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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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魔生物と魔物-7

「ホムラ?今のヴァーミリオン騎士団の団長はホムラというのかい?」


「あぁ、俺とマシルはそこにいるイズからホムラって奴が団長だって聞いたが、あんたは知らなかったのか?」


「ヴァーミリオン騎士団は私が領主になる前から存在していたから知ってはいるが、ホムラという団長は知らないな。いや、しかし…あそこの団長は確かかなりの高齢だったか。なら、すでに世代交代をしていてもおかしくはないか…」


 色々と気になることが多かったのか次第にブツブツと呟くように思考を繰り返すシアンにユウキは再度声を掛けた。


「色々と考え始めるのは結構だが、今はホムラやヴァーミリオン騎士団の話はどうだっていい。問題はなんでこの部屋を隠していたのかだ」


「あぁ、そうだったね。えっと、どこまで話したのだったかな」


「この部屋がヴァーミリオン家の人間達に知られ拷問部屋に変わったってとこまでだ」


「そうそう、そこまでは話したのだったね。……この部屋が変わってしまってから沢山の罪人や亜人が殺された。いや、死よりも屈辱的な事をされた者もいたらしい」


 悔しそうな表情を浮かべ、少しだけ俯きながらそう答えたシアンにユウキは頬を軽く掻きながら困ったように口を開いた。


「あー…結局この部屋を隠す意味はなんなんだ?」


 ユウキの催促するかのような物言いにシアンは一瞬喋ることを渋る様な表情を浮かべたが、諦めたかのようにゆっくりと話し始めた。


「……先ほど、この部屋は亜人を助けるために作られた避難場所だと言ったが、もう一つこの部屋が作られた理由があるんだ」


「もう一つの理由?」


「あぁ、この部屋はブレスタ時代に存在した王族が住んでいた城に繋がっていてね。仕掛けを動かせばお互いに行き来出来るんだが、これも王族と私達ヴィーブル家だけの秘密で万が一でも知られたくはなかったんだ」


「王族の住んでいた城、ねぇ…」


「まぁ、今は城と言うよりは跡地みたいなものなんだが、それでもこの部屋の先に続く場所だけは今も動いてるはずだ」


「…動いてるはず?」


 シアンの意味深な言葉にユウキは疑問を持つように小さく呟いたが、それは誰にも聞かれることはなかった。そして、本当であればユウキもシアンの意味深な言葉に対してさらに問いかけようとも思ったが、今の状況下でそのことを問い詰めている程の時間は無いと判断し、一先ずこの部屋を隠していたことと意味深な言葉に関しては一旦保留するということにした。


 だが、本来の問題は何にも解決はしていない。それは今の状況だ。現在、ヴィーブルの街には住民に飼い慣らされた魔生物が数多くいる。その中にはヴィーブルの街を囲む壁上の上にいる魔吸梟(ストリゲス)と同じように魔物化した魔生物も必ず存在しているはずだ。魔蹄羊(フーシープ)などの比較的討伐しやすい魔物であれば今のユウキ達でも問題無く討伐は出来るだろうが、魔吸梟レベルの魔生物が存在していたら二人で討伐に出ても勝機は薄いだろう。


 しかも、今回壁上にいる魔吸梟の目を掻い潜って『闇扉(ゲート)』でヴィーブル家の敷地に無事来ることは出来たが、気づかれていないとは言い切れない。幸い、魔吸梟は魔力感知のスキルは持っていないようだが、他の魔生物が持ってるとしたらこの屋敷に人が集まっていることがバレていてもおかしくはないだろう。


 現にマシルの従魔である朧は何かを察知したのか先ほどから天井を見上げており、何度か鼻をヒクヒクと動かしていた。そんな朧の様子にマシルも気づいたようで天井と言うより来た道の方を一瞥だけすると、ユウキとアイコンタクトだけを取った。ユウキもそれに呼応するように一度だけ頷くと、シアン達の方に向き直った。


「本当なら、もう少しあんたと話をしたいところだが、残してきた仲間が心配だ。悪いが、俺たちはそいつらの所に様子を見に行く」


「そ、そうか…それは確かにそうした方がいいだろう。私達の事は心配しなくて大丈夫だ。気にせず行ってくれ」


「あの、ユウキさん!」


そう答えるシアンにユウキは短く答え、地下室から出ようとした途端、イヴに呼び止められた。


「なんだ?」


「あの、リンの事なんですが……」


「リンがどうかしたのか?」


「あの子は多分、ユウキさん達がタイガさんの所に向かってもリンはこの部屋に来ることは無いと思います。だから、もし出来ればでいいのですが…この事態が収まるまでユウキさん達と一緒に連れて行ってくれませんか?」


「それは構わないが…この部屋に入りたくないというなら屋敷の中に入って貰っといた方が俺たちと一緒に来るよりは安全なんじゃないか?」


 ユウキの言葉にイヴは静かに頭を横に振った。


「あの子は…屋敷にすら入らないと思います」


「屋敷にすら入らないって…どういう意味だ?」


「あの子は…優しすぎるんです。あの子は、例え…どんな危険に犯されてもどんな窮地に陥っても自分だけが助かろうと一人で逃げることはしないんです」


「一人で逃げない…ということは屋敷に入らない理由はロニー、か」


 ユウキの言葉にイヴは静かに頷いた。そして、さらに言葉を続けた。


「だから、ユウキさんマシルさんお願いします。あの子を一緒に連れて行ってください」


 そう言い切るとイヴは二人に向かって頭を下げた。そして、ユウキもそんなイヴの言葉を自分の中で復唱するように考える。連れて行くこと事態は簡単だが絶対に守れるかは怪しい。正直なところ、ロニーもまた魔生物の一種であることには変わりない。いつ、ロニーが魔物化するかは分からない。そして、魔物化した後の強さに関しても未知数であることには変わり無い。


 だが、連れて行かなかったら連れて行かなかったで屋敷に入ろうともしないリンはかなり危険な場所にいつまでもいることになるだろう。それならば危険を冒してでも一緒にいた方が突然の事態にも多少なりとも対応は出来る。なら、連れて行った方が得策か?


「……分かった。リンは俺たちが連れて行く。ただ、『絶対に守り切る』とは約束しない」


 それだけ答えるとユウキはマシルと一緒に来た道を戻り、屋敷の外に向かった

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