ダンジョン攻略-3
とうとう運命の日であるダンジョン攻略の日が訪れた。部屋の窓から外を眺めるとまだ陽は昇っておらず、外は暗いままでいつも見えるエイガルドの景色は何も見えなず、その雰囲気がなんとなく不気味だった。何故こんな時間から起きているのかというとダンジョン攻略をするための移動に大人数での移動は何かと時間が掛かる上にタイガを救出するための時間が惜しいためとのことだ。
だが、それだけの理由で早朝から動き始めるのではなく、ソウジを含む攻略隊のメンバーたちには他の理由があった。それはダンジョン内で行方を眩ましたタイガに残されている時間の長さだった。ソウジたちはユウキ含め攻略隊に参加する冒険者の摸擬戦が終わった後、一週間の準備期間の際に何度かダンジョンに訪れてはサクラの『広範囲索敵』により、ダンジョン内に流れる魔物たちの魔力やダンジョン内の地形の変化を逐一確認していた。
結果としては一か月前、ダンジョンを攻略しに行った際とはダンジョン内の地形がかなり変容しており、魔物の量も増えていた。だが、1つだけ変わらないものがあった。それはタイガを失った後、確認のために一度ダンジョン内に戻った際に『広範囲索敵』でダンジョン内の魔力を確認した時に感じた魔力だ。その魔力はボス部屋があると推測される第5層の辺りから感じ取ったのだ。しかもその魔力は対峙したキメラとは違い、さらに禍々しく膨大な魔力であり、正直、攻略隊のメンバーだけでその魔力の持ち主を倒せるのかという疑問を持つほどであった。
それだけであれば別にダンジョン攻略に時間を惜しむ必要もない上、どうせなら時間を大いに取り、個々の技術やその魔物に対抗しうる強さを手に入れてから挑めばいいだけの話なのだ。しかし、そうできない理由があった。それはダンジョンでその膨大な魔力を感じ取った際に気付いたのだが、サクラにはその膨大な魔力とは違う、小さく今にも消えてしまいそうな魔力も微かにだが感じ取っていたのだ。その魔力がただの魔物の魔力なら全然気にする事のないものなのだが、感じ取った魔力は一度とは言わず何度も感じ取り、サクラにとってはまるで視慣れた魔力であったのだ。
だからサクラはその感じ取った魔力の持ち主に確信を持ち、ダンジョンを出る際にソウジに話したのだ。しかし、ソウジはその話を聞かされてもそう簡単に信じる事が出来なかった。普段、冗談を言わないサクラからの言葉でもそうすぐに信じることが出来なかった理由がソウジにはあった。
それはタイガの命令とはいえタイガ1人残し、ダンジョンを脱したことだった。ソウジからしたら例えタイガの命令を背いてもその場に残り、2人で切り抜けるつもりだったのだ。なのに盛られた薬で簡単に膝を崩し、意識を失ってしまった事に後悔していたのだ。しかも、戻った際にその場にあったのはタイガが所持していた日本刀と破損した鎧の破片が転がっており、当時のソウジにとってはそれだけでタイガは”死んだ”という認めたくない事実を受け入れていたのだ。
しかし、サクラや他の攻略隊のメンバーのしつこいほどの説得により、ソウジはタイガはまだ生きているという微かな希望に手を伸ばし始めたのだ。
だが、そんなソウジの希望も虚しく裏切ろうとしていた。それは昨日まで特別訓練期間の間にほぼ毎日のようにダンジョンに訪れては『広範囲索敵』でダンジョン内の地形、魔物の量を調べるとともに微かに感じ取れるタイガの魔力を確認していたのだが、それも限界なのか徐々にサクラの『広範囲索敵』でも感じ取る事が出来なくなってきていたのだ。
だからこそ、そんな現実を知ったソウジたちは一刻も早くダンジョンに向かい、タイガの救出に乗り出したかったのだ。
そして—————。
「よし、全員揃っているな。今からダンジョンに向かう。道のりは長いがなるべく隊列を崩さず速やかにダンジョンに向かう。道中見つけた魔物は隊の半径500メートル外なら無視、内なら距離によってハンターまたは魔法使いの攻撃で処理してくれ。ただし、身勝手な行動はなるべく慎んでくれ」
いつものようにギルドの裏手にある訓練場ではなく街の入り口である場所でパーティーごとに分かれていた。おのおの武装をし、背中には最小限の荷物を持ち、真剣な眼差しで皆の前に立つソウジの言葉に耳を傾けていた。そしてそれは俺も同じことだ。
「じゃあ出発するぞ!!」
ソウジの合図と共に攻略隊を含めた冒険者の気合の様な雄叫びがエイガルド中に響き渡った。
☆★☆★☆
「ここがダンジョン……」
エイガルドを出発してから約3時間。休憩を挟むことなく、道中の魔物との戦闘も最小限にし、やっとのことでダンジョンの前にまで辿り着いた。そこはユウキたち冒険者にとっては想像を絶するほどの場所だった。魔力が漏れ出しているのか常に肌にチクチクと刺さるようなまた、重苦しく呼吸をするのでさえきつく感じるほどの場所だった。想像以上の場所に大体の冒険者は冷や汗を掻いたり、唾を呑んだりと意識を持っていかれないことに必死だった。
「準備はいいな。それと先に言っておく。ここから先は地獄だと思え。一瞬たりとも気を抜くなよ」
ソウジの言葉によりさらに一層緊張が走る。すでに身体はこの状況から逃げ出したいと思っている位だ。だが、そんな泣き言言ってられるわけもなく、ただただソウジとサクラのやり取りを聞いているだけであった。
そして一通りのやり取りが行われた後、ソウジとサクラは攻略隊を含めた全員の顔を一瞥すると剣を抜き、空に掲げるとともに口を開いた。
「ダンジョン攻略開始だ!俺に続け!」
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