犯人は、子ども達の中にいるならば、嘘の場所は言えないと思うのですよ、自分の隠れていた場所からは誰も見えなかったことは確かです、つまり誰からも見られていない、しかし嘘の場所を言ったら誰かに「お前そこにいなかっただろ」と言われる危険がある、だからせいぜいギリギリのところを指して「ここにいました」と言うしかないと思うのです。

 で子ども達が全員言ったら、それぞれの場所を中心にして円を描いて、その中に地面が掘り起こされた形跡がないかを探せば、ただ闇雲に山狩りをするよりは効率的だと思います。

 もちろん証拠はありません。私が子ども達に隠れた場所を聞く権限もありません。なので皆さんにやってもらっても、大外れの空振りになるかもしれず、謝っても謝りきれないことになるでしょうけどね、

 それでもこの誰もいない区域が解ることは、無駄にはならないと思いますよ。


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