特別訓練と事情を持った亜人ハンター-12
「なんで師匠が死んだ原因がお前にある?あれは完全に私の身勝手な行動のせいだろう」
サティヴァ―ユはリアの死を思い出したのか目尻に涙を浮かべるサクラの放った言葉を否定するように、リアの死の原因は自分にあるとそう言葉を返した。だが、サクラは静かにサティヴァ―ユの言葉に頭を横に振った。
そして一拍おいてから未だサクラの言葉に理解に苦しむサティヴァ―ユに向かってサクラは言葉を発した。
「私が師匠の言葉を素直に受け入れてもっと早く街に戻っていれば……、他の冒険者に助けを乞うて、師匠を助けに行くことが出来ていれば師匠は死ぬこともなかった。私が冷静さを欠いていなければこんな辛い出来事も起きなかった。だから……師匠が死んだのはサティ、貴方だけのせいじゃないの」
サクラは自分の伝えたいことを振るえる声を必死に抑えながらいつまでも後悔に束縛さえるサティヴァ―ユに伝えた。サティヴァ―ユもようやくサクラの言っていた言葉を理解したが、やはり納得は出来なかった。
なぜなら、今までずっと師匠の死について後悔していたのにいきなり「私も悪かった」などと言われても「なんで今更そんなことを言うんだ」という気持ちがサティヴァ―ユには湧いていた。サティヴァ―ユ自身、サクラも同じ師匠の元で腕を磨いていた姉妹弟子であり、師匠の死を間近で見たせいもあり、それなりの後悔があるというのは理解できていたが、今更そんな事を言われても同情などは出来なかった。
「私はお前が師匠の死をどう思っていようがどうでもいい。お前が言ったように私や師匠がどれほど後悔しようが悩もうが師匠が生き返る事はない。私はもう誰かが目の目で死ぬのを見たくない。だから私は—————」
「1人で生きようとしているんですか?」
サティヴァ―ユの言葉を遮るようにサクラは答えた。サティヴァ―ユもサクラの言葉に静かに頷いたが、サクラはそのサティヴァ―ユの考えには納得できなかった。
「でもそれって人の死から逃げてる……師匠の死から逃げてるってことと同じですよね」
「なんだと?」
「あなたは師匠が何故自分の身を挺してまで私たちを守ったのか分からないんですか?」
師匠の死という悲劇が頑なに1人で行動しようとするサティヴァ―ユの心を縛り付け、いつまでも誰かを頼ることを拒みつけているのがサクラには感じられ、少々強気でそう言葉を発した。
「確かに貴方のように1人で行動すれば団体で行動するよりかはそれなりに動きやすくもなりますが、それと同じくらい死亡率も高くなるんですよ」
「そんなことは百も承知だ」
「だったらなぜ師匠と同じように1人で行動するんですか。1人で行動する事がかなりの危険だということを知っておいて何故そこまで頑なに1人でいようとするんですか?いい加減教えてくれませんか?」
詰め寄るようにサティヴァ―ユにそう訊ねるとサティヴァ―ユは口を噤んでしまった。だが、しばらくしてから意を決したようにゆっくりと口を開いた直後—————。
「サクラ?それにえーと……」
「サティヴァ―ユだよ」
「あぁそうだったそうだった。それで2人はこんな道の真ん中で涙を流しながら何をしているんだ?」
2人は声のする方へと顔を向けるとそこにいたのは攻略隊の副隊長のソウジとサティヴァ―ユとペアを組んでいるユウキだった。ソウジはいつもの金色の鎧ではなく部分的に覆う鎧を身に付け、腰には精微な黒百合の象嵌が施された黒革の鞘に納められた細めの長剣である『黒百合の剣』を帯刀していた。またユウキはサティヴァ―ユが分かれた時とは違い、鎧や武器を全て外し、食料の入った紙袋を1つ抱えていた。
「ソウジさん、それにユウキさんまで珍しいですね。それよりどうかしたんですか?そんな武器まで持って今からクエストですか?」
ソウジに指摘された頬を伝う涙を指で掬いながらサクラはそう答える。
「いやサクラの帰りが遅いから迎えに行こうと思っていたんだがその心配はなさそうだな」
「えぇ、心配は必要ないですよ。それに遅くなったのはサティヴァ―ユさんと少しお話をしていただけです」
「そうか、それならいい。それとこれからダンジョン攻略に関しての会議を始めるからその服に染み付いた血を流してからいつもの場所に集合してくれ」
ソウジはサクラに伝えると隣にいたユウキと対面するサティヴァ―ユに「じゃあ、またな」と言ってきた道を戻っていった。それを追いかけようとサクラも足を踏み出そうとした直後、少しだけサティヴァ―ユの方へと向き直り、口を開いた。
「サティヴァ―ユさん、貴方にも頼れる人はいるはずです。私じゃなくてもいいのでなるべく1人で無理するようなことはやめてください。私だってもう大切な人を目の前で失うのはつらいんです。だから、お願いします」
サクラはそう淡々と伝えるとユウキに一度だけ軽く会釈をするなり先を進む、ソウジを追いかけるように駆けた。
「私だって好きで1人でいるわけじゃない」
サティヴァ―ユはソウジを追いかけるサクラの後姿を見つめながら1人誰にも聞こえない様に言葉を呟いた。
「今は1人じゃないだろうが」
—————つもりだったが先ほどより近くに近づいていたのかユウキにはサティヴァ―ユの呟きが聞こえていたようで静かにそう言葉を返した。サティヴァ―ユはユウキのいきなりの言葉と接近により少なからず驚きはしたもの冷静に「あぁ、そうだな」とだけ言葉を返した。
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