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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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ヴィーブル領とアスクリムゾン領-9

「もう夜も遅い。借りてる宿が無ければ良かったら泊まっていくと良いよ」


 食事を終えた後も、しばらくの間アスクリムゾンとヴィーブル、そして、自分たちが住んでいたエイガルドの話を情報交換するかのように話していた。しかし、かなり長い時間話していたのか隣で一緒に話を聞いていたマシルはすでに限界が訪れていたようで頭をゆっくりと縦に揺らしており、瞼もすでに閉じかけていた。今日は朝から動いていたし、今日一日でいろんな出来事があったせいか疲れてしまったのだろう。ユウキが今から宿を取れるか、最悪野宿かと危惧していたところシアンもマシルの様子に気づき、気遣ってくれたのかそう提案してくれた。


 そして、その提案はユウキにとってもありがたいことだったのでシアンの好意に甘えようと決め、二人は一度ダイニングを後にした。マシルはかなり眠いのか案内をされてる間も瞼を擦ったり、欠伸を零したりと眠気と戦っていたせいか部屋に通され、ベッドを見つけた瞬間、吸い込まれるようにベッドに倒れ、すぐに寝息を立てて眠ってしまった。


 ユウキもマシルに布団を掛けるや否や部屋に案内をしてくれた執事に「ありがとうございます」とだけ伝えると部屋の扉を閉じた。案内された部屋の中には木製の机と椅子が一式とポールハンガー、そしてベッドが二つ。ユウキも最初こそマシルと同じ部屋に通された時は焦りを覚えたが、ベッドが二つあったことにすぐに安堵し、胸を撫で下ろした。


「さて、さっき聞いた話を纏めておくか」


 ユウキは食事中も肌身離さず持っていた紫色の魔石が嵌められた片手直剣を机の横に立てかけるようにおき、二丁の拳銃が仕舞われたホルスターは片手直剣の柄の部分に掛ける。そして、軽食など荷物が入ってるバッグから手帳とペンを取り出し、今日見聞きしたことを簡単に纏め始める。


「収穫もだがこの島についてかなり知れたな。明日は街だけじゃなく外も調べてみるか。アスクリムゾンの領地の位置や出来ることならザラマの実力も見たいところだな」


 手帳にアスクリムゾンの騎士団の事やヴィーブルの現在の状況など思い出しながら書き出していく。そして、全てを書き出し終えた頃、ユウキもようやく身体に疲れが出てきたのか手帳を閉じると、そのまま空いたベッドに倒れ込んだ。久しぶりのベッド、しかも外ではなく家の中で寝るのは久しぶりだという寝心地の良さを感じながらゆっくりと眠りの中に落ちていった。



☆★☆★☆



「まぁ、ここまではというかこれがこの島に来た初日の話だな」


 先ほどまで流れていた映像が消え、辺りはまた何も無い白い空間に変わる。ユウキは映像が終わったところでそう言葉を付け足すが、その映像を見ていた二人は口を閉ざしたままだった。いや、閉ざすことしか出来なかったのだ。経った一日とはいえそれなりに多い情報量だ。アスクリムゾンとヴィーブルの関係状況に様々な問題。さらには、カズ達が先日戦ったザラマが指揮する騎士団以外にも存在する二つの騎士団。頭の中で整理するには流石に時間を要した。それはカイザにとっても同じだった。


「考えてるところ悪いが、このままさっき話すと言っていたこいつらの事に関して続きを見せる事も出来るが、どうする?」


「いや、そっちは見せなくて良い。だが、簡潔に説明だけしてくれ」


 しかし、カズは先ほどの映像を見てからというのも無言を貫き通していたが、ようやく自分の中で整理が終わったのかそれとも考えるのが面倒になったのかユウキの問いかけにそう答えた。ユウキはカズの言葉を聞くなり、「そうか」とだけ溢すと、アオイに元に戻すように指示を与える。


 アオイも了承するように一つ頷くと、皆の視界は元いた部屋へとさらに一変した。カズは元いた部屋に戻ったと言うことでベッドに横たわったまま、無言を貫いたままだ。しかし、ユウキはそんな事を気にすることもなく、カズの言うとおり簡単にシノとアオイの説明を始めた。


「まずはこっちの説明からだ。こいつはシノって名前でお前達も知ってるであろう大神殿にある宝玉の主だ。俺が使う『鑑定』って能力は本来はこいつの能力で力の一部を分け与えて貰ったんだ。だから、実際は俺の能力じゃないんだ」


 シノをカズが見える位置に連れてくるとそう簡潔に説明をする。カズはシノの方に視線だけを向けるが、シノはシノでどこか考え事をしているのか視線は下に向いている。


「そして、このうるさい奴がアオイ。さっきの『記憶共有』って言うのはこいつの能力『共有』によるもんだ。こいつもシノと同じでバカでかい宝玉の主何だが、その宝玉がある場所はシアンっていう奴との約束で説明は出来ない。ただ、言える事はこいつの能力も俺が一部分け与えられてるってことだ」


「よろしくねー!お兄さんたち!」


 アオイは空気を読んでないのか、それとも読む気が無いのか横になったままのカズと未だ目を覚まさないタイガのそばに座るカイザに向かって子供のように無邪気な笑みを浮かべる。その様子にユウキは一つため息を溢す。


「これでお前らが知ってる俺の能力は『身体能力強化』に『鑑定』、そして、『共有』だ。それにもう一つこれ以外にある。それは『身体能力強化』と同じようにお前達と出会ってた時から持っていた能力だ。それはお前達がその状況になるって分かっていた理由の一つでもある」


「ユウキ……水を差すようで悪いが、ほんとに良いのか?話してしまって」


 ユウキがカズ達に説明する中、シノは口を挟み、そう言葉を掛ける。しかし、ユウキもすでに覚悟は出来ている様で静かに頷いた。それにこういった周りを巻き込んでの無茶はこれ以上自分のことについて隠し通すのは無理だと分かっていたのだ。


「俺がもう一つ持っている能力は…………『未来予知』だ」


「『未来予知』……てことは、そのままの意味で未来が予知出来るってことか」


 カズの言葉にユウキは無言で頷く。しかし、そんなユウキの様子を見て、カズは一つのことに憤っていた。そのカズの様子は掛け布団の上に出されている包帯で巻かれた腕が微かに震えているのが見て分かる。そして、今から言われる言葉もユウキにはなんとなく予想が付いていた。


「……未来が見えてたってって言うならなんでハヤトを救わなかったんだ?」


「…………それは」


「お前にとってハヤトは大事じゃなかったのか!仲間じゃなかったのか!俺たち以上にハウスに引き籠もってたのもただの演技だったのか!……っ、おい!答えろよ!」


「大事だし、仲間だったさ!」


 カズは身体に走る痛みを無視し、無理矢理身体を起こし、ベッドの脇にいたユウキに震える手で掴む。ユウキもカズの言葉を否定し、腕を払いのけようとするがそれはしなかった。いや、出来なかったのだ。カズの今の表情を見ていると払いのけるどころか「能力でハヤトの死は予知出来なかった。未来予知は自分じゃ制御出来ない」と言うことすら出来なかったのだ。


「だったら何でだ!視えるんだろ!未来が!だからこうして俺たちを助けに来たんだろ!」


 しかし、そんなユウキの思いもカズには届かず、タガが外れたかの様に部屋にはカズの叫びにも近い怒声が鳴り響き続け、その痛々しくも悲痛で自分が無力だという言葉がユウキの耳に残った。

次回更新は12/16です

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