攻略隊の帰還と勧誘—9
「……ん、ここは!」
目を覚ますとソウジはダンジョンの外にいて、目の前には暗い表情を浮かべながらソウジの顔を覗き込むように見つめていたサクラと目があった。ソウジはすぐさま頭を上げると周りにも暗く重い空気が流れており、攻略隊のメンバーたちもサクラと同じく暗い表情を浮かべ、下を向いていた。
「ここはダンジョンの……外か?」
「……おはようございます、ソウジ君」
サクラを一度姿勢を正してから周りを窺う俺に声を掛けるが、その声はいつもの元気な声色ではなく、暗いものだった。ソウジは寝起きの頭をフル回転させ、なぜダンジョンの外にいるのか思い出す。そしてある1つの疑問を思い出し、再度周りを確認する。
「サクラ…タイガはどこだ?」
震えた声でサクラにタイガの居場所を尋ねるがサクラは下を向いたまま何も答えない。攻略隊のメンバーも『タイガ』の名前を聞いた途端、さらに表情を強張らせる。
「隊長…タイガさんは多分もう……」
サクラは思い出したかの様に震える声でゆっくりそう答える。サクラの言葉を聞いたぁソウジはサクラの方にゆっくりと視線を移すとサクラの目尻には小さな雫が浮いていた。
「そっか……サクラ、お前に頼みがある」
ソウジはゆっくりとその場で立ち上がると、サクラにそう声を掛ける。
「タイガと別れたところまでの地図を渡してくれ。そして攻略隊のメンバーを連れてエイガルドに戻ってくれ」
「何を…する気ですか?」
「分かるだろ?タイガを迎えに行くんだ」
「だ、だめです!絶対に地図は渡しません!」
ソウジは微笑を浮かべながらサクラにそう答える。だが、サクラは首を横に振り、地図を渡すのを強く拒否した。
「……じゃあ地図はいい、だがお前らはエイガルドに帰れ」
「お断りです!私はあなたをエイガルドに連れて帰るとタイガさんと約束したんです!だからあなたが帰らないのであれば私はここから一切動きません!」
サクラはそう強く答え、さらに言葉を続ける。
「それになぜ!あなた1人がそんなにか抱え込むんですか!何故私たちを頼ってくれないんですか!」
ソウジはサクラの言葉に何も言い返せずに俯いたまま黙っているが、サクラはそんなことお構いなしに言葉を畳み掛ける。
「そんなに私たちは頼りないですか?」
「ちがっ!そんなわけじゃ……!」
ソウジは言い返そうと俯いてた頭を上げる。顔を上げるとすでにサクラの顔は涙で濡れており、周りのメンバーも涙を流しながらソウジを見ていた。
「違うというならなぜ私たちを頼ろうとしてくれないのですか」
「それは……お前たちまで危険に晒したくないから……」
ソウジはまた顔を俯かせながら力のない声でそう答えた。直後、その場からパンという乾いた音が鳴り響いた。涙を流し、目を赤く腫らしたサクラがソウジの頬を思いっきり引っ叩いたのだ。
「危険に晒したくない?ふざけないでください!」
ソウジは突然殴られたことに驚いていたが、サクラはソウジを睨みつけながらそう答える。
「私たちは危険を承知で攻略隊にいるんです。それなのに危険に晒しくない?馬鹿なんですか?1人じゃ何もできない癖にそういうところだけは副隊長面ですか?調子に乗らないでください!」
サクラはもの凄い勢いでソウジに罵声を上げ、攻略隊のメンバーたちも少し驚愕していたが、サクラの言葉に乗るようにおのおのがソウジに罵声を吐き出し始めた。
「いいですか!あなたがタイガさんを迎えに行くのであれば私たちも同行します。たとえあなたに何を言われようとも関係ありません。これは私たちの意志です。だから……」
サクラはソウジに言葉を吐き出し続けた。
「だから、少しは私たちを頼ってください。あなた1人で何もかも抱え込まないでください。攻略隊にはタイガさんとあなたが必要なんです」
そして言いたいことを吐き出し終えるとソウジの服をゆっくりと掴み、ソウジを引き寄せると、サクラはソウジの胸に頭を寄りかけながら最後に小さい声でそう言葉を放つ。
「サクラ、それにみんなも……ごめん、ごめん!」
ソウジはサクラを優しく抱きしめ、大粒の涙を溢しながらそう謝罪する。




