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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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ダンジョン攻略-8

「俺はっ!ただタイガを早く助けたいだけで……っ」


 ソウジは視線をユウキから一切動かす事なく言葉を続ける。ソウジの突然の停止に一瞬ユウキも言葉が過ぎたかと不安が一気に押し寄せたが、ソウジの計り知れない身体能力と危機察知能力、魔力察知などにユウキは目を疑った。身体全体をユウキに向けているおかげで後ろは見えないはずなのになぜかソウジに向かってくる魔物を見もせずに易々と受け流し、倒す所は流石といったところなのか近くにいたユウキやサクラは安堵していた。


「攻略隊の仲間や今回参加してくれたお前や他の冒険者の命を軽く見ているつもりはねぇ!」


 ユウキもソウジの実力は二度も剣を交えているだけあって実力の程は分かっていたが、正直なところ完全に信用できるか不安な所があった。それは出会って1か月ちょいそれも話したのは数回程度。ユウキにとってはソウジという人間性をまったくとは言えないがよくは知らないのだ。だから、ユウキはソウジの言うことを分かっている上で確認がしたかったのだ。そしてその行動は自分にとってソウジという人間に本当に従う価値のある人間なのかを見極めたかった。


 ユウキはこの世界に来てまだ数ヵ月という日が浅く、しかも信頼の出来る仲間と自信を持って言える者もまだいない。4層へと行く前にハヤトにも言われたが、情報は大事だ。それも数ヵ月程度一緒に過ごしたハヤトを含める『常闇の黒猫』に簡単に自分の能力の事を話していいのかと言われるとの事をまだ完全に信用していないということをユウキ自身も自覚はしていた。


「……そうか、それは悪かった。それでお前の決断はどうするんだ。撤退をするのか、このまま戦うのか」


「それは……」


 ソウジの本気ともいえる言葉にユウキは一度瞼を閉じ、数秒程思考をした。そして謝罪の言葉を一緒にどうするかをソウジに訪ねるとやはりまだ決断が出来ていないのかソウジは再度黙り込んでしまった。やはり決めあぐねているのだろう。タイガ1人の命か、攻略隊、冒険者といった数多くの命か。どちらか片方を選べば必ずとは言えないがもう片方の方に被害は出る。それはどちらにせよ避けたいものだが、結局は決めなくてはならないものだ。それもこのような状況下ではなるべく手遅れになる前に……。


「はぁ……ソウジ、お前の本気は分かったからとりあえず最前線にいる前衛のパーティーだけでも後ろに下げろ」


「はぁ?いきなり何を言いだす。それじゃあタイガが……」


「大丈夫だ。別に撤退して態勢を持ち直すんじゃない。正直なところ博打でしかないが、魔法で一気に殲滅した方が早い。『鑑定』で見た感じ大体の魔物に魔法は効きそうだからな」


 戦う中で一種族ずつ魔物を『鑑定』して見回ったが、魔法に対する耐性を持つ魔物は少なかった。そして今は前衛のパーティーが主に戦闘を行い、後衛にいるパーティーは基本的に補佐や回復などのサポートだけをしていたのだ。これらの状況を見た上でユウキはソウジに提案をした。


 魔力が余っている者と魔法の威力が高い者が高火力の魔法で一度に殲滅した方がいいと。ソウジはその提案に数秒思考をしたが、それが最善ならと早々に即断し、近くにいたサクラにその作戦の旨を後衛のアキラ率いる魔法使いの者たちに伝令を頼んだ。


「サクラが魔法使い数名とガーディアン数名を連れて戻ってきたら前衛にいるパーティーを『闇扉(ゲート)』で下がらせる。合図でガーディアンを壁に魔法使いに魔法の準備を始めるよう指示してくれ」


「分かった。……その、取り乱してすまなかった」


 やっと目の前の魔物に視線を戻したソウジが剣を振りながらユウキに謝罪をした。そして、ユウキもそんなソウジの事を一瞥してみたが、もう先ほどまでの迷いや焦りのある顔はなかった。


「別にいいさ。俺も言い過ぎた所はあった。悪かったな」


 ユウキもソウジにそう謝罪を口にし、サクラが後衛のパーティーを連れてくるのを目の前の魔物に集中して待つ。


 それから数分後、サクラの先導の下、十数名のガーディアンと魔法使いの者たちを連れて前衛のソウジの所まで連れてきた。そしてソウジの指示と俺の指示の下、作戦が始める。右手に持っていた片手直剣をしまい、両手に拳銃を持ち魔物と対峙するパーティーにタイミングを合わせ、『闇扉』の魔力が入った魔力弾を放つ。今回の作戦は前衛にいるパーティーには説明を一切していないせいか『闇扉』から出てきた場所を確認した者たちの顔色には戸惑いが生まれるが、後ろで待機していたサクラの説明により納得してくれた。


「いまだ!」


 全ての前衛パーティーを後ろへと後退させた直後、もう片方の拳銃に込めていた目眩まし程度の光属性魔法『閃光(フラッシュ)』を魔物に向けて放ち、その間に後ろに控えていたガーディアン達に指示を出す。『閃光』の効果が切れると同時にガーディアン達は自身たちが持つ大楯を壁のようにくっつけ、その場に待機し、その後ろに魔法使いたちが立ち並び始める。


「ユウキ!後ろだ!」


「……っ!」


 『閃光』の効果が切れた直後にどこからともなく声が聞こえた。後ろへと振り向くとそこにはどうやら『閃光』を避けたのか、それとも最初から気付かないうちに近づいてきていたのかは分からないが全身を茶色の鱗で覆った土蠍族(ランド・スコーピオン)が壁を伝い、強靭な鋏をこちらへと向け、迫っていた。


 両手には前衛パーティーを下がらせるために拳銃を持っているが、魔力はすでに放出しており、強靭な鋏を防げるような魔法は撃つことは出来ずまた片手直剣も仕舞っており手に持っていない。周りにもこの状況は一目でわかったが、すぐに動けるような位置にはおらず、目で追うだけで精一杯だった。


「くっ!!」


 土蠍族の初撃は何とか身体を捩じりギリギリのところで躱すことは出来たが、無理やりな避け方をしたせいか態勢を崩し、ドサッと地面に倒れてしまった。逆に土蠍族はただ壁から飛び着くような動きをしただけであり、着地は問題なかったせいかすぐさま向きをユウキへと戻すと、今度は計6本の足を器用に動かし、まるで地面を這いばるようにユウキへと走り出した。


 ユウキも地面に倒れてしまい今度は避けられないと迫りくる土蠍族を見つめながらそう悟ると覚悟を決め、ぎゅっと瞼を閉じた。

次回更新は9/25です

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