模擬戦—3
「ほらほらほらッ!受けてるばかりじゃ私には勝てませんよ!」
サニュエルの攻撃は今もなお続き、タイセイはなんとか躱す、受け止めるだけが精一杯だった。そして—————
「ぐッ!」
サニュエルの攻撃をほぼ全て受け止めていたタイセイがとうとう地面に膝を付く。サニュエルはその隙を見逃すはずもなくさらに追撃をしようと剣を振りかぶる。
しかし、サニュエルの剣はタイセイに届くことはなかった。
「なッ!」
サニュエルの剣はタイセイに当たる瞬間、剣先から柄の部分まで全て無くなっていた。いや、消えたというべきだろうか。
サニュエルは完全に隙を突いたと、確実に勝ったと思っていた。そしてタイセイとサニュエルの戦いを見ていた傍観者もサニュエルの勝ちだとそう思っていた。だからサニュエルを含め周りの者には一体何が起きたのか理解することが出来なかった。
「こ、これは……い、一体……」
「理解できないようだね。悪いんだけどこの勝負、君に一撃を受けてから勝敗は決まっていたんだ」
地面に膝を付いていたタイセイがゆっくりとその巨体を起こしながらそう言葉を発す。しかし、サニュエルにはまったくと言っていいほど理解が出来ていなかった。
「君は一体何を……」
「僕の能力…『消耗』の力だよ」
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『消耗』
使用者が触れた物の耐久値を大幅に下げる能力。生き物には全く通用しないが身に着けている物、存在している物には通用する。しかし、触れた直後に発動することは出来ず、発動までに時間がかかってしまうが、その分大幅に耐久値が下がるので武器などは一瞬で消えた様に見える。
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「貴方の足元を見てみれば理解は出来るんじゃないかな?」
サニュエルはタイセイの言う通りに自身の足元を見ると、そこには朽ちてボロボロになった刃の部分が落ちていた。
「正直、今回の武器が木剣で良かったよ。金属なら僕が負けてたと思うしね」
「ば、馬鹿な……この私が……」
今度はサニュエルが力なく地面に膝を付いた。
「同じクラスの方と戦えて勉強になりました。ありがとうございます」
タイセイは手に持っていた武器をしまうと膝を付いて顔を伏せたままのサニュエルにそう言い、一度ゆっくりと礼をする。そして静かにその場を離れ始めた。
「勝者、タイセイ!」
静まった闘技場の中で審判の声だけが響きその直後、歓声が響いた。
「おぉ、タイセイ無事に勝ったな」
「あぁ、これで1勝か。まぁ、あいつなら大丈夫だな」
ハヤトはそう言うと、タイセイのいた闘技場から離れ始めた。
「ハヤト?どこ行くんだ?」
「ん?あぁ、タイセイなら大丈夫そうだから今度はカズのとこにでも行ってみようかなって思ってな。お前はどうする?」
「俺は一度タイセイのところに行ってくるよ。その後カズの試合を見に行くわ」
俺はそう伝えるとハヤトは一言「了解、じゃまた後でな」と言って人混みに紛れて行ってしまった。俺もハヤトの姿が見えなくなるのを確認した後、タイセイがいた場所まで人混みを分けて向かった。




