模擬戦-22
「お待たせしました!これが最後の最終試合、攻略隊副隊長ソウジさんと銃剣士ユウキです」
アキラとの摸擬戦が終り、ソウジの対策を練ること約2時間、すでに陽は落ち始め段々と空に赤みが出てくる頃に司会からの声が上がった。それは1週間に渡る攻略隊参加の摸擬戦最終日最終試合の呼びかけだった。俺は司会に名前を呼ばれ、人垣の中心に出るとそこには全身を金の鎧で包み、頬から少しばかりの汗を流しつつも好青年さを醸し出すような笑顔で待っているのは対戦相手のソウジだった。
腰にはソウジの体格には似合わない黒革の鞘と黒い柄を持つ細めの長剣。鍔の中央には精緻な黒い百合の象嵌が施されていた。数ヵ月しかこの世界では生活していないが武器に特徴的な象嵌が施されている物は初めて見た。そして見るからにかなりの業物であり、転移者が獲得できる武器の中でもレアな武器ではないかと推測した。—————って、ちょっと待て。本来は木剣じゃないのか?
俺はソウジの腰に帯刀されている剣を差し、審判に訪ねると申し訳なさそうな表情を浮かべながらストックが無くなったとの報告をしてきた。審判曰く、あまりの熱戦が続きギルドや武器屋に置いてある木剣の予備までもが無くなったらしい。「嘘だろ……」と思ったが、もう何を言っても結果は変わらないんだ。腹を括って戦うしかない。
「久しぶりだな、ユウキ。お前も参加してくれて嬉しいよ。それにあのサクラとアキラに勝ったらしいな。おめでとう。あと心配すんな。流石に殺しはしねぇよ」
ソウジは無邪気な笑顔でそう言葉を続けると、俺に拍手を送った。なんとなく馬鹿にされている感はあるが、今はそんな事どうでもいい。俺はソウジの言葉を適当に流し、気付かれない様に『鑑定』を始める。
名前:キザキ ソウジ
種族:人間
性別:男
使用可能魔法適性:闇
【スキル】
闇魔法Lv3
『武器付与・闇』
『闇縛』
『闇斬り』
【固有スキル】
『黒百合』
【印力】
『制限解除』
「—————ッ!」
ユウキはソウジの鑑定をしてなるべく気付かれない様に表情には出さず驚愕した。……まさかの固有スキル持ち。しかも『黒百合』ってあの剣が関係しているのか?俺はそう思いソウジの腰にある『黒百合の剣』に視線を移し、そのまま鑑定をしてみた。
【黒百合の剣】
様々な呪いを込められた呪われし剣。現所有者はキザキソウジ。
【固有スキル】
『黒百合』
やっぱりそうだ。これはソウジの【固有スキル】じゃなくこの剣の【固有スキル】なんだ。でも、おかしくないか?ソウジの剣に固有スキルがあるなら他の転移者の武器にも固有スキルがあってもおかしくはないはずだ。でも、ソウジ以外に固有スキルを持つ者、ましてやソウジの様な特徴的な武器を持っている奴はいない。てことはやっぱりあれはレアな武器なのか?
俺はソウジの言葉を無視し、何度も考える。だが、答えは一向に分からない。
「なぁソウジ。試合が始まる前に聞いてもいいか?」
「今まで俺の言葉を無視して考え事をしていたようだが、どうかしたのか?」
自分勝手な俺に対して呆れた表情を浮かべながらもソウジは首を傾げる。正直、聞いていいのか分からない。でも、なんとなく聞かなきゃいけない気もする。だから俺はゆっくりと口を開いて疑問をソウジにぶつけた。
「お前のその剣はどこで手に入れた」
—————瞬間、ソウジの口角が微妙に上がった。いや、口角だけじゃない。雰囲気そのものが変わった。まるで別人のように。そして—————
「そうだな。それは摸擬戦中に答えてやるよ。おい、審判。合図を」
不敵な笑みを浮かべたソウジは審判に試合を始める合図を求める。審判や周りの観戦者はソウジの雰囲気が変わったことに気付いていないのか依然と盛り上がった様子だ。ソウジは審判にそう告げたあとすぐさま腰の『黒百合の剣』を右手で勢いよく抜き放った。じゃりんと高い音が鳴り響いた。俺も遅れて右手で剣を抜き、左手には拳銃を1丁いつもより低めに構えた。
ソウジが持つ剣は細めの片手両刃直剣で刀身も鞘や柄の部分同様黒く、刀身の先まで黒百合の模様が彫られている。また、ソウジが剣を手にした瞬間から俺の冷や汗は止まることなく、ソウジの満面の笑みは背筋を凍らせるまでの恐怖感があった。少しでも気を抜いたら死ぬ。それを体感している感じだ。
「それでは最終試合、始め!」
合図が終るなり、今までの摸擬戦とは異なりソウジから飛びついてきた。ソウジがいた場所の地面は少し抉れており、それほどの力で踏み出したのだと理解が出来る。そしてその速さは人間業でもないと感じるほどの速さで目で追うのがギリギリ出来るか出来ないかの差だった。
「ぐぅぅぅう!」
「あははは!まずは少しでも楽しまないとな!」
速さだけでなく一撃一撃が重く、右、左、上、下、斜めあらゆる方向からの斬撃がユウキを襲い、相手に攻撃をさせる隙を与えない戦法なのか、はたまたただ単純に彼自身が本心からの戦闘狂なのかそんなことを考える隙も与えてくれないほどの斬撃で防ぐだけでやっとだった。
斬撃を防ぐ合間にちらりとソウジの顔を見たが、一度目を合わせれば背筋を凍らされるような猛禽類の様な目付きで、さらには彼の後ろに控える謎の見えない存在に恐怖した。いや、恐怖というよりその存在に対して嫌な予感が脳裏を過った。
次回更新は4/3です




