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ワールド・オブ・ザ・デスゲーム  作者: 悠城 拓
第2章 「騎士の国『ブレスタ編』」
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ヴィーブル領とアスクリムゾン領-6

 今まで以上に切迫した表情を浮かべながらユウキに詰め寄るイズを前にユウキは両手を前に出しながら落ち着けと宥める。そして、そのまま言葉を続けた。


「悲劇が起きるとは言ったが正直な所、確証がある訳では無いんだ。もし、これが俺のただの勘違いで終わればいいんだがな」


 ユウキはそう言うと一息つける為にカップに口をつけ、既に冷めきってしまったお茶を口に含む。そして、口に含んだお茶をゆっくりと飲みながらあの日夢で視た惨劇を思い出す。あれを視て以来、まだ新しい予知夢は視ていないが、もうこれ以上誰かが死ぬような、危険な未来は視たくないとユウキは思い、心の底から願いながらも新たな疑問を持ったとでも言いたげな表情を浮かべるイズに視線を戻す。


「……ユウキさん達はその悲劇がいつ起こるのか知っているのですか?」


「いや、知らない。ただ少なくとも数日以内には起こると予想しているよ」


 ユウキはそう言いながらこの島に来る直前のことを思い出した。二人がこの島に来る時、まだカズが参加する攻略隊の選抜試験もといサバイバル戦闘訓練は終了していなかった。それに訓練が終わった所ですぐにこの島に訪れるのは難しい。仮に準備が出来ていたとしても参加していた冒険者や攻略隊の疲労や準備の時間も考えてこの島に来るまで早くても二、三日は掛かるだろう。


「数日、ですか……」


「あぁ、悪いな。こっちに来てから俺達もあいつらとは連絡が取れないんだ」


 ユウキはそう謝りながらさらにタイガの考えそうなことをさらに予想しようと思考を繰り返す。思考を繰り返す中でユウキはあることを思い出した。それは人づてに聞いたことだがタイガは一つの物事を行うためにかなりの準備をするということだ。事によってはかなり慎重になるようで物事を行うまでに時間が掛かるときもあるとか。ユウキもそれを聞いたときは人の上に立つリーダーとしては当たり前の事なんじゃないかとそれを教えてくれた者にそう思いはしたが、その話を話してくれた者は「タイガの慎重さを侮っちゃいけない」と念を押すようにユウキに言い放った。


 ユウキはそれらの事を踏まえた上で再度思考を繰り返した。


 あの人が言ってた通りタイガがそれほど用心深い奴ならこの島に来るだけで二、三日どころか一週間以上掛けてもおかしくは無いか。それにそれほどの用心深さならタイガは確実に俺たちがこの島に向かったことを把握しているはずだ。俺達の気の所為じゃなければあの耳を劈くほどの爆発音も聞こえてるはずだ。ユウキはこの島に来る直前の事を少しずつ思い出しながら思考をさらに続ける。


 正直、あんなことが起きるとは想定外だった。それに俺達に協力してくれたトウゴの容態も気になる。爆発音が聞こえたということはあいつの身に何か起きてもおかしくはない。トウゴにも勿論、俺の魔法—————『光膜(ライト・フィルム)』である程度の魔法や損傷は防ぐことが出来るように対策はしていたが完全に防げるとは言えない。


 幸いなことに俺達にダメージは無かったものの、あっちはどうなのか分からないから心配だ。無事なのかだけでも分かればよかったんだが、残念な事に離れたところでも会話ができるような魔道具なんて物は持っている訳も存在しているという事も聞いた事がない。しかし、今はトウゴの容態を考えたところで俺達にできることなんて何も無い。ひとまず考えをリセットしてユウキはイズの方に改めて視線を向けた。


「まぁ、そんな感じで確証はないが、これが俺達がこの島に来た理由だ。それじゃあ、次はあんたが赤いバンダナの男について教えてくれ」


「そうですね。赤いバンダナの男は名前はザラマといいアスクリムゾン領の人間です。アスクリムゾンに存在する三つの騎士団の一つレッドスター騎士団の団長であり、使用武器は主に自身の体躯と同じサイズの大剣を器用に扱います」


「なるほどな」


 淡々と赤いバンダナの男—————ザラマについて説明をするイズを前にユウキはそう答えると、何かを考えるかのように口元を手で隠しながらブツブツと呟く。そんなユウキを横目にマシルは自分の疑問をイズに問いかけようと片手をあげながら「私も一ついいですか?」と尋ねた。イズはその問いかけにどうぞと言わんばかりの笑みをマシルに向け、一度だけ頷いた。


「さっきチラリと言ってましたけどアスクリムゾンには三つの騎士団があるんですか?」


「えぇ、ありますよ。一つは先ほども言ったようにザラマが指揮するレッドスター騎士団。そして、その他にも片手直剣とダガーの二刀流を扱うホムラが率いるヴァーミリオン騎士団、他の二つとは違い団員がガーディアンのみで構成され団長もガーディアンであるコチニールが率いるカーマイン騎士団の三つがあります。正直なところ、どの騎士団も相手にすると考えると骨が折れます」


 イズは苦笑いをしながらそう答えると、マシルの隣でブツブツと呟いていたユウキが再度口を開いた。


「ちなみにいいか?アスクリムゾンの騎士団を相手にするとあんたは今言ったが、その連中を相手に

戦うことの出来る騎士団はこの領地にはどれほど存在するんだ?」


 ユウキのその問いかけにイズは困ったように顔を顰めながら、ゆっくりと口を開いた。


「残念ですが、私たちの領地に騎士団と呼べるほどの戦力はありません。この街だけでなくヴィーブルにはもう戦えるほどの者がいないのです」


「それはアスクリムゾンの奴らに殺されたという事か?」


「それもありますが、以前この街に住んでいた大半の人間がアスクリムゾンに移住したのが主な理由です」


 イズの言葉を聞き、理解したのかマシルはすぐさま「そんなッ」と言葉を零したが、イズはそんな事はお構いなしに言葉を続けた。


「マシルさんもユウキさんもここまで聞けば理解していると思いますが、かつてのブレスタに住む住民のほとんどが亜人を迫害することに賛成だったようです」


 悲しそうな表情を浮かべながらイズはそう言葉を言い終えると、完全に冷め切ってしまったお茶を口に運ぶためカップを手に取った。

次回更新は11/25です

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