デスゲームの始まり-7
「これは一体どういうことだ?魔武石が……二つ?」
サキが取り出した魔武石という石の塊を見てバルザは困惑の表情を浮かべる。どうやら一人の人間に魔武石が二つも与えられることは前例に無い様だ。バルザは理解が出来ないのか暫くの間、一人ボソボソと何やら呟いていた。
「おい、ハヤト。本当にこの世界に来たのは彼だけなのか?」
考えが纏まったのか、それともただ単に考えるのを止めたのか分からないが、バルザはハヤトに視線を向けるなり、そう問いかけた。確かにそう考えたくなるのも分かる。現に魔武石の数を今初めて見たサキ以外の者たちも目を丸くしていたからだ。
「俺たちがユウキを見つけた時は一人だったな。他に誰かがいた形跡とかも無かったし多分ユウキ一人だけだと思う」
問いかけられたハヤトは答える前に一度他のメンバーたちと顔を合わせてからそう答えた。その言葉を聞いたバルザは困ったように頭を抱えたが、ハヤトは続けて言葉を発した。
「まぁ、仮にユウキ以外にもこの世界に来た人がいるならいずれはここに来るだろうし、今は確認だけでもしてみたらどうだ?」
ハヤトの言葉にバルザは暫く思考を繰り返したのちに「そうだな」と短く答えた。そして、再度ユウキを連れ、今度はユウキが神殿に入った瞬間から気になっていた紫色の宝玉の前で足を止め、説明を始めた。木材で出来た土台の上に乗せられた紫色の宝玉は遠くから見ていても大きいと感じたが、近くで見ると改めてその大きさに驚嘆する。
「この宝玉は魔武石と同じで魔力に反応する魔石の一種だ」
ユウキが宝玉の大きさに見惚れていると、横からコホンと一度咳ばらいをしてからバルザがそう言葉を発した。そして、バルザは本題に入る前にそのまま魔石の説明も始めた。
魔石はダンジョンと呼ばれる迷宮の奥深くで発見されることが多く、人工的に生成したりすることは出来ない。また、宝玉と呼ばれるほどの魔力が込められている魔石は魔法適性を調べる道具としても重宝され、基本的に神殿やギルドなどの場所で厳重に管理されているため、持ち出したり、盗んだりすることは出来ない。
しかし、魔石の中でも宝玉よりも小さく、込められている魔力の量も少ないものは一般冒険者の道具になる事が多く、大きさや魔力量によって多少の違いはあるものの比較的安価で手に入れることが出来る。そう説明を終えると、バルザは一拍おいてから右手で宝玉を差し、口を開く。
「では、まず初めに君にはこれに触れてもらいたい。っと、その前にクラスについてはすでに知っているかな?」
「あぁ、知っている。確か基本のクラスが騎士、ガーディアン、ハンター、神官、魔法使いだったよな」
思い出す様に一つ一つ丁寧に答えていくと、バルザは無言で頷く。そして、今度は目の前にある宝玉の説明を始めた。
「これから君にはこの宝玉に触れてもらいクラスを決める。この宝玉は魔力を込めると、魔力を込めた者の身体能力・潜在能力を調べ、自動的にその者に適したクラスと印の詳細を表面に映し出す様になっておる」
そして、バルザは後付けするように「印を持たない者の場合はクラスのみ表記されるがな」と呟いた。
「クラスを決めるっていうのは分かったが、これに触れて魔力を込めるってどうすりゃいいんだ?」
バルザの説明を理解する事は出来たが、魔力を込めろと言われてもどうすりゃいいのか分かるはずもなかった。しかし、それは当然でユウキだけでなく、この世界に来た者は当然魔力のある世界にいた訳じゃない。だが、そんな質問には慣れているといった表情でバルザはユウキの質問に答えた。
「そんな心配せずとも魔力を出すだけなら簡単に出来る。まず、体内にある魔力を身体のどこか一か所に集めるイメージをし、そのまま力を込めるように念じてみろ」
ユウキはバルザの言葉通りに右手を前に出し、瞼を閉じる。そして、体内にあるという魔力を右手に集めるイメージする。なんとなく、身体の中に存在する何かが、ゆっくりと右手に移動している気がした。ユウキは移動していた何かが魔力だと理解すると、力を抜くように右手を下げ、息を吐いた。
「これが魔力、なのか?」
「なんとなくイメージは出来たようだな。では、これからが本題だ。君には今練習したように宝玉に触れ、魔力を込めてもらう。一つだけ注意が必要だ」
「注意?」
「クラスを決める時、人によっては時間が掛かる場合がある。だから、クラスが決まるまでは絶対に宝玉から手を離してはダメだ」
バルザは何故か念を押す様に強い口調でそう説明した。




