魔生物と魔物-5
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「……駄目です。どの部屋にも誰も居ませんでした」
一度屋敷のリビングに集まり、椅子に腰掛け長テーブルに項垂れながらイヴはそう零した。しかし、ユウキとマシルもイヴと同じように屋敷の中を探し回ったが、誰一人として見つからなかった。
「お父様もお母様もイズにイアも一体どこに行ってしまったのでしょうか…」
不安げな表情を浮かべるイヴを横目にユウキは一つ思い出したようにイヴに声を掛けた。
「そういえば思ったんだが、この家って地下があったよな。『あれ』が置いてある場所が」
「…そうですね。……ですが、あの場所はヴィーブル家の人間とあなた方二人しか知らないですし、何より誰にも知られないように厳重にされていますからあそこに避難しているという可能性は低いと思いますよ?」
「それってつもりこの家の使用人も知らないって事か?」
「そうですね。先ほども言ったように私達ヴィーブル家の血筋の者とユウキさんとマシルさんだけです。もちろんリンも知らないはずです」
「……そうか」
それを聞いたユウキはしばし思考を繰り返す。イヴの言うとおりなら地下に避難はしていないだろう。だが、この屋敷に存在する部屋は地下以外全て見た。調理場や風呂なども全てだ。その上地下にも居ないとなったら彼らはどこに避難したのだろうか。
ユウキはブレスタに来てから宿に泊まるかの様な感覚でこの屋敷を拠点にもしていたからか幾分かは屋敷の構造も把握はしているつもりだ。その上で言える事は屋敷にある場所で探したところを除けば避難できる様な場所なんて地下しかない。
「まぁ、俺とマシルはすでに地下の存在を知っている身だ。今更行ったって問題はないはずだ。一応の確認で地下も確認しておこう」
その提案にイヴは渋々といった感じで了承したが、やはりシアンが使用人を地下に連れて避難するとはあまり考えて無いのか足取りは重く感じる。地下は一階のイヴが主に領主としての仕事を行う書斎に隠す様に存在する。壁一面に並ぶ本棚の内、中央にある一台の本棚に綺麗に整頓された本を順序よく押し込むと本棚が自動的に開き、地下への階段が現れるというものだ。
「三段目の右から二番目、一段目の左から四番目、そのまま右から九番目、七番目と押して最後に二段目の中央にある白い本…」
イヴは独り言を零すように本を押す順番を口に出しながら指先で軽く押していく。最後の白い本を押し込むと、一台の本棚は白い本を境目に真ん中中心から縦に割れ、扉のように開く。その先に姿を現わしたのは少しだけ急な階段と暗い空間だった。
「行きましょう」
壁に手を付けながら階段を降りるイヴの後を追うようにユウキとマシルも壁に手を付けながら階段を降りていくと、すぐに一枚の扉の前へと辿り着いた。扉の前でイヴは普段から持ち歩けるようにしている鍵の束を取り出すと、なんの装飾も施されていないシンプルな形をした鍵を手に取り、扉の鍵穴に差し込むなり回した。
ガチャリと音を立て、鍵が開いたことを理解する。イヴは鍵穴から鍵を抜き取ると、後ろに控えていたユウキにどうぞと言わんばかりに扉の前から横にずれ、ユウキに扉を開けるように促した。ユウキもその様子をみて理解したのか扉の取っ手に手を添えると、ゆっくりと回しながら押し込むように力を込める。ギギィと金具が錆び付いた様な重い音を立てながらも扉は力の方向へと開いていく。
扉の先には少しばかりの通路があり、通路の脇には通路を照らすための灯りが等間隔で設置されており、扉が開くと同時に手前から順番に灯りがともる。その通路の先にはさらに扉が存在し、その扉も先ほどと同じように鉄製の扉だが、鍵はついておらず取っ手を回すだけで扉は簡単に開いた。
その扉の先にあったのは部屋の中心に設置されたエイガルドでも見たことがある物だった。
「やっぱり何度見てもここにあるのが謎だよな。通路も狭いのにどうやって運んだんだ?」
「そんなことより部屋に誰か居ますか?」
「うーん、見た感じ誰も居ないかな」
マシルの言葉にユウキとイヴも周りを確認するが、人の気配は一切なかった。この地下にある部屋にあったのはエイガルドの神殿にもあった紫色の宝玉と同じ大きさと輝きを持つ青色の宝玉だった。
「ここに居ないとしたら一体……」
「んー…当てが外れるとなるとなぁ」
ユウキは初めてこの部屋を訪れた時と同じように宝玉の周りを歩き回りながら部屋の中を確認する。しかし、この部屋にあるのはこの青色の宝玉だけで扉もユウキ達が入ってきた場所にしか存在しない。この部屋にも居ないとなったら一体シアン達はどこに行ってしまったのだろうかとユウキは頭を悩ませるが、答えは一向に出なかった。
《……兄!……ユウ兄!》
地下室で頭を悩ましていると、さらに悩みを持ってきそうな存在の声が頭の中に響いた。一瞬、ユウキは目の前に存在する宝玉に視線を移すが、すぐに思考を切り替え頭の中でその声の主に返答する。
《…なんだよ、アオイ。今お前に構ってる暇はないぞ》
《ユウ兄!このまま帰らないで!》
《は?何でだ?》
《この部屋の先にもう一つ部屋があるんだ!しかも、その部屋から人の気配がする!》
《……ッ!?それはどこだ!》
突然の報告に一瞬言葉が口から漏れそうになったが、ユウキは表情を見られないようにと宝玉から後ろの壁に視線を移しながらアオイとの会話を続ける。
《えっと、……僕の身体を持ち上げてるやつのところに小さいボタンがあるんだ。それを押し込んでくれれば開くんだけど……》
《宝玉の土台だな?》
ユウキはアオイの言うとおり、宝玉の土台を調べ始める。すると、すぐに1カ所だけボタンの様なでっばりが存在しており、ユウキは脳内でアオイによくやったと褒め言葉を送ると、そのボタンを押し始めた。
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