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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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特別訓練と事情を持った亜人ハンター-5

「シッ!」


 短い気合とともに1本の矢が翠眼兎(グリーンアイ・ラビット)へと向かうが、それは翠眼兎へと当たることなく徐々に減速し翠眼兎の目の前で地に落ちた。矢が地面に落ちる音と矢の存在に気付いた翠眼兎はすぐさま身を守るため近くの茂みへと飛び込み、そのまま姿を消した。


「ちッ!また外したか」


 翠眼兎の存在が完全に視界から消えたあと近くの木の上から当たりも掠りもしなかった矢を回収するためぶつくさと小言を口にしながらサティヴァ―ユが降りてきた。サティヴァ―ユが降りてきた近くの茂みからユウキも顔を出し、静かにため息を吐いた。それもそのはず、サティヴァ―ユとエイガルドから少し歩いた森で翠眼兎を狩りに出ること約2時間、その2時間の間に翠眼兎と遭遇した回数は二桁を超えるが狩れた数は0だった。


 いい加減サティヴァ―ユに着いてきたユウキ自身にも焦りが現れ、道中何度か加勢しようかと言葉を掛けたが、頼りたくないのかそれとも自身だけで依頼を終えたいのかサティヴァ―ユは頑なに手伝いを拒否した。しかし、いつまでも狩れないと帰ることも出来ないし、あと数時間したら陽も落ち始める頃だった。それでもサティヴァ―ユはユウキの手伝いを拒否し、1人で討伐しようとしていた。


「ここら辺にはもう反応がないな。もう少し奥へ進もう」


 矢を拾った後、頭部に生える長い耳をピコピコと動かし、周囲の物音を探るなり近くに魔物の反応を感じないのかサティヴァ―ユはまた森の奥へと進もうと言葉を発するとユウキの有無も聞かず、翠眼兎が逃げた茂みを分けてさらに奥へと進み始める。ユウキももう何も言いたくないのか一言も言葉を発することなく黙ってサティヴァ―ユの後ろを着いて行くように茂みを分けて進む。


「なぁ、やっぱり俺も手伝った方がいいんじゃないか?」


「これは私の訓練の1つなんだ君に頼るつもりはない。君は他の魔物が来ないよう見張るだけでいい」


 サティヴァ―ユはそう言うなり地面に残る足跡を探す。それじゃあペアでの訓練にならないだろと俺は思いながらもまた1つため息を吐き、言われた通り他の魔物が近くにいないか周りを見渡す。とりあえず周りには魔物はいないようだが、なぜサティヴァ―ユは頑なにも人を頼ろうとしないのかふと疑問に思う。俺がこの世界(エイガルド)に来たばっかりの人間だからだろうか、それともただ単に人を頼ることに慣れてないのか、俺は未だに翠眼兎を探すサティヴァ―ユの後ろ姿をちらりと見た後、またため息を溢した。


 正直な話、この現状のままではサティヴァ―ユは1匹も狩ることなく一日が終わるだろう。何故ならソウジに課せられた通りサティヴァ―ユの矢の精度はかなり酷いと言っていいものだった。放った矢は全て翠眼兎の目の前で落ちるか、通り過ぎるかで素人の俺にでもこれは当たらないだろと思える軌道を矢が辿っており、無駄撃ちしているようなものだった。


 それに俺自身も銃の訓練をしなくてはいけない。配られた紙には銃の精度と剣筋の向上はもちろんの事、使える魔法の制御も必要だと記載されていた。多分これは『武器付与(エンチャント)』に関してのことだと言える。前にサキに少しだけ教えてもらったが『武器付与(エンチャント)』は対象物に魔法を重ねるようでかなり魔法の制御が難しく、1週間そこらで出来る芸当ではないらしい。


 当然それは理解しているので四六時中、魔力が尽きない程度には自身の剣である片手直剣の刀身に魔力を込めているが少しの事で魔力がぶれてしまい、毎回魔力が霧散してしまう。自身の物に出来ないのにサティヴァ―ユが放つ矢に魔力を霧散させない様に制御できるのかと問われると今の現状的に無理の一言だ。


 だからこそ手伝おうかと聞いているのにいらんと言われ、ただ着いて行くと考えるとなんというか時間を無駄にしているようにも感じてしまうと同時に彼女には協力する気がないというにも感じてしまうのだ。


「ん?あれは……」


 周りを見渡しているとサティヴァ―ユが見ている方向とは逆、つまり後方に見える木の近くに2匹の翠眼兎が赤い鼻をひくひくと動かしながらお互いに見つめ合っていた。俺は一先ずサティヴァ―ユと2匹の翠眼兎に気付かれない様に『鑑定』をしながら、腰のホルスターから2丁の拳銃を抜き魔力を込める。


種族:翠眼兎(グリーンアイ・ラビット)

性別:♂

使用可能魔法適正:風


【スキル】

風刃(ふうじん)


【アビリティ】

『頭突き』


種族:翠眼兎(グリーンアイ・ラビット)

性別:♀

使用可能魔法適正:風


【スキル】

風巻(トルネード)


【アビリティ】

『引っ掻き』


 どうやらあの2匹は一応♂♀のカップルか夫婦みたいなもののようだ。『鑑定』した後で倒すのは少し可愛そうにも思えるが、一応は魔物だ。そう思いながら手に持つ2丁の拳銃に火光闇の3属性の魔力を込め始める。


「よし、これで魔力はオーケーだ。当たれよ『3色弾(カラーバレッド)』」


 魔力を込め終え、対象である2匹の翠眼兎に狙いを定めると引き金を静かに引いた。3色の弾は引き金が引かれると同時にドンという鈍い音を発しながら翠眼兎の下へと一直線に向かい、緑眼兎がそれに気付く頃には翠眼兎の身体を3色の弾が貫き、包み、一瞬で2匹は地面へと倒れた。


 突然の発砲音に気付いたサティヴァ―ユも一瞬の出来事に唖然としていたが、すぐに我に返るなり俺に向かって叫んだ。


「何をしているんだ!何かいたのか!」


「あそこを見てみればわかる」


 俺は翠眼兎のいた辺りを指さし、そう答えるとサティヴァ―ユはガサガサと茂みを分けながら指さされた方向へと歩いていくと『3色弾(カラーバレッド)』によって絶命した2匹の翠眼兎に気付いた。


「おい、これはなんだ」


「何って翠眼兎だよ。とりあえず2匹だな」


 俺はそう答えるとサティヴァ―ユは突然身を翻し、俺の胸倉を掴みながら凄んできた。


「なぜ私に言わなかった。なぜ私の許可なく勝手に倒した!」


 俺はいきなり怒り出したサティヴァ―ユの言う意味が一瞬理解できなかった。いつまでも当たらない矢を放った所で何の訓練にもならないし、ただ時間を無駄にするだけだと俺は率直にそうサティヴァ―ユに伝えるとサティヴァ―ユはそれ以上はもう何も言わず俺から離れ、森の奥へと進み始めた。

次回更新は5/15です

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