模擬戦-23
ソウジの斬撃を防ぎ、避け続けること約5分、俺の身体の至る所には防ぎきれず避けきれずといった小さな切り傷が出来上がっており、自身の息も上がってきていた。ソウジは相も変わらず手に持つ片手直剣を楽しそうに振り続けており、疲れているはずが一切疲れた表情を浮かべることもなく、まるで嘲笑う様な笑顔で笑っていた。そんなソウジの異変に周りの観戦者たちも気づいたのか、ソウジの剣筋に盛り上がることを忘れ、ソウジに対しての恐怖心を浮かべていた。
「あはは!おいおい、ユウキ!少しは攻撃して来いよ!いつまで逃げ回っているつもりだ?」
ソウジはそんなことを言うも変わらず剣を振り続け、一切止めるような感じではなく、徐々に俺の身体に出来る傷の数が増えていった。流石にもう逃げるのは限界、か?仕方ない、通用するかは分からないが、これでせめてもの隙が出来れば!
俺はそんな儚い希望を左手に持つ魔力をすでに込められた拳銃に意識を移した。そしてソウジの斬撃を右手に持つ片手直剣で完全に受け止めきる準備をし、次に来る大振りを静かに待った。だが、そんな簡単に自分の思惑通りに進まないのは当たり前のことだ。だから、来るまでなるべく傷を増やさない様に攻撃を最小限の動きで避け、防ぎ時機を待った。
「おいおい、ほんとにそろそろ飽きてきたぞ!さっさと攻撃して来いよ!おらぁ!」
まったく攻撃をしてこない俺に興が醒めたのかとどめを突こうと考えたのかソウジは一瞬だけ剣を振るのを止め、大振りのために溜めを大きくするような体勢を取ってから大振りしてきた。5分以上も同じような剣の振りを見ていただけあって次にどんな攻撃が来るかは大体予想がついたので俺もその攻撃を受け止めきるために剣を横一文字に構え、いつでも受け止める準備をする。
そして待ちに待ったソウジの大振り攻撃。俺はそれを片手1本で受け止めようとするがそもそも筋力的に差があるため、受け止めきれず左手に持っていた銃を土台に刃の下に置きなんとか受け止めきった。だが、受け止めるのが目的ではない。本当の目的は攻撃を受け止めた時に出来るわずかな隙だ。俺はその隙を見逃すはずもなく銃口をソウジの胸部へと向け、引き金を3回引いた。
「だったら望み通り攻撃してやるよ。『3色弾』!!」
引き金を引いた瞬間、目の前にいたソウジは銃口から放たれた3色の魔力弾とともに綺麗に弧を書きながら後ろへと吹き飛んだ。流石に近距離とは言え込めた魔力量的に死んではないだろ。だが、正直な所やった感触もないし、まだ油断はできない。
ユウキはそんなことを思いながら砂塵の舞うソウジが吹き飛んだ辺りを凝視した。すると、予想通り考えは当たり、砂塵が止むころソウジがまるで動物を撫でるような手つきで胸部を撫でながら不気味な笑みを浮かべていた。
「なぁんだ、やっぱり出来るじゃねぇかよユウキィ!中々に痛かったぞ」
「お前……それがお前の本当の正体なのか?」
俺は摸擬戦を行うまでのソウジと今のソウジを短い期間の間で知った事を比較し、分析したうえでその言葉をソウジに向かって吐き出した。しかし、ユウキにとってはそんな質問どうでもよかった。本当に聞きたいことは別にあるからだ。だが、いきなり本題を突き付けても答えず、また攻撃を仕掛けてくるかもしれないと考えた上でその質問をした。
「半分正解で半分不正解、てとこかな」
ソウジは俺の質問に対し、そう答えるとまた不敵な笑みを浮かべると、今度は先ほどとは違うまったく見たことのない形の体勢を作り出した。片手直剣を逆手に持ち、全体的に姿勢を低く取るとソウジは口角を上げたままの口を開いた。
「なぁユウキ、お前はもう異変に気付いているんだろうが、残念なことにお前がそれを知るにはまだ時期が早い。だから、今日のところはこれを食らってさっさと死んどけ。いくぞ『黒百合』」
ソウジはそう言葉を吐くなり、逆手に持っていた片手直剣を思いっ切り地面に差し込むなり、自身の魔力をその片手直剣に注ぎ始めた。次第に片手直剣の柄の中央にある黒百合が紫色に光り出し、ソウジを中心に黒い渦が広がり始め、それは次第にユウキをも飲み込み始めた。完全に飲み込むや否や黒い渦はだんだんと球体になりユウキから一切の光を遮断した。
「『黒百合』解除」
球体が出来て1分後、ソウジが剣を抜きながらそう言葉を口にすると球体は溶けるように霧散し、球体に閉じ込められたユウキが気を失った状態で地面に音を立てながら倒れた。
「……しょ、勝者、ソウジさん!そ、そしてこれにて摸擬戦は以上になります。最終結果は明日ギルド前で発表いたしますので今日の所は解散となります。参加者の皆さん、攻略隊の皆さん一週間お疲れさまでした!」
ユウキの惨状を見た司会は我に返るなり、司会としての役割を行い、迅速に摸擬戦を終了させ、観戦者たち追い出すような形で締めくくった。
次回更新は4/10です




