模擬戦—6
「よぉ、こんな所でなに黄昏てるんだ?」
ハヤトは人混みの中を掻き分けてタイセイとユウキのいる闘技場の近くまで向かっていた。そしてハヤトは闘技場から少し離れた休憩スペースに設置されたベンチで呆けた表情を浮かべながら座っているユウキにそう声を掛けた。
「んぁ…?……あぁ、ハヤトか…カズの様態はどうだ?」
ハヤトの接近に気付いていなかったユウキは声を掛けられた瞬間我に返ったように吃驚した声をあげながら視線をハヤトに移す。
「とりあえずさっき目を覚ましたよ。まぁ、あいつのことなら大丈夫だ」
ハヤトは呑気にそう答えると、ユウキの隣に座り込み、闘技場で行われている摸擬戦を遠目に眺める。ユウキがカズの心配をする理由はユウキがカズの下へと訪れた時、カズの摸擬戦はすでに終っており、闘技場には血だらけで気を失っているカズとユウキより先に試合を見に来ていたハヤト、カズの酷い様態に顔を真っ青にしているマコと観戦者たちがカズを囲むようにして立っていた。
ユウキはその酷い有様を見た時、何もできずその場で立ち尽くしていただけだった。
「そうか、無事ならいいんだ」
「まぁ、今回ばかりは相手が悪かったとしか言いようがないさ」
ハヤトはそう言って持ってきていた軽食を取り出すと、口に運び始める。ユウキはハヤトの言葉に冷徹さを感じたが、この世界は日本のような平和な世界ではないんだということを改めて思い知り、反論したい気持ちを飲み込んだ。
そして数時間後、摸擬戦一日目は特に問題(カズの件を除いて)も起こすことなく無事終了し、ギルドには徐々に人がいなくなっていった。
☆★☆★☆
摸擬戦一日目、参加するハンターが集められたのはギルドから少し離れた森だった。ハンターの摸擬戦はハンター同士の先頭ではなく弓術、索敵能力、隠密からの奇襲率が測定基準であり、点数制だった。
一戦目は弓術のその場で放った時の命中率と移動しながら放つ時の命中率を5人1組で競い合うものである。弓術は命中率に応じて距離と障害物を増やしていき、すべての的を射抜くことが目的であり、攻略隊に所属するハンターでも至難の業だった。
そして二戦目はハンターの重要な役割でもある索敵能力。この摸擬戦は森の中に100の的が設置され制限時間内になるべく多く的を見つけて一太刀、または矢での索敵能力打ち抜きで測るものだった。また、目標の的とは別にダミーの的もあり、ダミーに攻撃を与えると減点される。
最後に三戦目の隠密からの奇襲率。この摸擬戦だけは攻略隊のメンバーが相手をする事になっており、摸擬戦を受けるハンターは攻略隊のメンバーに気付かれずに不意を突き、一撃と言える攻撃を与えるというだけのことだった。
摸擬戦を受けるハンターの人数は少なく、摸擬戦も一日で終わる様な内容であり、摸擬戦に挑んだアカネは辛うじてだが合格点に達することが出来、合格することが出来た。
「お疲れ様!アカネちゃん!」
「……お疲れ」
サキとマシルの2人はアカネの摸擬戦を最初から最後まで見守っており、全ての過程が終るとアカネの下へと駆け出し、タオルと水の入った水筒を渡した。
「ありがとう2人とも最後まで見てくれてたんだね」
「もちろんだよ!」
「……かっこよかった」
アカネは少し恥ずかしそうに頬を掻いた後、2人からタオルと水筒を受け取ると、タオルを首に掛け、水筒の中身をゆっくりと口に運んだ。
「とりあえず私の摸擬戦は終わっちまったんだ。明日からはタイセイとバカズの摸擬戦を見に行こう」
「そっか、騎士とガーディアンは他より人数が多いから二日かかるんだもんね」
サキは思い出したようにそう答えると、摸擬戦が行われているギルドの方角へと視線を移すが、ここはギルドから近いとはいえ緑が生い茂っている場所であり、見えるのは沈み始める太陽の光に照らされ、紅く染まった木々しか見えなかった。
次回更新は12/12です




