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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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魔生物と魔物-4

「ユウキさん!これは一体どんな魔法をッ!」


「それについて俺は何も答えないし、今はそれどころじゃないだろ」


 馬車から降りると目の前には自分の家があるとなれば誰だってそういう反応はするだろうと思いながらもユウキは何が起きたのか訊ねてくるイヴを適当にあしらい屋敷の中へと足を運んだ。それに続くようにマシルとイヴも屋敷の中へと足を踏み入れるが、リンだけはロニーと屋敷の入り口に残ると口にした。


 ユウキ達も屋敷の近くもとい屋敷の敷地内であればすぐに対応が出来ると思ったのかリンの言うとおり屋敷の前で待って貰うことにし、何かあったら助けを呼びに来いとだけ残すと屋敷の中へと入っていった。


「思ったよりも静かだね」


「もしかしたらもう避難したのかもな」


 いつもであれば屋敷の中には複数の使用人達がせっせと忙しそうに仕事をしているものだが、今回に至っては誰一人おらず、閑散としていた。


「とりあえず他の部屋も見て回ってみる?」


「そうですね。どこかの部屋に固まって避難してるかもしれないですしね」


 それからもいくつかの部屋を見て回ったが、誰一人として見つかる事はなかった。



☆★☆★☆



 ユウキ達と別れてからタイガは一人ターコイズ村の診療所に向かっていた。走って数分どこを見ても魔物の姿はなく、安全に診療所に到着した。しかし、診療所やその周りもすでに暴走した魔生物のおかげでかなりボロボロになっており、近くに人の姿は無かった。


 タイガは腰に帯刀している日本刀の鞘に手を掛けながらゆっくりと診療所のドアを開く。ギィっと軋むような音を立てながらドアは開かれるが、誰かが出てくる様子は無い。だが、人の気配はいくつかある。タイガは手前の診察室があるドアから一つずつ開けて確認をしようと一番手前のドアノブに手を掛け、回した瞬間、大きな音を立ててドアが爆発した。


「ッ!?」


 突然の出来事にタイガは咄嗟に自身の能力である『結界』を発動させ、爆風から自身の身を守りつつ横に移動すると、その先にある隣の部屋からドアが開くような音が聞こえた。タイガはその音に遅れながらも視線だけを隣の部屋に向けるが、すでに遅く何かが迫り掛かっているのが理解出来た。


 タイガはその迫り掛かる存在に避けることは出来ないと瞬時に判断したのかすでに自身の身体を覆っている結界の強度を最大限上げ、その迫り掛かる存在を結界越しに受ける。ガキンっと金属同士がぶつかるような音を立てたそれは見慣れたものであることが理解出来た。


「誰ですか。こんな事態に侵入してきた不届き者は」


 爆風により上がった白煙の中から現れたのはつい最近、ダンジョン攻略を主とする有志によって集められた組織――――攻略隊に入ったばかりの白い鎧に身を包んだ長身の男カイザだった。なんの装飾も無いシンプルな形をした剣から伝わる感触に違和感を感じていたのか、カイザは表情を歪めながらも白煙から現れる侵入者の姿を待っていたが、白煙が少しずつ晴れ侵入者の姿を確認した瞬間カイザの表情はさらに一変した。


「……た、タイガさん!?」


「カイザだったよな。悪いんだが、それ下げてくれないか?」


 タイガの姿を確認したカイザはこの状況に驚愕しながらもタイガの指差す先にある自身が振るった剣に気づき、すみませんと謝罪の言葉を口にしながら慌てて背中に背負う鞘に剣身を納めた。タイガもカイザが剣を納めたのを確認してから結界を解いた。


「ところでタイガさん何故ここに?ヴィーブル家の方々と会談に行っていたのでは?」


「もちろんその帰りというかこの事態になって戻ってきたんだ。他の皆はどうした?一つの部屋に固まって隠れているのか?」


「えっと、一応診療所に入院している患者や働いてる方々は一つの部屋に固まって避難して貰っていますが、村の方々は分かりません。僕達も最初は診療所の壁から聞こえる変な物音でこの異変に気づいたんです」


「魔生物と戦ったのか!?」


「一応一匹だけでしたので僕と他のメンバーでなんとか討伐は出来ましたが……あれは魔物ではないんですか?」


「一応あれらは元はこの島に住む魔生物だ。ちなみに診療所に現れた暴走した魔生物はなんだ?」


「確か……見た目は魔羊(マトン)に似てましたね」


「って事は魔蹄羊(フーシープ)か。……怪我人は出てないか?」


「それが一緒に討伐した三人の内二人がその魔蹄羊の攻撃で一人は腕と足を、もう一人は肋骨を負傷しましたが、命に関わる様な事ではないようです」


 カイザの言葉に「そうか」とだけ安堵のため息とともに零す。しかし、まだ気になることはいくつもある。一つはこの診療所にどれくらい避難しているのか。そして、その中でまともに戦えて動けるものはいくらいるのかだ。エイガルドから来た攻略隊はタイガとカイザを含めて10人。その内の2人はすでに死亡しており、さらに今4人が怪我で動けなくなっている。その中にカズも含まれている。今、まともに動ける攻略隊は4人だ。その4人で診療所に避難している者達をどこかに逃がすことはかなり難しいことだった。


 しかも、今もなお村の中や周りには暴走した魔生物による危険は少なからずあるせいか気軽に移動する事も出来ない。タイガはどうにかしてここよりも安全な場所へと皆と逃げたかったが、確実に無理な話だった。こういうときに索敵の出来るサクラがいてくれたらと思うが、いない者のことを思っても仕方が無い。


「仕方ない、しばらくはここで様子を見ながら助けを待つしかないか。それにユウキ達も来るかもしれないからな」


 どうしようも出来ないこの状況と自分の不甲斐なさに固く唇を噛みながらタイガは暴走した魔生物がいつ攻めてきてもいいように診療所の周りに結界を張り、ユウキ達の助けを待つことにした。

次回更新は3/24です

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