攻略隊の帰還と勧誘—2
エイガルドに来てから約2週間が経ち、ここでの生活にも慣れてきた頃……
「ん?広場の方が騒がしくないか?」
俺の言葉に一緒に買い物に来ていたカズとタイセイが広場に視線を移す。そしてカズは広場の人だかりの中心にいる金色の鎧を着込んだ男を指で指しながらタイセイに声をかける。
「なぁタイセイ、あそこにいる奴って……」
「……うん、彼だね。ってことは今回も無事に帰って来れたみたいだね」
2人は少し顔を引き攣らせながら話していると、金色鎧の男もこちらに気付いたらしく、手を振りながらこちらに近づいてきた。
「おぉ!カズにタイセイじゃねぇか。元気にしてたか!」
男は近付いてくるや否や元気な声で2人に声を掛けてきた。男が歩くたびに金色の鎧がガチャガチャと音を立てる。正直なところ、この装備で森や視界の悪い場所に行くとすぐに目立ちそうだ。
「知り合いか?」
「いや、こんなやつ知らねぇ」
俺の質問にカズは嫌味そうに答えると、男はカズの肩に腕を回しながら笑う。
「はははっ、いつも通り冷たい奴だなぁ。そんな悲しいこと言うなよ。……ところであんたは新しい転移者か?」
「あぁ、俺は桐之宮悠輝っていうんだ。それであんたは?」
「あぁ、紹介が遅れたな俺は木崎総司ってんだ。気軽にソウジって呼んでくれ。よろしくなユウキ」
ソウジはそう言うと俺に向かって右手を差し出してくる。俺も同じように右手を出し、ソウジの手を握る。
「それでソウジ君、君がここにいるってことはダンジョンは攻略し終えたってこと?」
「……いや、今回は攻略完了というよりは撤退って感じだったな」
ソウジはタイセイの質問に先ほどの元気な声色ではなく暗めの悔しいという感情が入った声色でそう答えた。
「おい、今回のダンジョン攻略の内容は明日には公開されるんだろう?何があったか聞かせろよ」
いまだにソウジの腕の中にいたカズがソウジの鍛え上げられた腕を押しのけながらそう言う。
「あぁ、いいぜ。…ただこれから俺は報告に行かなきゃならねぇから夜にいつもの酒場でいいか?」
「あぁ、分かった。酒場で待ってるよ」
カズがそう答えると、ソウジは俺とタイセイに一度挨拶をしてから広場の方に戻っていった。
「なぁ、さっきからダンジョンだの攻略隊だの言ってたけど、もしかして……」
「ん?あぁ、そうだね、まだちゃんとした紹介はしてなかったよね。彼は攻略隊の1人で一応副隊長を任されてるんだよ」
「あぁ、見えて中々の手練れだ。腹が立つことにな」
タイセイに続きカズも皮肉そうにそう答える。カズは彼に対して何故そんなにも皮肉なことを言うのかは知らないが、一応実力的には認めているということが分かった。
「とりあえず、一度ハウスに戻ろう。みんなにも知らせなくちゃね」
「ハヤト辺りは騒ぎそうだけどな」
俺たちそんなやり取りをしながらハウスに戻るため足を進める。
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「お、いたいた。昼ぶりだなカズ、タイセイ、ユウキそれと久しぶりハヤト」
「おう、久しぶりだなソウジ。相変わらず元気そうで何よりだ」
ハウスに戻り、みんなに昼間にソウジと会ったこと、攻略隊が帰ってきたこと、夜にソウジと酒場でダンジョンについての話をすることを伝えるとハヤトはカズの言った通りに騒ぎ、興奮気味にその話しに食いついてきた。
また、サキやマシルたちもその話については興味ありそうな雰囲気を出していたが、アカネの「酔っ払いの面倒を見るのは面倒だからパス」という一言により、残りの2人も遠慮してしまい結局男たちだけで行くことになった。
ちなみに俺もアカネの一言を聞いてから行くのに少し躊躇したが、タイセイの「一緒に来て手伝ってくれ」という頼みに断ることも出来ず、一緒にみんなと酒場に来た。
(今考えれば、ここに来ていなかったらそれはそれで息苦しいことこの上ないな)
俺はそんなことを心の中で思いながら、少しずつ覚えてきたこちらの言語で書かれているメニュー表に視線を移す。実のところ2週間の時が経ったが、サキはまだしもアカネやマシルなどとはいまだ打ち解けている感じではなく、アカネについては少し怖いという印象があり、マシルには声を掛けるどころか俺を見るや否やすぐにどこかに逃げてしまうのだ。
(あれはさすがに傷ついたよな……)




