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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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ヴィーブル領とアスクリムゾン領-7

「赤いバンダナの男—————ザラマについて私が知る限りのことはお話しましたが、これで大丈夫でしょうか?」


 イズは不安そうな表情を浮かべながらそう尋ねると、ユウキは考え込む素振りをしながら自分の顔の前に指を一本だけ立てて「最後にいいか?」と尋ねる。そして、イズの了承の返事を聞くなりすぐに口を開いた。


「三つの騎士団があるって事はどの騎士団もそれなりの手練れはいるって事だ。あんたから見てその騎士団の団長の中で誰が一番強い?そして、ザラマとか言う男の実力はどれほどなんだ?」


「ザラマの実力、ですか……。正直、私が知っている彼の実力は五年前の物で今の実力は……。ですが、ザラマが団長を務める騎士団は他の二つと比べ、比較的新しい騎士団です、そんな新しい騎士団の団長になったという事はそれだけの実力は兼ねていると思います」


 イズの言葉にユウキはそうかとだけ応えるとさらに思考を繰り返す。名前と素性、そしてカズ達を襲う理由が分かっただけでもそれなりの収穫だとユウキは一度は思ったが、やはり実力に至っては未知数だ。どんな戦闘の仕方でどのような力を持っているのかそれはやはり直接視てみない事には分からないか、と考えたユウキは一度だけ面倒くさそうに後頭部を軽く掻いた後、色々と親切にしてくれたイズに助かったと言葉をかけた。


 ユウキ自身、カズ達がいつこの島に来るかは分からない。それだけでなくザラマという男の実力も自身の目で見てみない限りは分からない。しばらくの間、仲間の元から離れ、マシルと二人で主に魔物を借りながら力をつけては来たがその力がザラマに通用するかは分からない。未だに色々と不安しかない上、実力が分からない相手と戦うにはそれなりの準備も必要だと考えたユウキは早々にこの店を出て、自分たちで情報を集めようとマシルに目配せをする。


 マシルもユウキの視線に気づいたようで無言で頷くと、腰掛けていたソファーから立ち上がり、部屋を出る準備をする。そんな二人の行動に気づいたのか先ほどまでずっと無言を貫いていたリンが慌てて声をかけた。


「ま、待ってください!どこに行こうとしているんですか!」


「どこって情報収集のためにアスクリムゾン領にだが?」


「『だが?』じゃないです!なんでそんな危険なところに!」


 淡々と答えるユウキにリンは少しだけ表情に焦りを含みながらそう問いかけた。その問いにユウキは頬を軽く掻きながら口を開いた。


「何でってまだ足りないからだよ」


「足りないって何がですか!」


「まず一つ目にザラマの実力。これに至っては騎士団の全体の力量も規模も何もかもが分からないからこの目で視て確かめる必要がある。そして二つ目、まだ俺たちはこの島に来て一日と経ってない。だから地形の探索も必要だ。最後に三つ目、これは仮の話だが、ザラマとその一行である騎士団の実力が俺たちの想像以上だった場合の際の対処法」


 ユウキはそう言いながら三本の指を一本ずつ立てながらリンに説明をする。そして、最後にソファーに座り自分たちを見つめるイズに視線を移し、さらに言葉を吐く。


「ザラマの事だけでなくこの島の状況や歴史、色々と教えてくれた事には感謝するが、俺たちはこのままゆっくりと話をしている暇は無いんだ。悪いが、今日のところはこれで失礼するよ」


 ユウキはそう言い部屋の扉に手をかけると、突然イズが口を開いた。しかも声質は先ほどの会話と変わらないが、どこか悪巧みをするような雰囲気を醸し出していた。


「あら、もう行ってしまうの?まだ私が出した条件を全て飲んでもらって無いはずだけど?……あなたは私との約束を反故する気かしら?」


 そう言うイズの言葉にユウキは思い出したように身体をビクつかせる。完全に忘れていたとは言えないと思い、ユウキはなんと言い訳をするか考えていると、いつの間に自分の背後に移動したのかユウキの肩に手を乗せながらイズは笑みを浮かべた。


「反故にはしませんよね?」


「…………はい、是非行かせていただきます」


「ユウキくん……」


 イズのなんとも言えない笑みと雰囲気にユウキはたじろぎながらもそう答えると、マシルが呆れるようにそうユウキの名を口にする。そんな状況にリンも何も言えなくなってしまい、ただただ困惑した表情を浮かべるだけだった。



☆★☆★☆



 イズとの会話を終えた後、ユウキ達はイズの店が閉まる時間まで滞在し、そのままイズの家に向かった。イズの店を出る頃にはすでに外は陽が落ち始めており、街灯が明るくなって街道を照らしている上に人の姿がかなり減っていた。イズの家であるヴィーブル家はイズの経営する店舗からはかなり離れているようで馬車で街の中を移動していた。馬車を牽くのは昼間に出会った魔生物と呼ばれる馬—————ロニーであり、御者を務めるのはリンだった。ユウキとマシルはイズと一緒に馬車の中で対面するように座っており、マシルは窓から見えるあまり変わらない街並みを眺めていた。


「それで俺たちはあんたの家族にあって何を話せばいいんだ?正直、面倒な事は願い下げたいんだが?」


「面倒なんてそんな……いえ、そうですね。誤解の無いように少しだけ説明をしておきますと、私の家族は結構外の事に興味がありまして、よろしければユウキさん達が住んでいたエイガルドの事など教えていただけたらなと思いましてお誘いしただけですよ」


 イズは笑みを浮かべながらそう言い放つとユウキは顔を顰めながら口を開いた。


「外の事ってそんなのあんたらの島には騎士かガーディアンのどちらかしか住んでいないんだろ。だったら、(ゲート)さえ通ればいつでもエイガルドに来ることは出来るだろ?」


 ユウキはイズの言葉に疑問を持ちながらそう聞き返す。すると、イズは少しだけ残念そうな表情を浮かべながらそれは出来ないんです、と答えた。


「出来ないって何でだ?門を通るのに条件でも何かあるのか?それともこの島に住む奴らは誰彼構わず島を出れないとか?」


 冗談半分で言ったユウキはイズの返答を待っていると、イズは静かに頭を縦に振った。

次回更新は12/2です

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