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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第1章 「全ての始まり『エイガルド編』」
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閑話 後編

「げほっ……やっと終わったな……」


 ハヤトは軽くせき込みながらそう言い、身体を上に伸ばす仕草をする。先ほどまでユウキたちはギルドで受けていた依頼を完了するためにエイガルドから少し離れた森へと足を運び、依頼の討伐目標である鳥型の魔物『ハーピー』を討伐しに行っていたのだが、それはただのハーピーではなく冬の季節または雪が降る地域にのみ現れると言われている『スノーハーピー』と言われる魔物の討伐だった。


 そして森に行ったにも関わらずなぜハヤトがせき込んだのかというと、森の奥深くにはある廃墟があるのだが、そこが討伐目標であるスノーハーピーの住処と依頼書に書かれていたのだ。


「しかし、あの時は流石に死んだかと思ったぜ」


「あの時って……あぁ、あれか……」


 ハヤトとユウキはそう言い、虚ろな目でそんな会話をする。ハヤトの言うあの時とは依頼書に記載されているその廃墟まで足を運び、その場で討伐を試みて少し経った戦闘中の時だった。ユウキが攻撃を受け、ハヤトがヒールを掛けようと詠唱を始めた時、一瞬の隙を突かれハヤトが突然頭上から現れたスノーハーピーに肩を掴まれ、廃墟と同じ高さまで連れ去られたのだ。


「あの時の叫びは傑作だったな。『う、うわぁぁぁ!』だっけ?」


「アカネちゃんそんな事言っちゃ…だ、だめだよ……ハヤト君が……か、かわいそうだよ」


 ニヤニヤとハヤトを笑いながら真似する気のないその時のハヤトのモノマネをするアカネとそれを止めようとするが、その時の状況を思い出し堪えるように肩を小刻みに震わせながら笑わない様にと耐えているサキがそう言う。2人を横目にハヤトは羞恥に頬を赤くさせ俯きながら歩くスピードを上げようとするが隣にいたユウキに肩を掴まれ、速めようとした歩くスピードを元に戻し、ユウキへと視線を移す。


「ユウキ……」


「……ハヤト、お前もカズと同類のネタ人間なんだな。面白かったよ」


 ユウキはそう言って笑い飛ばすと後ろを歩いていたアカネとサキもさらに笑い出す。ユウキにそう言われたハヤトだけが死んだ魚の様な虚ろな目になり、背中には哀愁が漂っていた。


「…………早く手続きを済ませて帰ろう」


 ハヤトは小さい声でそう言うと緩めていた歩くスピードを徐々に上げ、最終的に1人ギルドへ向け、走り出していた。


☆★☆★☆


「……よし、これでいいかな!」


 ユウキたちが依頼を済ませエイガルドに戻ってきていた頃、ハウスではタイセイが夕飯づくりに勤しんでした。


「お、もうできたのか……って今日は料理の品多くね?」


 香しい料理たちの匂いに釣られ、タイセイの背後から顔を出したのは依頼を受けに行かなかったカズだった。


「うん、一応今日はクリスマスらしいからね。今朝からハヤト君が騒がしかったからちょっと多めに作ったんだよ」


「あぁ、そういえば今日クリスマスか……道理で街も騒がしかった訳だ」


 カズは昼間にユウキたちがギルドに出かけて行った少し後に自分の装備の調整を頼んでいた防具屋へと足を運ぶために街に出ていたのだ。その時に異様に街が彩られており、いつも以上に活気があったから少し不思議に思っていたのだ。


「カズ君はクリスマス興味ないの?」


「ん…あぁ、うちはクリスマスに騒ぐような事はなかったな。というより両親が仕事でまず家にいなかったからな」


「あぁ、そういう事。余計なこと聞いたね」


 タイセイは申し訳なさそうにそう答えるとカズは首を横に振り、「気にすんな」とだけ答えた。


「そういえばマシルはいないけどどうしたんだ?あいつも依頼行ってんだっけ?」


「マシルちゃんは少し買い物に行ってるよ」


 タイセイは鍋の中身をかき混ぜながらそう言うと、これ以上は何も言わず料理を続ける。


☆★☆★☆


 タイセイが最後の1品を作り上げる頃、ハウスの玄関から声が聞こえた。タイセイは調理する手を止め、玄関に足を運ぶと、そこには街に買い物に出かけていたマシルと依頼を受けに行っていたユウキたちが談笑しながら靴を脱いでいた。


「おかえりみんな」


「おう、タイセイただいま」


 タイセイにいち早く気づいたユウキがタイセイにそう言う。


「タイセイ、君……これ………」


「あ、マシルちゃんありがとう。あとおかえり」


 ユウキの後ろにいたマシルに紙袋に入れられた食材と2本の瓶に入ったワインを受け取るとタイセイは玄関の扉に凭れている哀愁漂うハヤトへと向け、ユウキに耳打ちで聞く。


「ユウキ君……ハヤト君どうしたの?なんか死んだ魚の目してるけどなんかあった?」


「ハヤト?あぁ、あいつのことは後でな」


 ユウキは思い出したように笑い、近くにいたアカネとサキもクスクスと笑う。まだ何も聞かされていないマシルといまいち状況が読めないタイセイは首を傾げながらリビングへと歩いていき、タイセイは受け取った食材をキッチンへと運び、途中で止めていた調理を続ける。


「何か手伝うか?」


 キッチンに戻り、調理を再会したタイセイの後ろから着替えを済ませたユウキが顔を出し、そう言ってくる。


「大丈夫だよ、後はこれだけだから」


「そっか、じゃあ皿だけ出しとくな」


「ありがとう」


 ユウキはそう言うと戸棚に仕舞ってある平たい皿を取り出し、タイセイの近くに置く。タイセイはユウキに短く感謝を告げ、最後の調理に集中する。


☆★☆★☆


「……ん。よし、完成」


 最後の味見を済ませるとタイセイはさらに盛り付けられた料理を皆のいるリビングへと運ぶ。リビングではすでに皆がある1つの話題で談笑しており、時折カズの大笑いがキッチンまで聞こえるくらいだった。


「ハヤト、それマジかよ!」


「う、うるせぇ!俺だって必死だったんだよ!」


 ハヤトが顔を赤くさせながらカズにそう言うと、皆はさらに笑い出す。


「タイセイ、料理出来たのか?手伝うよ」


「ありがとうユウキ君」


 料理をリビングへと運んでいたタイセイに気付き、ユウキもキッチンへと足を運び、盛り付けられた料理をリビングへと運ぶ。


「おぉ、今日は豪華だな」


「ハヤト君が言うには今日はクリスマスらしいからね」


 タイセイはそう言ってグラスを7つ戸棚から取り出し、マシルに買ってきてもらったワインをグラスへとゆっくり注いでいく。


「じゃあ皆グラスは持ったか?」


 いつの間にか立ち直ったのかワインの注がれたグラスを持ったハヤトがみんなのことを見渡しながらそう言う。そしてグラスを持つ手に少し力を込めながら高らかに上げるとハヤトは口を開く。


「じゃあメリークリスマスってことで乾杯!」


 ハヤトの乾杯の音頭により皆がグラス同士を当てて、チンと鳴らしながら乾杯をする。そして皆タイセイの料理をつつきながら、ワインを飲みながらクリスマスの夜を過ごしていくのだった。

クリスマスと言っておきながらすでに年を越したという事実。皆さま明けましておめでとうございます!本当だったら昨年中に終わらせておきたいお話だったのですが、予定により今日終わらすことになりました。とりあえずこんなグダグダな閑話でしたが、皆さま今年も一年『ワールド・オブ・ザ・デスゲーム』をよろしくお願いします。

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