特別訓練と事情を持った亜人ハンター-15
ソウジとの攻防が始まり約10分、依然と拙い剣戟が行われていた。すでにユウキの体力は限界に近付いており、当初の攻撃速度が大幅にズレ始め、攻撃のリズムが段々と崩れていっていることがユウキの攻撃を全て受けきっているソウジにばれており、それはユウキ自身も感じていた。
「おいおい、そろそろ限界なんじゃないか?息も上がっている上に攻撃のタイミングも制度もズレてきているぞ。そろそろパートナーの助けてもらった方がいいんじゃないか?」
限界を迎えかけているユウキとは逆に呼吸の乱れ1つ溢さずに挑発するかの言い様でそうユウキに言葉を投げつける。だが、ユウキはその言葉が聞こえていないのか一切口を開くことなく、ただただソウジの持つ木剣に意識を向け、一心に剣を振るう。
しかし、1つだけユウキには解せないことが合った。それは不自然なことにユウキの剣から移り、引火した炎がソウジの持つ木剣を包み込むように燃え盛っていたが、なぜか木剣は燃え尽きることなく原型を留めていた。ユウキも剣を振るいながらその不自然なことには気づいており、なぜ燃え尽きないのか不思議に思っていた。だが、正直今の現状細かいことを考えている余裕がユウキにはないせいか、深く考えることはせずに燃え尽きるその瞬間まで耐え忍んでいた。
いまだ続く乾いた剣戟の音、徐々にズレていく息遣いと剣を振るうスピードに周りにいるハヤトたちを含めた数名の観客たちは不思議とその剣戟に息を呑み、状況が一変する一瞬を待っていた。今のままではまったく息一つ乱さず、ユウキの攻撃を全て躱し、流し、受けきっていたソウジが優勢であったが、それがいつまで続き、いつ優劣が変わるのか審判であるサクラと記録を取っているアキラも自分の仕事を忘れ夢中にその剣戟を眺めていた。
「このっ!」
「……なぁ、ほんとにいつまで続けるつもりだ?」
いい加減飽きたとでも言いたいかのように低めの声音でそう呟くと、ソウジはユウキの片手直剣を宙へとはじき返し、ユウキの手から無理やり剣を離れさせた。しかし、ユウキはそんなことすら気にせずに左手に持っていた銃で牽制の銃弾を数発撃つ込みながら後方へと下がると地面に膝を着いた。しかし、そんな牽制弾もソウジは軽々と木剣を横に一振りし、魔力を空中で霧散させた。
そしてユウキは飛んで行った片手直剣の位置を一瞥すると、足のホルダーに仕舞っていたもう一丁の銃を取り出し、両方の銃へと魔力を込め始めた。
「安心しろよ、俺もただ剣を振るうことにはもう飽きてきた頃だ。そろそろ決着をつけてやる」
ユウキは乱れる呼吸を無理やり整えようと息を大きく吸い、吐き出すと両手に持っていた銃をソウジへと向け、放ち始めた。しかし、今度はいつも使うただの魔力弾ではなく1つ1つが魔力から魔法へと変換された魔法弾だった。
「全て受けきってみろよ!『火焔槍』『閃光刀』『闇矢』」
魔法を唱えた瞬間、ソウジへと向かった魔法弾はいくつもの赤、黄、紫色の魔法陣へと変わり、ソウジの頭上を埋め尽くした。その光景にはさすがのソウジも目を見開き、それは観客として見ていた全員も目を見開く光景であった。
「おいおい、嘘だろ……」
ソウジは自身の頭上に起きた光景に静かに言葉を溢し、息を呑んだ。
それもそのはずで基本的に人が扱える魔法の属性は1つか2つであり、2つ持つだけでもかなり珍しいことであった。さらに同時に何種類もの魔法を扱うにはそれなりの経験や魔力量、魔力操作など細かい調整が必要であり、攻略隊に属する者や高度な魔法使いの者でも容易に複数の魔法を扱うことが出来る者は少なく、しかも『この世界』に来たばかりのユウキには本来出来る芸当ではなかったのだ。
これが偶然か必然なのかはユウキ以外にはわかる者はいなく、ただ、この光景に対し、全員が驚愕の表情を浮かべていた。それと同時にユウキに対し、期待と畏怖を覚えた。しかし、当の本人はそんな周りのことなど気にせず、額に脂汗を浮かせながら次の魔法を放つため魔力を銃へと注ぎ込み始める。
そして、ユウキの合図で頭上に浮かんだ魔法は豪雨のようにソウジへと降り注いだ。地面を抉るドドドという轟音とともにさらに魔法陣が増え、新たな魔法がソウジへと降り注いだ。
—————くっ!流石にきついか。なんなんだよこの量!
降ってくる魔法を一つ一つ避け、受け流しているが、流石のソウジでも全てを躱すことは出来ず、徐々に身体に魔法が当たり始めた。その光景に周りにいる観客たちは静かに息を呑むと同時、魔法を次々と放つユウキに恐怖を覚えた。
「次で……最後だっ!『炎牢』」
そう言って新たに放った魔法弾はソウジの足元で魔法陣へと変わり、そこからいくつもの火柱が現れ、円形上の牢へと姿を変え、ソウジの逃げ道を塞いだ。
「くそがっ!」
ソウジは『炎牢』から脱出するため剣圧で逃げようと木剣を振りかざしたが、空振りをしたような感覚に襲われた。自分の手元を見るとすでに木剣の刀身の部分の姿はなく、柄の部分だけになっていた。先ほどの大量の魔法を受けきっていたせいでかなり木剣にもダメージが来ていたようで完全に炭と化していた。
武器が無くなった瞬間、諦めたかのように終了の合図をしようとした刹那、『炎牢』が一瞬にして霧散したのだ。そこにはすでに地面に片膝を着き、呼吸も乱したままのユウキが地面を見つめたまま、右手に持つ銃を空へと向けていた。
ソウジは試合を終了しようとユウキへと駆け寄ろうとした瞬間、背後に気配を感じ咄嗟に振り向いた。するとそこには隠れていたはずのサティヴァ―ユが、突如現れた黒い空間から姿を現し、『武器付与』された刀身が赤く光るダガーを背後へと周りソウジの首元へと付きつけた。
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