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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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魔生物と魔物-3

 ヴィーブルの街を囲む壁上に魔吸梟(ストリゲス)の存在を視認してからユウキ達一行は門扉が視認できる位置まで移動してからどう街に入るか迷っていた。ユウキの鑑定で視た限り、魔吸梟という魔物はかなり厄介な相手でアビリティのどれを見ても対策のしようが無く、一行は頭を悩ませていたのだ。


「魔法を使えば吸収された上で自分の力の糧にされる……」


「かといって接近戦をしようにも相手は空を飛ぶ上、『透化』で簡単には攻撃を当てるのも難しいもんねぇ……」


「しかも、魔吸梟は相手の視界までも奪うといった戦う事すら嫌になる糞みたいなアビリティも持ってるからな」


 二人が頭を悩ませる中、疑問が湧いたのか同じように対策を思考していたイヴがおずおずと手を挙げながら声を掛けてきた。


「あの、一つ聞きたいんですけど魔吸梟の『吸魔』って同属性の魔法のみを吸い取るんですよね?」


「ん?まぁ、そうだな」


「それなら何を悩むのですか?」


 イヴの言いたいことが理解出来ないのか二人は首を傾げながらお互いに顔を合わせる。そんな振ったりの様子を気にする事も無くイヴは話を続けた。


「だって、マシルさんはともかくユウキさんは三属性の魔法を使えるのですよね?だったら、違う属性の魔法で戦えばいいのでは?そうすれば魔力を吸収されることなく戦えますよね?」


「イヴさん、それは……」


「戦えることは戦えるだろうが俺には無理だ」


 イヴの言葉にマシルが何かを察したのか話を遮ろうと口を開くがそれより先にユウキがイヴの提案を却下した。イヴも何故魔法が複数属性使えるのに自分の提案を却下したのか理解が出来ず、納得がいかないといった表情を浮かべながら何故だと訊ね返した。


「確かにお前の言うとおり他の属性を使えば戦えることは戦える。だが、考えてもみろ。今あいつがいる場所はどこだ?もし万が一街に、住民に被害が出た場合は?俺やお前に責任が取れるのか?」


「それは……」


「それだけじゃない。今はまだあいつは壁上で待機しているだけだが、攻撃をした瞬間『透化』したら次に姿を現わすまでどれくらいの時間が必要だ?その間にここにいる誰かが、街にいる住民が殺される可能性は無くは無いだろ?さらに視界を奪う『帳』まで使われたら俺たちに待っているのは死だけだ」


「…………」


「焦る気持ちは分かるが、もうしばらく待ってくれ」


 イヴはそこまで言われ漸くユウキが無理だと言った理由に納得がいった。確かによく考えれば街の中の状況が分からない上、魔吸梟の動きも分からない。そんな状況で動く方が危険性が高いのは当たり前だった。だが、イヴの焦る気持ちもユウキには分かっていた。家族がいるのだから心配になるのは当たり前だ。


 ユウキ一人で戦うのであれば単純に街の外へと魔吸梟を引きつければ問題は無いが街の状況も分からない上、ユウキが抜ければまともに戦えるのはマシル一人になってしまう。マシルもユウキと一緒に修行をし、力はつけてはいるものの一人では限度がある。だからこそ、ユウキはどうするべきかと頭を抱えた。


 『闇扉(ゲート)』が使えれば魔吸梟と戦わずに街の中に入り状況を確かめることは出来る。しかし、『闇扉』が使えることを教えていない二人がそれを目にしたらその後に起きる事が面倒だと思う反面、今のような事態で使わなければまたカズみたいに誤解を招いてしまうのも事実だ。


「…………ユウキ君」


「……マシル、リンを呼んでくれ」


 ユウキは漸く決めたのか窓越しに魔吸梟の様子を窺っていたマシルにそう声を掛けると、マシルもユウキの様子を察したのか首肯し、馬車のドアを開きリンを呼んだ。リンは魔吸梟を視認してい以来、不安げな表情を浮かべながら馬車の中へと足を踏み入れた。イヴはリンが入ってくるなり、ユウキの顔色を窺っており、これから何を言い出すのかと疑問の表情を浮かべながらユウキが言葉を発するのを待っていた。


「…………こんな状況だからもうとやかく考えてる場合じゃない。先に言っておく。今から俺がやることは他言無用だ。そして、追求するのも無しにしてくれ」


「やるということは魔吸梟と対峙すると言うことでよろしいですか?」


「いや、対峙せず街の中に入る」


「それでは魔吸梟に見つかる上、襲われるのでは?」


「大丈夫だ。見つかることも襲われることもない」


 ますますユウキの言うことが理解出来ないと言った表情を浮かべるイヴを横目にユウキはイヴの隣に座るリンに視線を向けた。


「まず、リンにお願いがあるんだが今からやること起きることに対して声をあげるのも無しだ」


「は、はいっ!」


「マシルは街の中に入ったら戦闘態勢だけは緩めないでくれ」


「うん、分かった」


「……私は何をしていればいいでしょうか?」


「あんたはマシルと俺がいいと言うまでこの中で待機だ。安心しろ、御者を務めるリンは俺とマシルが絶対に守る」


 イヴは未だにユウキのやろうとしていることに理解が追いついていないと言った表情を浮かべるが、今は大人しくしていようと考えるのをやめ、首肯した。イヴの様子を確認するなりユウキはリンと一緒に御者席に座り、マシルはイヴと一緒に馬車の中で待機していた。


「いいか?今から馬車の目の前に魔法を発動させる。俺が『闇扉』って口にした途端その魔法に向かって馬車を出せ」


「わ、分かりました!」


 ユウキはリンの返事を聞くなり、手を前に出し魔力を集め始めた。本来は拳銃に込めている魔力弾を目の前に発射した方が早いのだが、拳銃だと発砲音が聞こえるため今回は拳銃は無しで魔法を発動させる。


 前に出された手のひらから少しずつ魔力が集まりだし、ある程度溜まった瞬間、ロニーの頭の上を狙いに前に紫色の魔力を射出させ、『闇扉』と溢す。すると、ロニーの目の前に射出された紫色の魔力は姿を変え、黒い空間が生まれた。そんな珍しい光景にリンは目を奪われていると隣から声が聞こえてきた。


「リン、今だ!」


「は、はいっ」


 ユウキの言葉にリンは我に返ったかのように手に持っていた手綱をロニーの背中を叩き、馬車を走らせる。ロニーはそのまま『闇扉』に足を踏み入れ、馬車は飲み込まれるように姿を消した。しばらくの間、視界は暗転するがすぐに視界は明るくなり出口に着いたのだとリンは理解する。


「……ここはっ」


「…………上手くいったか?」


 リンは目の前に広がるあり得ない光景に言葉を零しかけたが、慌てて手で口を覆った。しかし、それも無理は無い。目の前に現れた黒い空間に突っ込んだと思ったら自分たちの当初の目的の場所であり、イヴの家でもあるヴィーブル家の敷地に馬車が止まっていたのだから。そんな光景に驚かないはずも無くリンは夢でも見ているのかと自身の頬を抓るが、痛みから夢では無いのだと理解した。

次回更新は3/17です

それと今後の方針についてご報告があるので活動報告にも目を運んで頂けたら幸いです。

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