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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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ダンジョン攻略-9

 迫りくる土蠍族(ランド・スコーピオン)に覚悟を決めて、瞼を閉じてから数秒、周りが自分の名前を呼ぶ声が微かに聞こえるが、土蠍族の鋏が自分に振り下ろされるまで時間は数秒とはいえ、かなり長い時間が過ぎているような感覚だった。しかし、一向にその鋏は自身に降りかかる事はなく、また来るはずの痛みも一切来なかった。


「ぐっ……」


 そして、土蠍族の鋏が振り下ろされた頃から数秒後、聞こえるはずのない呻き声が目の前から聞こえた。ゆっくりと瞼を開き、今起こっている現状を視界に入れるとそこには先ほどまで自身に迫っていた土蠍族の姿はある人物の姿で遮られているようで、その人物はまず自分の前にいるはずのない者だった。いや、いてはいけない者だったのだ。


 彼は土蠍族の攻撃を黒百合の象嵌が特徴的な黒百合の剣で受け止めてはいたが、受け止めきれなかったのか彼の右腕からはかなりの量の血が流れ、それは地面に吸い込まれるように落ち、彼を中心に少しずつ広がっていた。出血量を見るだけでもかなり出ているように見える。


「ソウジ……お前、なんで……っ!」


 ユウキのか細い声にソウジは口角を少しだけ上げてふっと笑った。視線はそのまま土蠍族から動かすことなく、さらに土蠍族の鋏に挟まれた黒百合の剣と右腕はそのままに空いた左手で腰に帯刀していた刀の柄を一気に引き抜き、土蠍族の鋏を切り落とした。突然自分の武器である鋏を落とされた土蠍族はぴぎぃっと短く音を鳴らすと、すぐさま後退し、ソウジから距離を取った。しかし、後退したところにはすでに他の冒険者たちが武器を構えて待ち構えており、すぐさま尻尾を切り落とされるや否や背中から剣を差され絶命した。


「はぁ……はぁ……大丈夫、か?」


 黒百合の剣と青い柄と自身の顔が映る程に輝いた刀身が特徴的な刀がソウジの両手から離れると同時にソウジも地面に膝を着き、ケガを負った右腕を抑えながらユウキに無事かを確認する。右腕を抑えはするが、傷が深いのか血は止まることなく流れ、地面を赤く染める。


「ソウジさん!……神官の人回復をお願いします!」


 サクラはソウジの腕を見るや否やすぐさま後ろに控えている神官のパーティーに声を掛けると、ウエストポーチから布を取り出し、ソウジの右腕にある傷口の上にきつく巻きつけ止血を行う。布を巻き付け終えると同時に神官数名が小走りでソウジの下へと集まるとすぐさま回復魔法を唱え始めた。そこにはハヤトの姿も見受けられたが、ユウキは声を掛けることも無くその場に座り込んだままだった。


「おいユウキ!いつまでそこで座り込んでんだ!さっさと前衛で身体張ってるガーディアンたちのサポートに迎え。自分のやることが分かったらさっさと動け!」

 

 突然の出来事のせいか頭が上手く回らず、ソウジが回復される姿をただただ見つめていると、そんなユウキの姿に気付いたソウジが額からは大量の脂汗を流し、呼吸も乱れる中でそう言葉を発した。


「っ!……『闇扉(ゲート)』」


 ソウジの言葉で我に返ったユウキは魔物の動きを抑えているガーディアンたちとガーディアンたちの後ろで様々な属性の魔法を打ち込んでいる魔法使いたちを一瞥すると、両手に持っていた拳銃に闇属性の魔力を込めるや否や銃口を魔物たちの頭上へと向け、引き金を引いた。2つの銃口から放たれた紫色の魔力は魔物の頭上で留まると、2つの魔力はお互いに吸い付くように重なり1つの魔力になった。そしてその魔力は『闇扉』へと変換され、魔物の頭上を埋め尽くすほどのになった。


「この穴に魔法を撃ち込んでくれ!出来るだけたくさんだ!」


 ユウキは魔物の頭上に展開される『闇扉』へと繋がる『闇扉』を新たに自分の近くに発動させるとガーディアン達の後ろで魔法を撃ち込んでいた魔法使いたちに指示を出した。魔物の頭上に展開される『闇扉』に含まれる魔力量に魔法使いたちは圧倒されたが、ユウキの指示を聞くや否や、魔法を発動させた。そしてユウキもそれに続くように拳銃に魔力を込めては魔法へと変換し、『闇扉』へと撃ち込む。



☆★☆★☆



「……この階層の魔物は全滅したようです。残るは5層のボス部屋のみですねソウジさん」


 先ほどまでソウジたちに迫っていた魔物の群れはユウキの『闇扉』と魔法使いたちの魔法によりなんとか一掃できることは出来たが、そのおかげで前線で戦っていたガーディアンたちと魔法使いたちは体力と魔力をかなり消耗してしまったため、魔物を掃討後、サクラの『広範囲索敵』で残りの魔物を討伐しつつ、少しだけ休憩を取ることにしていた。


「そうか、やっとか……」


 そして今は5層へと続く最後の一本道の通路で消耗した身体を休ませるため休息をしていた。ソウジはというと土蠍族により負傷した右腕は神官たちが総出で傷口を回復魔法で癒しはしたが、負傷した腕には骨に罅が入っているようで外傷は治せても内傷を治すのはかなりの魔力と高度な魔法が必要なため完全に治すことは出来なかった。正直、剣を持つのも難しい状態だった。


 そのせいもあってか攻略隊や冒険者の顔色は暗く、自分の油断のせいでソウジにけがをさせてしまったユウキは他の誰よりも顔色が暗く、ハヤトやソウジたちと一緒に組んでいたパーティーメンバーからもユウキの心情や状態を気にかけて声を掛けるが、反応を示すことはなかった。ユウキもユウキで魂が抜けたかのようにある一点を見つめながらぼーっとしていた。


「はぁ、……おい、ユウキ」


「……なんだよ」


 そんな最悪な状態のユウキにとうとう呆れ果てたのかソウジは苛立ちを表しながらも冷静にユウキに声を掛けた。ソウジに呼ばれ、我に返ったかのように身体をビクつかせたが、ユウキは焦ることなくゆっくりとソウジの方へと身を翻し、短く返答した。声にはまるで生気を感じられなかった。


「いつまでそうしているつもりだ?そろそろ5層に言ってタイガを助けたいんだが?」


「……そうか、もう行くのか。それで作戦はなんだ?俺の役目は?今までと同じように前線で戦いながらサポートすればいいのか?」


 自分の役目は分かっているのかゆっくりと、そして感情のこもっていないような低い声でソウジに問いかけるもソウジはユウキの姿を見て、一拍おいてから「いや、この先にお前は連れて行かない」とだけ答えた。

次回更新は10/2です

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