表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
91/163

ダンジョン攻略-10

「今なんつった?」


 ソウジの不意を突く一言に再度聞き返してしまったが、返ってきた言葉はほぼ同じだった。先ほどと違う点があると言えば今回の言葉には少なからず怒気が含まれており、この場の雰囲気が今にも一触即発しそうなほどの重苦しい雰囲気へと一転した。


「今のお前をこの先のボス部屋に連れていくことは出来ない」


 だが、ソウジはそんな重苦しい雰囲気を気にする事なくさらに言葉を続ける。しかし、ユウキにはソウジの言うことが理解できなかった。最初は自分のせいで怪我をしてしまった腹いせにそう言っているのかと思ったが、ソウジはそういう陰湿な事をするようなやつではないと今までの言動で知っていた。


 じゃあ、なぜそんな事を言うのか。いや、聞かずともなんとなく理解はしていた。多分だが、先ほどの戦闘で自身の油断から生まれた隙により仲間であり、攻略隊のリーダーであるソウジを危険に晒したからだろう。だからこそ、ユウキはこれから臨むボス戦で自分の失態を挽回しようと考えていたため、ソウジに「連れて行かない」と言われたことに混乱していたのだ。


「だから、なんで……っ!」


「お前、……さっきの戦闘で何した」


「さっきのってもしかしてお前、自分が怪我をしたってことに俺のせいだっていうのか?確かにそういう事なら俺が悪いし非も認める。本当にすまなかった。その事に関しての事でボス戦に連れて行かないっていうなら理解はできる」


 そう言ってユウキはソウジに向けて頭を下げるが、ソウジは何も言わずユウキの言うことが違うとでも言いたいような表情で頭を横に振った。だが、そのソウジの表情は頭を下げているユウキには見られることなくソウジの心情もユウキには伝わらなかった。


「この怪我の事に関しては俺が勝手に動いて出来ちまった怪我だ。お前のせいじゃねぇ」


「じゃあ何が原因だよ」


 怪我をしてしばらくの間武器を持つことが出来なくなった右腕を少しだけ強調するように前に出しながらソウジはそう言った。しかし、ソウジの怪我が原因でないとなるとユウキはますます訳が分からなかった。なにが原因なのかと。


「お前さっき土蠍族(ランド・スコーピオン)にやられそうになった時、諦めたような顔して動こうともしなかったよな」


 ソウジは冷たく、まるで見下すような目でユウキの事を見ながらそう言葉を発した。しかし、ユウキからしてみればあの時の状況はもうどうする事も出来なかったし、抗おうにも無理な体勢から土蠍族の攻撃を避けてしまったせいで身体を痛めてしまったっていう理由もあったが、それを言ったところで言い訳にしかならないだろう。


「なんであそこで動かなかったんだ?俺みたいに誰かが怪我してでも助けてもらえると思っていたのか?それとも自分を犠牲にしてでも皆には生き残ってもらおうとでも思ってたのか?お前がどちらかの考えを少なからず持っていたのなら俺はお前をこの先の戦闘に連れていくことは出来ない。いや、連れて行かせない」


 淡々と言葉を重ねるソウジにユウキは何も言えずに口ごもっていた。誰かに助けてもらうつもりはなかったが、自分を犠牲にするという考えは少なからずあったのも事実だ。だからこそ、何も言えなかった。


「お前も知ってるはずだろ。俺が自分を犠牲にする戦いが嫌いなの」


 その言葉はついさっきまでの怒気を含んだ声ではなく、哀しみの含まれた声だった。そしてその言葉を聞いた瞬間、ユウキはソウジの「連れて行かない」という言葉の意味を理解したと同時に自分の浅はかな考えに後悔した。


 ソウジの気持ちは知っていたはずなのに、ソウジの大切な仲間であるタイガという人物と同じ事をしてしまった。ユウキは自分の失態を完全に理解したせいかもう何も言えなかった。いや、言葉を発する事も出来なかったのだ。


「……正直時間が惜しい。これ以上だんまりを続けるなら俺の問いに対しての返答は肯定と取る」


 これ以上言葉を発する事のないユウキにこれ以上の時間を掛けられないと判断したのかソウジはユウキから身を翻すときに「残念だよ」と最後にぼそりと言葉を残し、準備を終えた攻略隊の下へと静かに戻っていった。


「とりあえず時間だ。まずはボス部屋の前まで移動をする。その後最後の作戦の確認だ。準備が出来たパーティーから階段を降りて待機していてくれ」


 冒険者を含む攻略隊の下へと戻ったソウジは一拍おいてから全員に伝わる声量でそう言葉を発した。先ほどのソウジとユウキのやり取りを見ていたせいか冒険者や攻略隊たちの表情は濁っていたが、ソウジの掛け声で一気に表情を引き締めた。


 そして準備の出来たパーティーから順に5層へと続く階段を降りていく。



☆★☆★☆



 ほぼすべてのパーティーが5層へと続く階段に足を踏み入れた後、ユウキはいつまでも動こうとはせず、まるで魂が抜けたかのようにぼーっとした表情で地面を見つめていた。


「おい、いつまでしけた面してんだよ」


 ほぼ全ての者が5層に行く頃合いを見て自分も重い腰を上げ、5層へと向かおうとした時、聞きなれた声と数人の足音が聞こえた。声のする方へと一瞥するとそこにはユウキが所属する『常闇の黒猫』のメンバーとかつて攻略隊に参加するときパートナーとしてチームを組んだサティヴァ―ユの姿もあった。しかし、いつもはみんなの先頭に立って声を掛けてくるハヤトの姿だけが無かった。


「カズ……。それにお前らも……なんか用か?」


「何か用かって散々な言い様だなユウキ。それよりお前この後のボス戦どうする気だ?」


「どうするって参加させないってソウジが言ってたんだ。どうしようもないだろ。大人しく邪魔にならない所で待ってるさ」


 誰の顔も見ない様に俯きながらカズの問いにそう答えた瞬間、突如視界が変わった。カズがユウキの襟元を掴み、思いっきり自分の方へと引き寄せたのだ。そのせいかカズの表情がよく見える。


「……ふざけんなよお前。ここまで来といてソウジに言われたくらいでこの先に行くことを諦めるのか?それじゃあお前一体ここに何しに来たんだよ!」


「ちょ……カズ君、やめなよこんな時に」


 ユウキの襟元を掴むカズを止めようとタイセイが動き出そうとするが、近くにいたアカネに止められてしまった。タイセイは自分の肩に手を置き、自分の動きを止めようとするアカネの方へと顔を向けるとアカネは手を出すなとでも言いたいような顔でタイセイの顔を見つめると無言で頭を横に振った。

次回更新は10/9です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ