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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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魔生物と魔物-1

 突然現れた眩い光に視界を奪われた三体の魔蹄羊(フーシープ)は驚愕と苦痛の混じった鳴き声を上げながら衝突し合った。そのまま三体の魔蹄羊は地面に倒れ、しばらくの間痛みで動こうとしなかった。


 三体の魔蹄羊を無力化させた後、ユウキは上空へと飛んで逃げた魔蹄羊に左手に持つ銃の銃口を向け、赤色の魔力弾を放った。


「『炎矢(フレイム・アロー)』」


 そして、『閃光(フラッシュ)』を発動した時と同じように唱えた瞬間、銃口から放たれた赤色の魔力弾は三本の火矢と姿を変え、下降中の魔蹄羊へと向かってそのまま飛んでいった。魔蹄羊も空にいるおかげで上手く身動きが出来ないせいか三本の火矢は魔蹄羊の胴体へと見事命中した。しかも、それだけでなく魔蹄羊の体毛である真っ白な羊毛に火矢の火が引火したのか羊毛が燃え、さらに全身を燃え尽くさんという勢いで火の勢いが増し、地面に落ちる頃には炎塊となっていた。


「あと……三体ッ」


「あ、ユウキさん待ってください!」


「ッ!?」


 二体目の魔蹄羊が地面に落ち息絶えたのを確認した後、未だに痛みで動きが鈍くなっている三体の魔蹄羊たちに視線を向ける。ユウキがその内の一体である足を震わせながらも立ち上がろうとする魔蹄羊に向けて銃口を向け引き金を引こうとした瞬間、後方で馬車の中で待機しているイヴから突然声が掛かった。ユウキは咄嗟の呼びかけに驚き、そのままイヴの制止に構わず引き金を一度引いてしまい銃口からは黄色の魔力弾が放たれてしまった。


 銃口から放たれた魔力弾はそのまま姿を変えること無く、立ち上がった魔蹄羊に当たり静かに霧散した。自身の身に何が起きたのか理解出来ないといった表情を浮かべながら魔力弾が当たった部分を確認すると、すぐさま戦闘態勢を取りユウキへと駆け寄ってくる。


 しかし、ユウキもすぐに対応するかのように新たに銃口をこちらに向かってくる魔蹄羊に向け、今度は紫色の魔力弾を放った。ユウキのその動きに魔蹄羊も学習した様で攻撃が来ると判断したのか、左右にステップを踏むように動きユウキの思考を狂わせようとするが、放たれた紫色の魔力弾は魔蹄羊の足下へと吸い込まれる様に地面へと沈んでいき姿を消した。


 それを見た魔蹄羊は攻撃が消えたと判断したのか左右にステップを踏みながら駆けるのをやめ、まっすぐ一直線にユウキへと向かっていった。しかし、その魔蹄羊の動きはすぐに止められることとなった。


「『闇縛(シャドー・バインド)』」


 ユウキの呟きと同時に地面から紫色の柔軟性のある蔓が現れ、魔蹄羊の身体へと纏わりつき動きを制限させるどころか制止させ、さらにその蔓は後方で漸く動き始めようとしていた二体の魔蹄羊たちにも纏わり身体を地面に固定させ無力化させた。


「いきなり何だ。大きい声出すんじゃねぇよ」


 イヴはユウキの言葉に慌てて口元を押さえ、すみませんと言葉を零した。


「それでどうしたんだ」


「それ以上、その魔生物を倒すのをやめてください」


「……はぁ?」


 イヴの申し出にユウキは意味が分からないといった表情でそう短く答えた。それもそのはずでイヴと同じように馬車で待機していた三人もイヴに視線を向けていた。


「…………理由を聞いてもいいか?」


「なんで魔生物が暴走したのかその個体を使って調べたいと思います」


「……検体って事か。なるほどな」


 イヴの説明によって漸くイヴの言いたい意味が理解出来たのかユウキは頭を縦に振った。それは他の三人も理解出来たのかなるほどといった理解した表情を浮かべていた。


「だけど、その提案は却下だ」


「な、なんでですかッ!?」


「理由はいくつかあるけど、その内の一つとしてまずこいつらを運ぶ術がない。それに運んだところでどこにこいつらを仕舞っておくつもりだ?何度も言うが、こいつらはもう魔物化している上に攻撃性も高く、例え柵や檻に仕舞っていたとところで暴れ出したら簡単に抜け出して人を襲うぞ」


「そ、それは……ッ」


「それに今は魔物よりも領民とお前の家族の安否確認が優先だろ」


 ユウキの言うことも正しく、イヴは何も言い返せなかった。ユウキはイヴが何も言い返してこないのを確認すると、『闇縛』で地面に押さえつけられてる三体の魔蹄羊たちの首に剣先を添え、一気に突き刺し、命を刈り取った。一瞬の鳴き声が一同の耳に届くが、ユウキはそんな事を気にすることもなく馬車に乗り込み、御者のリンに声を掛けた。


「さっさと行こう」


「は、はいッ!」



☆★☆★☆



 それからまたしばらくの間馬車に揺られ、漸くヴィーブル領の中で島の一番中央にあるターコイズ村に辿り着いた。そこはこの島に来たタイガ達が一週間過ごしていた診療所がある場所でもあったが、今では村の入り口である木材で出来た門はかなりボロボロになっており、村を囲う柵も魔物化した魔生物によってか所々壊されており、住居などもいくつかは半壊していた。


「これは……ッ」


「中々に酷いな。確かこの村には魔蹄羊と同じで魔羊(マトン)が飼育されてたよな?」


 ユウキの問いかけにマシルは首肯する。リンは村の中に入ってからロニーを走らせること無く歩かせながら村の中を見渡すが、人の気配は全く無かった。それどころか魔物化した魔生物の存在もどこにも無く、ターコイズ村は静かなものだった。


「リン、悪いんだが一度診療所によってもらえるか?あそこは怪我人もいるしもしかしたら、まだ人がいるかもしれない」


「は、はいッ!」


「いや、ユウキ。お前達は先にヴィーブルに行ってくれ。俺が診療所に行って様子を見て来る」


「はぁ?何言ってんだお前。先に行ってくれってもし診療所の近くに魔蹄羊がいたらどうするんだよ。一応お前はまだ病み上がりなんだぞ」


「病み上がりって行ってもカズよりは怪我も酷く無かったし、それに二手に分かれた方が色々と早いだろ」


「いや、でもお前に魔蹄羊を倒せるのかよ」


「別に倒せなくても俺の能力で動きを封じ込めるくらいなら出来るさ」


 タイガはそう言うなり馬車から降りると、早く行けと催促するかのように手を払い出した。タイガの様子を見てユウキもこの場で言い合いを繰り広げて時間を無駄にするよりはマシか、と理解したのかため息を一つ溢すとリンに街に向かう様に指示を飛ばす。そして、馬車が動き出したのを確認するや否やユウキはタイガの名を呼んだ後、ある物を投げつけた。


 タイガも多少の驚きを表しながらもそれを両手で受け止め、手のひらに伝わる感触を確かめるために視線を落とすと、そこには親指サイズの紫色の魔石が一つあった。


「これは……魔石?」


「俺たち戻ってくるまでそれを持っててくれ」


 ユウキはタイガの疑問を無視するかのようにそう言い放った。

次回更新は2/24です

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