デスゲームの始まり-2
手に持ったジョッキをガチャンと音を鳴らしながらテーブルに置いていくと、店員は「ごゆっくり~」と言ってカウンターの方に戻っていった。出されたジョッキの中には綺麗な色とは言い難いが黄色い液体が溢れんばかりにはいっており、なんとなく生ビールを連想させる。
「おい、これって酒じゃ……」
「ん?あぁ、そっか。やっぱお前にもそう見えるよな」
ハヤトたちはこの世界の食べ物に見慣れているのかユウキの反応が新鮮らしくジョッキの中身を見て、微笑を浮かべた。
「見た目は酒に見えるだろ?でも、これ酒ではねぇよ。ここに来たのは単なる腹ごしらえとこの世界についての説明が主にだし、それにこの後行くところがあるからな。酒なんか飲んで酔われちゃ困るからな」
ハヤトはそう答えると、ジョッキを手に取った。
「じゃあ、とりあえず乾杯!」
ユウキ以外のみんながジョッキを持ちながらハヤトの掛け声に合わせて、ジョッキをカチャンと互いに打ち付けて音を鳴らす。そして各々はジョッキに口をつけて飲み始めた。
「えっと、ユウキ君だったよね。僕はタイセイよろしくね」
俺の隣に座っていたタイセイは見た目通り優しく声を掛けてきて、来たばかりの俺のことを気遣ってくれた。その後はいろいろと日本でのことなど話しに花を咲かせていた。彼らと話して分かったことは皆、大体半年内にこの世界に連れてこられたらしく、日本で事故にあったりなどの理由で気付いたらあの丘に横になっていたらしい。ちなみにこの世界で一番長く生活をしているのはアカネとカズそしてリーダーのハヤトらしく、この3人は一年以上前からこの世界で生活しているとのことだった。
俺は日本での思い出話に花を咲かせるのもいいが、そろそろ本題に入りたいと思い、手に持ったジョッキをテーブルに置くと、真剣な眼差しでハヤトたちに訊ねた。
「なぁ、それでここは一体どこなんだ?見るからに地球じゃないけど」
俺はそう訊ねた。正直な話、エイガルドっていう国名も聞いたことないし、空に浮かぶ赤い三日月。信じられはしないが多分異世界だろう。思考だけでは簡単に答えが出るが、受け入れるとなってはこの世界で生活しているもの、それもこの世界の住人に近い者の口から聞かないと受け入れられないと思ってしまう。
そんなことを質問した後に静かに考えているとハヤトたちは顔を見合わせ、静かに頷くと先ほどまでの表情とは一変し、ユウキ同様真剣な眼差しを浮かべる。
「ユウキ、お前の質問を答えるという事はそれはこの世界の事を知って、無理にでも受け入れてもらわないといけない」
「あぁ、構わない。聞かせてくれ」
ユウキの言葉にハヤトは一息つけると口を開き、話し始めた。
「多分、お前も大体は予測がついているだろうが、この世界は日本とは異なる世界。まぁ、異世界ってやつだな」
「そうか、本当にここは異世界なんだな」
「まぁ、さっきも軽く話していたが、俺たちがこの世界に連れてこられた理由も連れてきた者もまったく分からないが、この世界に来た者の共通点といえば地球に住んでいた時に何かしらの事故に巻き込まれ死んだ時だ。ちなみに俺は心臓病で一度死んだんだけどな」
ハヤトはそう答えながら乾いた笑みを浮かべた。だが、ハヤトは死んだことに後悔はあるものの、こっちの世界に来てよかったと先ほどとは違い、心の底から喜んでいるような笑みを浮かべながら答えた。
「まぁ、俺たちもこの世界に来たときは驚き戸惑ったさ。いきなりこんな所連れてこられて何をしろってな」
ハヤトは自分がエイガルドに来た当時のことを思い出しながら話を続けた。
「その時だ、エイガルドに来たばっかりの俺にやさしく導いてくれた奴がいたんだ。それも俺たちとユウキみたいな感じでな変な恰好したやつらが俺を神殿に連れて行ってくれてな。そこで何をすればいいのか教えてくれんだ」
「神殿?もしかしてあの崖の上にあったやつか?じゃあ、まずはそこに行く感じか?」
「そうだな、食事を終えたらその神殿に向かうつもりだ。まずは、そこでこの世界とエイガルドについて説明を聞いて、最後にクラスと自分の武器を貰い、いつか来る敵に備えて鍛えるって感じだな」
(クラス?話の流れからしてジョブとかその辺のことだな。それに武器って言ってるし十中八九そうだろう)
「そういえばハヤト、クラスって何があるんだ?」
「そうだな、簡単に纏めるとクラスは全部で九種類。基本的なクラスは攻撃に特化した『騎士』、防御などの引きつけ役に特化した『ガーディアン』、中遠距離に特化した『ハンター』、回復や支援魔法に特化した『神官』、そして攻撃、防御、支援に特化した『魔法使い』。これらが基本的に多いクラスだな」
「残りの四種類は?」
「騎士と同等の物理攻撃と魔法使いと同等の魔法を駆使出来る近中遠距離全てに特化した『銃剣士』、魔物を使役することが出来る『ビーストテイマー』、素材を錬金・錬成し、それを戦いに役立てることができる『アルケミスト』、ビーストテイマーの上位互換とも言われているドラゴンを使役して戦うことの出来る『ドラグーン』の四種類でこれらはかなり数の少ないクラスだな。レアクラスとも呼ばれているほどなんだ」
「レアクラス……そういえばハヤトたちはどんなクラスなんだ?」
「俺は見ての通り神官だよ。そしてカズが騎士、アカネがハンター、サキが魔法使い、タイセイがガーディアン、最後にマシルがビーストテイマー」
「え?ビーストテイマーって…」
「そうだ、マシルはレアクラス持ちなんだ」
ハヤトは俺の言葉を遮るようにそう言葉を発した。俺は興味深い視線をマシルへと向けると彼女は恥ずかしがり屋なのかすぐさま視線を逸らし、隣にいたアカネを盾にするように隠れてしまった。
「まぁ、クラスについてはこんな所だな。ほかに質問はあるか?」
ハヤトは新たに運ばれてきた食事に手を伸ばしながらそう言葉を発した。俺も同じように食事に手を伸ばしながら聞きたいことを頭の中で整理し、口を開く。
「さっき敵と戦うときがあるって言ってたが、敵って誰のことだ?」
俺の質問を聞くなり、ハヤトは一度口を潤すためジョッキに入っている液体を飲み干した。




