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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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ダンジョン攻略-11

 ほぼすべてのパーティーが5層へと向かったのを見届けた後、自分たちも準備の最終確認をして5層へと向かおうとする中、自分から言ってしまったもののやはり気になってしまうのか先ほどから所属しているパーティーメンバーの1人に掴み掛られている1人の冒険者を一瞥する。どうやらパーティーメンバーの声にも耳を傾けていないようだ。


 少し言い過ぎたかとも思ったが、やはり自分にも譲れないものがあるわけでしかも、あの時の戦闘の時、彼の諦めた表情がなぜか今5層にいるやつと少しだけ被ってしまったのだ。自分の命を捨てても仲間を守ろうとする決死の覚悟。その覚悟が出来る者は少なく珍しいことなのだが、その覚悟が出来る者のそばにいる身としてはやはり命を軽く見ているというか大事にしている感じがないように感じてしまう。


 5層にいるやつもまだ死んではいないが、当初は本当に自分の命を犠牲に他の仲間を守って死にに行ったのだと思った。そしてその日からあの時の後悔が終わらない。もうこれ以上後悔はしたくないのだ。「誰も失いたくない」その心情が先ほどの戦いで自分を動かしたのだ。


「なぁ本当にあいつを参加させないのか?」


 彼の姿を一瞥した後、サクラとともに5層へと続く階段に足を踏み入れた瞬間、背後から自分に対して言っているのだろうと思われる問いが来た。声のする方へと顔だけ向けるとそこには先ほど口論した彼のパーティーメンバーの1人であり、エイガルドに来た時から古い友人の1人でもある神官のハヤトが階段上から見つめていた。しかし、いつもの笑顔はなくまるで怒っている表情にも見えた。


「……ハヤト、か。あいつってユウキの事だろ?もちろん参加させないつもりだ」


「その選択で本当にお前はいいのか?一時の感情に任せて発したわけじゃないよな?」


 ソウジの返事に一拍おいてハヤトは再度問いかける。その声には少なからず怒気が含まれているとソウジと傍にいたサクラは感じ取っていた。


「当たり前だ。さっきもあいつに言ったように自分の事を大事にしない戦い方をするようなやつを連れていくわけに行かないからな」


「そうか、それなら別にいい。所でタイガの救出はどうするつもりだ?それとボスの特性や特徴、それに使用する魔法属性とかユウキみたいに分かる能力持ちがいるのか?」


「それならこの先のボス部屋の前で話すさ。それと上に残っているお前の仲間もそろそろ呼んで来い。時間が惜しい」


 階段上でこちらを見つめているハヤトにそう伝えるとサクラを連れ、5層へと続く階段を降り始めた。ハヤトもソウジが5層へと向かうのを見届けると「さて、どうすっかな」と誰にも聞こえない声量でそう呟くと、未だユウキに掴み掛っているカズたちの方へ向かった。



☆★☆★☆



「先ほどはハヤトさんにあー言ってましたが本当にユウキさんを参加させないんですか?」


 階段を降りる中、2人はずっと黙ったままだったが、サクラはやはりソウジの判断に不満があるのかそれとも不安があるのかハヤトに問いかけられた事を再度質問した。その質問はもう聞きたくないのか嫌気が差したかの様な表情で後頭部を軽く掻きながらふぅっとため息を吐いた。しかし、サクラはそんなソウジに構うことなく言葉を続けた。


「ソウジさんの言うことも最もだとは思いますが正直、これから挑むボス戦においてユウキさんの協力は必要です。魔物の『鑑定』は出来る上『闇扉(ゲート)』でのサポートも出来る。それに魔力量もそこらにいる魔法使いよりも高い。ソウジさんには本当に考えがあるんですか?」


 サクラの言葉にソウジは耳を傾けはするが、一切口を開くことなく黙したままだった。そしてこの先の戦いにユウキの力が必要なのだとソウジ自身も分かっていた。分かってはいたのだが、やはりユウキの行動を許すことは出来なかった。しかも、攻略隊や冒険者の前でユウキを参加させないと言ってしまったのだ。


 その上で「やっぱりお前の力が必要だ。力を貸してくれ」と言ってしまえば自分の言葉に責任を持っていない上に指揮をするものとしての立場や統率力が取れなくなってしまうとソウジは今更になって自分の言葉に少しだけ後悔をしていた。


 しかし、後悔をした所でもう遅い。今は目の前に迫るボス戦での作戦だ。階段を降り切るとすでに覚悟を決めたのか攻略隊も冒険者もまるで歴戦の戦士の様な顔つきをしてこちらを見ていた。階段を降り切るまでの間、何度かサクラに返答を求められたが答えることはなかった。


「ほぼ揃っているな。残りのやつらが来たら作戦の最終確認を行う。もうしばらく待機だ」


 暫くの間、待っていると階段を降りてくる複数の足音が聞こえた。足音のする方に視線を向けるとそこには4層に残っていたハヤトたち『常闇の黒猫』のメンバーとサティヴァ―ユが降りてきた。そしてその少し後ろには未だ顔を伏せたままのユウキもゆっくりと降りてきた。


「やっと来たか。遅いぞ。とりあえずパーティーごとに集まってくれ」


 ソウジの指示にハヤトがあまり悪びれた様子もないような表情で「わりぃ」と短く答えると自分たちの所属するパーティーに戻っていった。しかし、ユウキだけは階段から降りた後、パーティーの方へ集まることなく壁際に背をもたれかかった。


 そんなユウキの姿に目を向ける者も多く、ソウジも無意識に一瞥していた。そしてすぐに目の前に立ち尽くす攻略隊、冒険者に視線を戻すと、一拍おいてから口を開いた。


「作戦の最終確認を行う。まずは—————」



☆★☆★☆


 ギィッと5層にあるたった1つの扉が大きな音を立てながらゆっくりと開く。扉の先の空間は今までの階層とは違い、何の明かりも無いせいかどこまでも続く闇だった。ソウジの合図で前衛パーティーから扉の先へと足を踏み入れるが、進む足だけでなく装備している武器や防具そしてこの部屋の雰囲気さえ重く感じ、息をするのでさえ辛く感じる程だ。


 全員が部屋に入り切った瞬間、まるで部屋自身に意識でもあるかのように部屋の壁に沿うように設置されていた錆びついた篝火が燃料も無くボッと燃え始めた。部屋に広がっていた闇がまるで掻き消されるかのように篝火の明かりによって明るくなったが、部屋にいた一同は明かりの届いた部屋を見て驚愕した。


「……なんだよ、あれ」


 誰かが無意識に『それ』をみて呟く。その呟きを合図にある者はひそひそと隣にいる者と言葉を交わし、またある者は『それ』を見て声にならない悲鳴を短く上げた。

次回更新は10/16です

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