特別訓練と事情を持った亜人ハンター-4
「とりあえずペアごとに分かれたな?」
ソウジはそう言いながらペアになった5組を順々に視線を移すと次の話を始めた。次の話というのはペアごとに振られた訓練内容だった。カズとガーディアンのトウゴペアは攻防の入れ替わりや立ち回りの練習、そしてお互いに印の能力や魔法を使った摸擬戦を行っていくというものだった。
次にサキと神官のシウテリルのペアはサキは詠唱が遅いのでシウテリルに教えてもらい、またシウテリルは神官というのもあり攻撃魔法に慣れていないとのことなのでサキに教えてもらうというお互いに苦手なところを治す、克服するという訓練内容だった。
ハヤトとハンターのミツキのペアはハヤトの支援魔法をミツキの矢に『武器付与』が出来る練習でミツキは『武器付与』された矢の精度を上げる事が訓練内容だ。
マシルと魔法使いのアリサのペアはお互いに人見知りというのもあってかよそよそしい感じが出ているので人見知りを治すための訓練でもあるがアリサの魔法攻撃の向上、マシルの『魔物召喚』の詠唱速度向上も訓練でもあるらしい。
そして最後に俺とサティヴァ―ユのペアはまず俺の射撃力と剣筋の向上が目的らしく、サティヴァ―ユの狙撃を全て撃ち落とすのが訓練内容のようだ。またサティヴァ―ユには俺の魔法を腰に携えている投げナイフや『武器付与』された矢を全て命中出来るレベルまで向上させるのが訓練らしい。
ペアごとに決められた訓練内容をソウジが流暢に答え、説明をする姿を見ると摸擬戦で行われた戦いをしっかりと分析し、どうしたら向上するかを考えているのだなということに関心すると同時にダンジョンに残されたタイガを助けるために本気で挑む志があるのだなと感じた。多分、彼の姿を見た皆がそう思っただろう。
「訓練内容は以上だが、これはあくまでも追加内容だ。配られた紙に記載されている訓練もしっかりと行ってくれよ」
ソウジはそう言って最初に配った紙をひらひらとひらつかせた。配られた紙には自身の名前だけでなく技術面での長所、短所が明確かつ鮮明に記載されており、なおかつ短所を長所に変えるための訓練内容や今の自分に足りない筋力や動きなど必要なことが紙一面にびっしりと埋まっていた。
「これを一週間で行うというか物にするって考えるとかなりきついとは思うがまぁ、ダンジョンで無駄に死体を増やすよりはマシなんだ。とりあえず皆頑張ってくれ。もちろん一週間の間、理解できないことがあったら声を掛けてくれれば誰かしらが対応してくれるから気軽に声はかけてくれて構わない。ちなみにペア内で喧嘩や訓練のさぼりは見つけ次第、攻略隊には参加させることはないからその辺の事はよく考えてくれよ」
ソウジは微笑を浮かべながらそう言い終えると解散とでも言いたげに両手の手のひらを合わせるように2回ほど叩いた。それを合図に俺たちは一度解散することにした。武器は持っているが恰好はギルドで借りた服なので一度帰って着替えることにしたのだ。
☆★☆★☆
「じゃあまた行ってくる」
俺は一度ハヤトたちとハウスに戻ると自分の服に着替え、武器である片手直剣と2丁の拳銃をホルスターに仕舞い、自分の身体の具合を心配してくれているタイセイたちに短く挨拶をしてハウスを出た。
先ほどと同じ道を歩き、ギルドへと向かう。正確にはギルド裏にある訓練場だが場所はほぼ同じなのでいいだろう。ギルドに向かう途中、街に向かうとすでに攻略隊員と店の店主らがいくつかの店先で話し合っている姿が見えた。ダンジョン攻略に必要な物資を集めるために奔走しているのだろうが、攻略隊員の顔色には焦りの様な切羽詰まった表情を浮かべている。
中には見知った者もいたので挨拶がてら彼に近づくと彼らの荒々しいやり取りが聞こえてきた。どうやら彼は店の主に向かって罵声を浴びせていた。内容を聞く限り、店内には必要な物資が足りてないのか攻略隊に依頼された量に届かず、依頼しに来た攻略隊員たちにどうにもできないとの一点張りで、攻略隊員は攻略隊員ですでに昨日までの1周間でほとほと疲弊しているのか攻略隊員全員がどこか疲れた表情を浮かべており、店主に向かって暴言を吐く内容がほぼ変わらず繰り返して言っていた。
—————今行くと確実に巻き込まれるな。挨拶に行くのはやめて真っすぐギルドに向かおう。
俺は今、関わると面倒に巻き込まれる上に集合の時間に遅れると察したため、彼らに関わりに行くのを止め、進む足を速めた。それにあの物資の問題的にギルドにも依頼は出しているだろうし、多分どうにかなるだろう。
「……なんだこの人の数、ギルドに入り切ってないじゃないか」
ギルドに辿り着くとギルドの入り口は攻略隊に参加する人たちで溢れかえっていた。何故こんなにも人が溢れているのかというとソウジのせいであった。いや、正確にはソウジだけでなく攻略隊から出された訓練内容のせいであった。合格者は全員攻略隊に課された訓練内容があり、その内容は似たり寄ったりもありはするが、基本的には個々に細かく分析されているのだ。だが、中には訓練に丁度良い魔物も指定されているので訓練がてらクエストを受け、訓練をするついでに報酬を獲得する者が多いのだ。
もちろん中には攻略隊に合格できず今日の食い扶持を稼ぐためにクエストを受けに来た冒険者や新たにクエストを依頼しに来る者の姿もあり、ギルドマスターのマコも含めてギルド職員も忙しく働いている姿が外からでも確認できた。冒険者で溢れかえるギルドの入り口を嫌そうに見つめていると、他の冒険者よりも頭一つ出ている頭部から長い耳を生やした褐色の肌が特徴的な俺の訓練パートナーでもあるサティヴァ―ユが人垣を分けるようにギルドから出てきた。
「うん?えっと……君は確か"ユウイ"といったな?」
「俺の名前は"ユウキ"だ。それであんたはここで何をしていたんだ?」
サティヴァ―ユはそう聞かれるなり呆れた様に一枚の紙を俺に見せつけるように押し付けてきた。その髪を渋々受け取り、内容を確認すると攻略隊に渡された訓練内容だった。内容を確認するとそこには彼女の苦手である狙撃の技術を上げるために『翠眼兎』を弓で10体以上を連続で狙撃することが目標だと記載されていた。
そして彼女が持ってきたもう一枚の紙はギルドで依頼されたクエストで内容は『翠眼兎』の討伐だった。クエスト内容を読んだ感じ、量は求めておらずなるべく討伐してくれとだけ記載されており、倒した量によって報酬は変わるとも記載されていた。
「見たところ準備は出来ているようだからとりあえずこいつを狩りに行くのを手伝え。ユウキ」
サティヴァ―ユは口角を少しだけ持ち上げ、そう言った。
次回更新は5/8です




