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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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模擬戦-19

「なんというかえげつないな」


 ハヤトはサクラの本性を見て口角を引き攣らせながらそう言葉を発した。確かにサクラは攻略隊のメンバーからも普段と戦闘の時の雰囲気はかなり一変し、入隊したばっかりの新米はサクラの豹変振りを見て絶句したり恐れを抱くものもいるが、基本は見慣れてしまうせいか特に気にするようなことでもないと感じてしまうのだ。


 しかし、普段から彼女の素性を知らない表面しか知らない者は今回の豹変振りに言葉も出ないだろう。現に先ほどまでの活気溢れた声援は消え、ただただカイとサクラの戦闘の際に聞こえる武器同士のぶつかる音だけが鳴り響いていた。


「はぁ、もう諦めてくれません?これ以上は体力の無駄なんですけど」


「はぁっ……はぁっ……ま、まだだ!」


 カイは乱れる呼吸を無理やり正し、再度サクラに攻撃を仕掛けるがいとも容易く避けられ、最終的にはカイの攻撃には見向きもせずただただ立ち尽くすサキに視線を送る。


「あなたはもう諦めているようですね。まぁ私としてはありがたいことですがね」


「あっ……まだ、諦めているわけじゃありません!……『水霧(ミスト)』」


 サキはサクラにそう言われ我に返ると魔法を発動させた。ロッドの先からまず宙に水を生み出し、徐々に蒸発させ白い霧を生み出していくと段々と闘技場内は視界が悪くなっていく。


「なるほど、相手の視界を奪うのはいい考えですがそれではあなたのパートナーやあなた自身も私の事を捕えられるんでしょうか。まぁまずはこの視界をどうにかしないとですけどね『閃光雨(シャイニング・レイン)』」


 まったく見えない視界の中でサクラは言葉を放つと一本だけ矢筒から矢を引き抜き、上空に向かって矢を放った。すると、一本だけ放ったはずの魔力を帯びた矢が複数の矢の雨となって闘技場内に降り注いだ。それと同時に霧は晴れ、お互いに相手の姿を視認出来るようになったが、視界が良好になったサクラを待ち構えていたのは既に次の魔法の詠唱を終え、いつでも発動できるサキの姿だった。


「『水球(アイスボール)』」


「だから、そんな初級魔法なんて私には意味が無いはないですよ……っ!」


 サキの頭上にあった3つの水球がサクラ目がけて放たれたが、サクラに届くこともなくサクラの腰に携えられたナイフによって一刀両断されたが、魔法が霧散された直後、サクラの視界に入ったのは頭上から鉤爪を振り下ろし、今にも一太刀浴びさせようとしているカイの姿だった。


「おらぁ!」


 振り下ろされた腕はサクラの不意を突くことは出来たがやはり躱されてしまった。


「ちっ、外れたか……」


 手ごたえがないと感じたカイは再びサクラに向かって走り出したが、サクラは手を前に出し、口を開いた。


「……もういいです」


「は?」


 突然のサクラの言葉にカイは拍子抜けし、走る足を止めてしまった。


「だからもういいです。この摸擬戦は終了です。審判さん勝敗は彼らの勝ちでいいです」


「えっ……あ、はいっ……この勝負サキ&カイペアの勝利となります!」


 サクラのいきなりの終了発言により審判は狼狽えていたが、なんとか摸擬戦の終了の合図とともになんとも腑に落ちない摸擬戦第1戦目が幕を閉じた。だが—————


「ちょっと待てよ!何勝手に終わらせてるんだ。こんな腑に落ちない終わり方はないだろ!」


「……はぁ、これを見てください」


 声を荒げるカイに対し、サクラは面倒くさそうにため息を一度吐くと自身の肩をカイとサキに見せる。そこには小さな傷が生まれており、破れた服の端が少しだけ血を吸い、赤く染まっていた。


「あなたは先ほど私に一太刀でも一掠りでもいれてやると言いましたよね。この傷はあなたの振り下ろした腕が私の肩に一掠りしたため、私はあなたたちの実力を認めたのです。あなたもあなたで私に一掠りですが傷を入れたんですかもういいでしょう。それともまだ文句あるんですか?」


 カイは何も言わず黙り込み、ただただサクラの言葉を聞いていた。


「それに何の話し合いもなくあそこまでの連携をし、一瞬とはいえ私の不意を突いたんですから私からすれば十分ですし、それにまだあなたたちは2戦残っているんですよ?こんな1戦目から体力を消耗して残りの2戦十分に実力を発揮できるんですか?少しは考えてから物を言ってください」


 サクラはそう言って闘技場を出て、待機している攻略隊の神官に掠った傷を治しに行った。


「あ、あの!カイさんとりあえず1戦目お疲れ様です。次もよろしくお願いします」


 サキはサクラが去った後、未だ納得のいかないといった表情を浮かべながら闘技場を去ろうとするカイを追いかけてそう言葉を放った。


「あんたはさっきの戦いに納得いっているのか?」


 カイはサキの方へ顔を向けることなくそう言葉だけを放った。その声には悔しさが含まれていたが、サキは特に長く答えるまでもなく短く「納得はいってないけどサクラさんの考えはわかります」とだけ答えた。サキの言葉を聞いたカイは一拍おいてから息を長く吐き出すとサキの方へと振り向き「あと2戦よろしく」とだけ言い残し、人混みへと紛れていった。


 それから摸擬戦は順調に進み、大体のペアだけでなくハヤト、サキ、マシルも無事第1戦目、第2戦目を終了していった。そして—————


「皆さま摸擬戦第2戦目も最後の1人になりました。それではまず攻略隊の方からお呼びしましょう!魔法支援部隊隊長を務める堅物眼鏡、魔法使いのアキラさんです!」


 司会がそう名前を呼ぶと、黒い丸渕眼鏡を掛けた全身を白で統一し、手には自身より少し短い杖を持った紹介にも合ったようにいかにも堅物な雰囲気をした男が司会の後ろからゆっくりと闘技場内に現れた。


「そして参加者からは現在確認されている中ではただ一人の銃剣士であり、この世界(エイガルド)に来たのもまだ数か月程度のルーキー、ユウキです!彼は先ほど第1戦目でも紹介した通りペアからあぶれソロ参加となります」


 俺は自身の名前が呼ばれると少し紹介のされ方に恥ずかしがあるが、隣にいたハヤトに背赤を押され、なるべく平然を装いながら人混みを分けて、対戦相手であるアキラの待つ闘技場へと足を進めた。闘技場へと入ると周りの声援に少し気圧されるが、それ以上に相対するアキラの鋭い視線に身体を震わせた。


「勝負前に1つ言っておきたいことがある」


「なんだ?」


「君の先ほどのサクラ君との摸擬戦見ていたがやはりまだまだ動きに無駄がある。悪いんだが、正直僕は数か月程度の新米である君をダンジョンに連れて行くのは反対だ。だから……」


「参加するのを諦めろ、ですか?悪いんですけどそれは無理ですね」


 俺はアキラの言葉を遮ってそう言葉を返すと腰に携えている片手直剣を引き抜き、いつでも始められるよう準備をする。それを見たアキラは眼鏡をクイッと指で押さえながらため息を吐くと、先ほどより鋭い視線で俺の事を見てくる。


「後悔しても知らないからな」


「それでは両者ともに準備が出来たようなので始めさせていただきます。それでは最後の第2戦目、始め!」

次回更新は3/13です

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