プロローグ
「……ここは……どこだ?」
目を覚ますと辺り一面の暗闇だった。風もなければ音も光もない、ただただ暗闇だけが広がる場所だった。この場所がどこなのかを考えていると、不意に自分の後頭部に痛みが走った。
「ッ!……確か学校の帰り道に誰かに殴られたのか?」
痛みのする傷口にゆっくりと手を運ぶとさらに痛みが走る。指の先にはヌルっとした液体の様なものがついている感触がした。痛み的にどうやら出血しているようだ。しかし、誰がそんなことを。俺、恨み買う様な事したっけな?そんなことを考えながら手探りで歩いていくが、前に出された腕は何かに触れることなく虚しくも空を切った。
「はぁ、頭は痛いし、周りには何もないしでなんなんだよ。マジでどこだよ、ここ」
出口もないし、何も見えないことに次第に苛立ちが沸き、ブツブツと文句を呟きながら歩くことを止め。床にどすんと座る。しばらくその場で座って考えていると、微かに後ろの方から足音らしき音が聞こえてくる。
「ッ!…今、何か聞こえた」
音のした方に耳を向け、澄ませているとまた聞こえてくる。
—————コツ—————コツ—————コツ。
「ッ!やっぱり聞こえる…おい!誰かいるのか!!いるなら返事してくれ!」
音のする方に叫んでみたが、返事はなく、ただただ足音が近くなっていくだけだった。次第に足音は自分の目の前で止まった。だが、目の前には何の気配も感じない。もしかして幽霊か?極限状態にいるせいか普段では考えない事まで考えてしまった。
「……お、おい……返事くらい、してくれよ」
恐る恐る手を前に出しながらそう言うと、目の前にいるはずの者は何も言葉を発せず、ユウキの耳に聞こえたのは空を切る音だけだった。それと同時に腹部に痛みが走る。何をされたのか一瞬分からなかったが、徐々に訪れる痛みと自身の足を濡らしていく液体により何をされたのか理解する。
「ぐッ!なに、を……」
次第に自分がナイフのような鋭利な物で刺されたんだと理解した。左手で痛みのある腹部に手を当てると、すでに引き抜かれたのか腹部には何も無いが痛みは走る。空いてる右手で辺りを探るが、周りには何もなく、右手は空を切るだけだった。そして、すぐに右腕の肘から先の感覚まで失われた。恐る恐る左手で腕があった辺りを探るとそこにはあるはずの右腕は無く、床を探ると自分のだろうと思える腕が落ちていた。
どうやら腕まで切り落とされたようだ。もう何がなんだか分からない。理解が追い付かない。ただ痛みと何も見えない恐怖に襲われる感覚だけが残った。
「マジでなんなんだよ。痛てぇし、何も見えねぇし、誰もいねぇしでほんと……」
言い切る前に床に横たわる。どうやら出血のし過ぎで起きているだけでもきついようだ。そして、何も見えないが視界が揺らいでいく感覚が分かる。
「このまま……死ぬ……の、か?」
意識が薄れていく中、訳も分からず死を覚悟していると先ほどの足音の正体だろう女の声が微かに聞こえた。どうやら、俺を襲ったのもこいつだろう。だが、もうどうでもいい。どうせ死ぬんだ。
「……ふふっ、あなたはまだ死なないわ。だってあなたにはこれからやってもらうことがあるもの。楽しみにしてるわ……未来の英雄さん」
女は笑ながらそう言葉を発した。英雄?やってもらうこと?何がなんだが分からねぇが、もう、無理だ……。やがて女の笑い声は闇に消え、同時に俺の意識も消えた。
誤字脱字を訂正しました。




