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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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領主会談-3

「…………のどか、だな」


 空は雲一つない快晴で風も時折吹くくらいの気持ちの良い物だった。そんな陽気な空間でそう声を発したのは顎に無精髭を生やした一人の男だった。男は空を見るのが好きだ。空を眺めている時だけは自分の世界に入れるからだ。嫌な事も難しい事も一度頭の中から追い出してぼーっとすることが出来る。男がいる場所はアスクリムゾン内でも知っている者は少ない。そのおかげもあってか男にとっては絶好の穴場だった。


 だからか、仕事や面倒事が起きた際には必ずと言って良いほど空を見に一人で行動することが多い。今回もまた、面倒事が舞い込んで来たせいで男は一度自分の中で整理をつけるためにこの場所に来て空を眺めていた。


 今回、男の元に舞い込んできた面倒事は先日の領地不正侵入の疑いがあるヴィーブルの連中との一件だった。男はその目撃者でもあり、当事者でもある。そのおかげか今度行われる領主会談に出席せよとの領主直々の命が下ったのだ。男からしたらその命は面倒な事この上なく、その命を領主直属の騎士団であるカーマイン騎士団の団長コチニールから聞いたときは駄々を捏ねてやろうかと思ったくらいだ。


 ちなみに、アスクリムゾン内における騎士団の役割はコチニール率いるカーマイン騎士団は領主並び周辺貴族の警護であり、もう一つホムラが率いるヴァーミリオン騎士団は少数精鋭ということもあるせいか主に隠密などの偵察隊として活動をしている。


 最後にこの男ザラマが率いるレッドスター騎士団が担う役割は領地に侵入してきた者への制裁と争い事が起きた際の鎮圧及び秩序を守るために活動をしている。彼らがそう言った活動を積極的に行っていたおかげかアスクリムゾン内での争い事はほぼ無くすことは出来たが、ザラマからしてもそのほかのレッドスター騎士団の者からしても少しばかり退屈さを感じていた。そんな中、偵察隊として動いてるホムラの部下から侵入者が現れたと連絡を受けた。


 最初は久しぶりに楽しめそうな仕事が舞い込んできたと思っていたが、実際はただの面倒事。しかも、この島に住んでいればまずもって訪れる事のない亜人が居たのだ。ザラマからしたら楽しめることも出来ない出来事だった。しかし、亜人は一人だ。普段であれば亜人というだけで即刻殺してしまうところなのだが、やはり領地が分かれた頃に見せしめとして亜人を殺しすぎてしまったのか一匹としてアスクリムゾン領地に足を踏み入れる亜人は現れなかった。


 久しぶりに亜人を視界に入れたザラマも最初こそ亜人に対する扱いに迷いを孕むだ。即刻殺すべきか、動けないように手足を切り落とすなりして見せしめとして生かすか。そして、選んだのは見せしめとしてだった。しかし、それが良くなかったようで後日領主に呼び出された。


 そこで領主に何故殺さなかったのか説明を要求されたが、ザラマは狼狽えることなく見せしめとして使ってやろうと答えるたが、どうやらその現場を見ていたホムラに痛めつけただけで逃がしたと報告がすでに領主の耳にも行っていたようで全てを知っていたようだった。だったら何故呼び出され、話をさせられたのかというとその際に現れた二人の男女の事についてだった。この二人に至ってはホムラ自身も一瞬しか見る事が出来なかったようだ。


 そのことを本人から聞いたときはザラマも驚きを隠せなかった。なぜならホムラは騎士団長と言うこともあるだけあって隠密には長けており、同じく団長のザラマやコチニールでさえも気づけない時がある。それだけ気配を消し、身を潜めるのが得意なのだ。だからこそか、直接相対したザラマにその二人についての情報を話させるためにと呼んだのだと領主は言った。


 しかし、ザラマからしてもその男女の事についてまともに知っていることと言ったら名前と魔法を使うという事だけだった。話すだけなら簡単に口を開けば話せる。だが、ザラマにはそれが出来なかった。理由はその男女の片方ユウキという男との約束を結んでしまったからだ。今回起きた事はお互いに忘れるという口約束程度の物だが、ザラマにとっては破れない物だった。


 領主もザラマのその性格は知っているようでそれなら仕方ないと答えた。その言葉を聞いてザラマも漸く終わるかと思い、部屋を出て行こうとするが、領主の口から発せられた言葉に耳を疑った。領主は部屋を出て行こうとするザラマに対し、まだ罰の話をしていないだろうと言い放ったのだ。


 領主の言う罰とは今回の件で痛めつけるだけで逃がした亜人に関する罰のことだった。もし、あの時に亜人を逃がすこと無く、見せつけとして捕らえていたら罰はなかっただろうと思いもするが、過ぎた物はどうしようもない。ザラマは領主の口から放たれる罰の内容に唾を飲んだが、領主の口から放たれた言葉はザラマの緊張を壊すような物だった。


 それは罰に関してはまだ決まっていないから決まり次第、コチニールから連絡が行くよう手配をするという事だった。そして後日、コチニールから言い渡された罰の内容が次の領主会談に護衛として出席しろとの事だった。出席するだけでもザラマからしたら面倒な事であるが、さらに面倒なのが、領主会談でその男女の事を見つけたら即刻報告しろという追加命令付きだった。


 ザラマは面倒だと思いはするが、自分の失態でもあるため渋々その命を請け負った。請け負ったは良いが、ここ最近はその男女に負けてからレッドスター騎士団の団員達が異様にやる気を出しているのか毎日のように訓練を始め、その訓練にザラマも巻き込まれる様に参加させられているせいか無駄に疲れる事が増えてしまい、とうとう嫌気が差したのか今日に限っては団員の目を盗んで一人静かに空を見れるこの場所に来ていたのだ。


「……あぁ、本当に面倒だ。あいつらと会ってから」


「やっと見つけましたよ。団長」


 茂みから姿を現したのは腰に細剣を差したレッドスター騎士団の副団長を務める毛先だけを赤く染めた黒髪ショートヘアの女性だった。茂みから現れただけあって彼女が着込む鎧には葉が引っかかっていた。


「おー、マナカちゃんじゃん。よく見つけたね」


 暢気にそう返すザラマの姿にマナカと呼ばれた女性は呆れた様にため息を吐いた。


「よく見つけたねじゃありません。領主様から招集が掛かりました。さっさと行きますよ」


「えー、招集って何よ。何か問題でも起きた?」


「私が知ってる訳ないじゃないですか。とりあえず起きてください」


 地面に横になりながら空を眺めていたザラマの腕を引っ張り半ば無理矢理身体を起こさせる。「ほら、行きますよ」と踵を返しながらザラマに言い放った。


「もー連れないねー」


 ザラマは冷たくあしらう彼女にそう溢しながらも着いて行った。

次回更新は1/20です

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