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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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特別訓練と事情を持った亜人ハンター-14

「そういえば1つ聞いてもいいか?」


「なんだ?」


「俺たちは実剣を使ってるからいいけどお前は木剣だろ?もし壊れたりしたらどうするんだ?」


 摸擬戦の合図はもう切られているが、動き始める前に素朴な疑問をぶつけると意外な返答が返ってきた。


「心配すんな。予備ならサクラが試合の最中にタイミングよく投げてくれるさ」


 ソウジはそう答えると審判として立つサクラを一瞥する。俺たちも視線を向けるといつの間に準備してあったのサクラの横には1本の木剣が地面に刺さっていた。


「まぁそういうことだ。それで……まずはどっちから来るんだ?それとも2人一斉にか?」


 木剣を肩に担ぎ、猛禽類の様な鋭い視線を殺気と一緒に俺たちへと向けてくる。すでにこの状況で足が震えて力が入れづらい。サティヴァ―ユの方へとちらりと視線を向けるが、どうやら彼女も同じなようで頬からは冷や汗だと思える雫が伝っていた。


 —————どちらにせよ動かないと失格になる。どうせ当たりはしないだろうがこの空気を変えるために……。


 何も持っていない左手は流れるように腰のホルダーへと動き、一丁の拳銃を手に取り、抜き取ると同時に魔力を込め始める。


「よし、……行くぞ。『三色弾(カラー・バレット)』!」


 自分に言い聞かせるようにそう呟き、銃口をソウジへと向け、引き金を思いっ切り引いた。銃口からはドンッ、といった大きく鈍い発砲音と同時に三色の魔力弾が飛び出し、ソウジの方へと吸い込まれるように向かっていった。


 しかし、それは予想通りソウジの一振りによって簡単にいなされ、三色の魔力弾は空中で霧散してしまった。だが、この攻撃のおかげなのか隣にいたサティヴァ―ユも緊張が少しは解れたようで一歩下がり、いつでも射れるように低い体勢で弓を構えていた。どうやら動く準備は出来たようだ。


 右手で持つ片手直剣を握り返すと、足を肩幅より少し大きめに開きながら身体を低くし左手に持つ銃に再び魔力を込め始める。ただ、今度込めるのは光属性の魔力だけだ。そして込めた魔力を魔法へと変換する。サティヴァ―ユの方へ一瞥するとサティヴァ―ユもこちらの出方を窺っていたようで目が合った。そしてすぐに交わった視線はソウジへと戻り、俺もソウジへと視線を戻す。


「—————ふっ!」


 一瞬の静寂の間、大きく吸った息を思いっきり吐き出すと同時にソウジの方へと駆け出し、右手に持つ片手直剣を縦に振り下ろす。そのまま二撃、三撃と続けざまに攻撃を繰り返すが、全て簡単に受け止められ、流されてしまう。しかも腹が立つことにソウジは最初にいた所から一歩も微動だしていないという始末だ。


 いくつかの剣戟が起きる中、後方から矢がいくらか飛んでくる。それは訓練期間中に射っていたような狙ってもいない所へとフラフラと飛んでいくようなものではなく、しっかりとサティヴァ―ユが狙った標的であるソウジへと真っすぐに向かって飛んでいたのだ。時たま、自分の顔面に当たる寸前のものも飛んできて、背中をひやりとさせてくれるが、それでもソウジの意識が自分だけに行くことが無くなったお陰でかなり楽に攻撃が出来ているのは確かだ。


 そしてそのサティヴァ―ユの弓の成長具合に今なお剣を交わらわせているソウジや審判を請け負っているサクラは目を見開き、驚愕と感心といった表情を浮かべていた。しかし、サクラの場合はそれだけでなく疑問を持っている表情も浮かべていたのだ。そのサクラの表情にソウジは気付いたようで剣を交わらせている俺以外には聞こえない程度の声量で「何をしたのか知らねぇが、あんなに矢が当たらなかったのをどうやって克服させたんだ?」と耳打ちをしてきた。


 もちろん俺もそう簡単に教えるわけもなく、というより教えるほどの余裕が無いため、なるべくそれが悟られないよう自分のように自慢げに「悪いがネタバレがご所望なら諦めな」と答えた。そして下から振り上げるようにソウジの木剣と一緒に剣を持ち上げると距離を取るため思いっきり地面を蹴り、後方へと下がりながら左手に持っていた銃口を地面へと向けて引き金を引いた。


「『閃光(フラッシュ)』」


 先ほどとは違い、パンと高めの発砲音とともにソウジの足元を照らし、一瞬だけだが視界を奪った。そしてそのまま再び銃へと魔力を込め、さらに右手に持つ片手直剣を鞘へと納め、右足のホルダーに仕舞っているもう一丁の銃を引き抜きこちらにも魔力を込める。最後にサティヴァ―ユが毎日肌身離さず持ち続けたダガーにも武器付与(エンチャント)を行い、次の攻撃へと備える。


「サティヴァ―ユ、準備はいいか。次の合図で行くぞ」


「サティでいい。それよりお前もミスするなよ」


「分かったよ……サティ」


 抑えた声量でサティと二言三言言葉を交わした後、ふとソウジを一瞥する。『閃光(フラッシュ)』の影響で視界を奪われたソウジは対処に慣れているのか落ち着き払った表情で木剣を構え、視界が治るまで静かに佇んでいた。


「よし、今のうちだ」


 右手に込めていた闇属性の魔力を魔法へと変換した後、サティの背後の空間へと撃ち込む。撃ち込まれた魔法は次第に広がるように膨張し、人一人が通れるくらいの大きさの黒い空間を生み出した。サティは静かにその黒い空間に足を踏み入れ、黒い空間に吸い込まれるようにその場から姿を消した。その一瞬の出来事にソウジ以外の皆は驚愕の表情を浮かべ、所々で「なんだよあれ」、「何する気だ」と疑問の声を上げていた。そんな周りの声に視界を奪われたままのソウジは不審に思いながらも静かに警戒を強めていた。


 ソウジの視力が完全に回復する間に右手に持った銃を再度、足のホルダーへと仕舞い、剣を抜き取ると慣れた手付きで『武器付与(エンチャント)』を行う。そしてその工程全てが終わる頃、ソウジの視力も回復したようでゆっくりと周りを見渡していた。そして俺の隣にサティがいないことに気付くなり、今までの立ち尽くした姿勢を崩し、すぐに反応が出来るように姿勢を低く変えた。


「何をするつもりか分からねぇけど楽しませてくれよ」


「ならお望み通り行かせてもらうぜ!」


 再びソウジへと駆け出し、『武器付与』をした片手直剣を振りかざす。刀身に宿った炎がソウジの木剣と交わるたびに炎が木剣へと引火し、木剣の刀身を燃やし始める。ソウジもそれに気づいているようで「おいおい、火で木剣を燃やして武器を奪おうって魂胆か?」と嫌味たらしく言葉を放った。


 ソウジの木剣にも徐々に火が移り、剣を交えるたびに火の粉が顔や腕などに飛び移り、さらには木剣に移る火力が高まり地味に熱さを感じさせるが、そんなことを気にしてる暇もなく、ある一瞬が来るまで地道に拙い剣戟を繰り返す。

次回更新は7/17です

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