デスゲームの始まり-17
シノは寝ようとするユウキの襟元を強引に引っ張り、ユウキの左右の頬に往復ビンタをし始めた。
「まだ話は終わっておらんわ!勝手に寝るな!」
暫くの間、ユウキの精神世界にはシノの繰り出すビンタの音とユウキの呻きの様な声だけが響き渡る。
「……ッ!いてぇからビンタすんのやめろ!!」
「なんじゃもう起きたのか」
「お前が起こしたんじゃねぇか…」
シノはユウキが目を覚ましたのを確認するなり、少し残念そうな表情を浮かべる。ユウキは自分の両頬を手で撫でながら、シノに対して愚痴をこぼす。
「てか、何だよ。他の用って……」
未だ痛む両頬を軽く押さえながらユウキは問いかける。シノは「そうじゃった」と思い出す様にユウキの方に向き直り、口を開いた。
「まず、先に訊ねるが魔石の扱い方は知っとるか?」
ユウキはシノの問いかけに首を傾げながら「魔石?」と聞き返した。シノはそんなユウキの様子を見て、これもまだかと呆れるようにため息を一度溢し、再度口を開いた。
「魔石の説明は受けておるじゃろ?」
「あぁ、確か神殿にあった宝玉や魔武石とかいう石ころも魔石の一種で宝玉みたいに大きい奴は神殿とかで厳重に管理されるんだろ?」
ユウキが神殿でバルザに習ったことに思い出す様に話すとシノは無言で頷いた。
「確かに、宝玉のように膨大な魔力を持った魔石は厳重に管理されている。では、逆に宝玉ほどの魔力を持っていない魔石、お主が今持っている程度の魔石の取り扱い方は聞いているか?」
そのシノの問いかけにユウキは頭を横に振った。
「お主が今持っている魔石や市場で売っているような安価な魔石は基本的に魔力の代替や道具に魔石の魔力を付与させて作る『魔道具』の材料として扱われるのが一般的じゃな」
シノの口から出た『魔道具』という言葉にユウキはある事を思い出す。
「そういえば、バルザとかいう爺さんにこの世界の本を読んでみろって言われて片眼鏡を渡されたな。覗いたら読めるはずのない文字も普通に読めた。あれも魔道具の一種か?」
ユウキの言葉にシノは「そうじゃろうな」と頷いた。
「さっきも言ったように魔石の使い道は様々じゃ。材料としても魔力の代替としてもそして、それ以外にも武器自体に取り込むことも出来る」
「……武器自体に取り込む?」
「魔石を武器に取り込み、完全に同化させれば武器自体にその魔石の魔力が宿る。そうすれば、新たな魔石やお主自身の魔力を使わずとも刀身に魔力を纏わせることが出来る」
シノはそう説明を終えると、流石に理解しただろと思いながらユウキの顔を訝しげに見つめる。その説明にはユウキも理解し、「なるほど」と無意識に言葉を溢しており、その言葉を聞いたシノは安心したように安堵のため息を溢した。そして、説明を終えると同時にユウキに問いかける。
「まぁ、魔石の説明はこんなところじゃな。他に聞きたいことはあるか?」
シノの問いかけにユウキは顎に手を添えながら暫く考え込むが、最終的に頭を横に振りながら口を開いた。
「正直、今色々聞いても混乱するだけだろうから起きてハヤトたちに聞くことにするわ。とりあえず、魔石は魔武石を武器に変えてからまた考えるよ」
「まぁ、それもいいじゃろう。儂から伝えたい事は一先ず伝えたからまた用が出来たらここに呼ぶことにするかの」
シノはそう答えると、最後に念を押す様に「絶対に魔石は失くすなよ」と答え、ユウキに別れの言葉を掛けた。ユウキもそのシノの言葉に無言で頷き、再度訪れる意識が遠のく感覚に身を任せた。




